
鴻上尚史のプロデュースユニット「KOKAMI@network」(読み:コーカミネットワーク)第21回公演『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』が、2025年8月31日に東京・紀伊國屋ホールで開幕。8月29日には初日前会見とフォトコールが行われ、出演者の小関裕太、臼田あさ美、太田基裕、安西慎太郎、そして鴻上が登壇した。
『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』は、「生きのびること」をテーマとして、日本の民話『鶴女房』のその後の世界と、ある家族を中心とした現実の世界が交錯しながら展開されていくオリジナル新作。ある売れない作家が残した遺書のような小説から始まり、ふたつの世界が複雑に絡み合い、重なりながら、それぞれの結論へと進展していく。
現代世界では宮瀬陽一、物語世界では与吉を演じる小関は「鴻上さんにとって思い入れのある原案とのことなので、その一員になってお客様にお届けできることがとても幸せです」とコメント。紀伊國屋ホールでの初舞台について「歴史のある空間で、エネルギッシュに、2役を魂込めて演じさせていただきます」と意気込みを寄せた。
現代では篠川小都、物語世界ではおつうを演じる臼田は「今回8年ぶりの舞台出演となり、何もかもが新しい状況の中、0から全てを学ばせていただいています」と舞台出演への思いを明かすとともに、「皆さんと鴻上さんを始めとした多くのスタッフの方に支えられ、いよいよ始まるなという実感が湧いてきました」とコメントした。

現代では相馬和彦、物語世界で馬彦を演じる太田は「本作はふたつの世界線が交互に紡ぎ合いながら展開されていきます。2役を演じる上で個人的には苦労していて、まだまだ苦労しながらこの役を積み上げていかなければ、と思っています」と役作りへの真摯な姿勢を明かし、「このような不安や怖さといった生々しいものと、自分の演じるセンシティブでナーバスな役が共鳴した時に生まれる揺らぎや歪みが、この紀伊國屋ホールでうごめいたらいいな」と演技への思いをコメントした。
現代では結城慎吾、物語世界で吾作を演じる安西は「僕を含めて皆さんも現代を生きる上で生きづらさを感じることがあると思いますが、この作品はそんな時に温かく寄り添って、包み込んでくれる作品だと思います」と本作の魅力についてコメント。また「日々楽しく稽古しながら向き合ってきたので、2役を演じる上での苦労はあまり感じませんでした」と稽古場での和やかな雰囲気も伝えた。

鴻上は作品の構想について「作詞家で精神科医のきたやまおさむさんとの対談から生まれました。『鶴女房』に出てくる残された男は可哀想だと話していた際、きたやまさんが“鶴がもし居座ったらどうなるんだろう?”と言ったときに、物語の前半部分が一気に出来上がりました」と明かした。さらに「“かっこよく去っていく”という日本人の美学ではなく、“無様でもいいから生き延びる道”を選ぶ物語ができたらいいな、という思いでこの作品を創り上げました」と本作への思いをコメントした。
東京公演は2025年9月21日(日) まで。その後、9月27日(土)・28日(日) に大阪・サンケイホールブリーゼで上演される。
■小関裕太 コメント全文
宮瀬陽一と与吉の二役を演じます。本作は鴻上さんの新作ですが、原案自体はだいぶ前に思い付いたと伺いました。鴻上さんにとって思い入れのある原案とのことなので、その一員になってお客様にお届けできることがとても幸せです。
紀伊國屋ホールに立つのは初めてなので、劇場入りしたときはわくわくしました。歴史のある空間で、エネルギッシュに、2役を魂込めて演じさせていただきます。
この2役は衣裳をはじめ見た目も世界観も全く違うので、お客様からは容易に見分けられると思います。与吉はチャーミングなところが可愛らしく、宮瀬は一見重いテーマを背負っているようですが、置かれている状況に振り回されているのが面白いです。
ふたり分の人生を掘り深めるのは大変でしたが、演じること自体は楽しんでいます。
この夏とても暑いですが、稽古場でも高い熱量で集中できました。差し入れもたくさんいただき、特に(臼田)あさ美さんが差し入れてくださったパンがすごく美味しく、キャスト内で取り合いのじゃんけんもしました(笑)。
僕の生きる活力はコーヒー。作品に向かうときにコーヒーを起爆剤にしています。今作は30歳になって初めての作品で、鴻上さんとご一緒するということもあり、自分にない要素を引っ張り出す必要のある挑戦の日々でした。作品の世界に入り込むために、癒しでもあり起爆にもなるコーヒーは不可欠でした。
■臼田あさ美 コメント全文
今回8年ぶりの舞台出演となり、何もかもが新しい状況の中、0から全てを学ばせていただいています。キャストの皆さんと、鴻上さんを始めとした多くのスタッフの方に支えられ、いよいよ始まるなという実感が湧いてきました。今まで稽古で積み重ねてきたものを発揮するのはもちろんのこと、ここから変化していくものもあると思うので、まずは気を引き締めて初日を迎えて、最後まで頑張りたいと思います。
劇中で2役を演じると聞いて、最初は全く別のキャラクターになっていくのかなと思っていました。けれど実際に演じてみたり、皆さんの演技を見ると、どの役柄からも生命力を感じて、違う役でも通ずるものがあるなと思いました。
大変なことはかつらも含めた早着替えです。私は11回も着替えがあります!
自分の生き延びる上での活力は家族です! 家族がいるので無様でも生き延びます……! 家族だけではなく、一緒に舞台に立っている仲間の背中を見ることも活力になります。
■太田基裕 コメント全文
本作はふたつの世界線が交互に紡ぎ合いながら展開されていきます。
2役を演じ分けながらも、自分の延長線上でその役からにじみ出る空気感をどう発していけるかを考え続けています。役が背負っているもの、感じ取っているものをどう組み立てていくかは、とても繊細な作業です。それを乗り越えたときに新たな発見や学びがあると思うので、そういうものから逃げずに真っ直ぐ演じられれば、役がどんどん立体化していくのではないかなと思います。不安もありますが、楽しみですし、そう信じています。
僕の生きる活力は生クリームです! 甘いものが大好きなので、一日の終わりに家で食べています。稽古場では羊羹を食べていました。
■安西慎太郎 コメント全文
まもなく初日を迎えますが、今の心境は緊張が半分、幕が上がるぞというワクワクが半分です。稽古でやってきたことが全てだと思いますので、みんなで作り上げてきたものを信じて本番を楽しみたいです。僕を含めて皆さんも現代を生きる上で生きづらさを感じることがあると思いますが、この作品はそんなときに温かく寄り添って、包み込んでくれる作品だと思います。是非お客様にも楽しんでほしいです。
日々楽しく稽古しながら向き合ってきたので、2役を演じる上での苦労はあまり感じませんでした。個人的には、今作の登場人物は劇中で困っている人ばかりなので、それを見て笑いを堪えるのが大変でした。(小関)裕太もゲラで(笑)、一緒に笑っていました。
僕の生きていくうえでの活力は、親に恩返ししたい思いだったり、俳優としての今後の目標や展望です。小さいところでいうと、家系ラーメン柔らかめ濃いめ多めです(笑)。
■作・演出:鴻上尚史 コメント全文
この作品の構想は、作詞家で精神科医のきたやまおさむさんとの対談から生まれました。
『鶴女房』に出てくる残された男は可哀想だと話していた際、きたやまさんが「鶴がもし居座ったらどうなるんだろう?」と言った時に、物語の前半部分が一気に出来上がりました。
そこから、「かっこよく去っていく」という日本人の美学ではなく、「無様でもいいから生き延びる道」を選ぶ物語ができたらいいな、という思いでこの作品を創り上げました。
この物語は現代と鶴女房のふたつの世界が交差するため、出演者にはわずか1分30秒ほどで衣裳を着替えなくてはならないシーンが何度もあります。臼田さんは11回も着替えます。あまりの多さに、舞台裏ではスタッフたちが文句を言いながら大騒ぎになっています。この見事な早替えも見どころのひとつですので、是非お楽しみください。
撮影:田中亜紀
<公演情報>
KOKAMI@network vol.21『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』

KOKAMI@network vol.21『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』メインビジュアル
作・演出:鴻上尚史
【出演】
小関裕太 臼田あさ美
太田基裕 安西慎太郎
三田一颯/中込佑玖(Wキャスト)
渡辺芳博 溝畑藍 掛裕登 都築亮介
【東京公演】
2025年8月31日(日)~9月21日(日)
会場:紀伊國屋ホール
【大阪公演】
2025年9月27日(土)・28日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560172(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560172&afid=P66)
公式サイト:
https://www.thirdstage.com/knet/sayonarasong/