
Text:兵庫慎司 Photo:シンマチダ
2025年7月19日、ROTH BART BARONの、『BEAR NIGHT』が行われた。毎年夏の恒例の、複数組のゲスト・アーティストを迎える、言わば『ワンマンによるフェス』であるこの企画は、今回で6回目。
2022年と2023年は日比谷野外大音楽堂、2024年はLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)、今年2025年はツアーの東京公演で何度もステージに立っている、ROTH BART BARONのホームと言えるヴェニュー、SHIBUYA Spotify O-EASTでの開催となった。
「音楽の森への招待状。今年、BEAR NIGHTは大都会のど真ん中に『森』を作ります。音楽の森を、雑踏の中に生まれる静寂と熱狂、心を解き放つ響きが交差する場所なのです」で始まる一文を、今年の開催にあたり、三船雅也は公式サイトにアップした。
チケットは、1階・一般スタンディング/1階・親子・スタンディング/1階・学生・スタンディング/2階・一般(椅子席限定)の四種類で、1階・学生・スタンディングは1,100円である。
これも恒例だが、ライブの運営には、ROTH BART BARONのファンが組織するバンドコミュニティ「PALACE」が携わった。彼らは、チケットを購入しているお客さんであると同時に、会場整理やグッズ販売等の役割を果たしている。
バンドは、三船雅也(vocal,guitar)、西池達也(keyboard)、西田修大(guitar)、竹内悠馬(trumpet,etc)、大田垣正信(trombone,etc)、Ryu(Ryu Matsuyama / keyboard)、Zak Croxall(bass)、工藤明(drums)の8人編成。
開場時のDJは、これで『BEAR NIGHT』四度目の出演となる水野蒼生。「クラシックにリミックスを入れていく」という、他に類を見ないプレイで、オープンから開演までの60分を担った。

SEが止まり、メンバーが配置につき、鍵盤&コーラスだけのイントロが響き始めると、三船雅也が登場し、片手でギターを高く掲げてオーディエンスに挨拶してから、歌い始める。曲は「フランケンシュタイン」である。
イントロの西田修大のギターも、三船雅也の声と大田垣正信のトロンボーンがユニゾンで形にしていくメロディも、いずれも印象的な「Ghost Hunt」。シンプルに淡々と始まるが、三船雅也の歌も各メンバーの演奏も、中盤からどんどん熱を帯びていく「000Big Bird000」。

「こんにちは、BEAR NIGHTです。来てくれてありがとう」という挨拶を挟んで曲に入った「Ring Light」では、曲の軽やかなリズムに合わせて、フロアがゆらゆらと揺れる。間奏では西田修大と三船雅也がリレーでギターソロを聴かせ、それがホーン隊のツイン・ソロにつながっていく。
続く「あくま」は、イントロのZak Croxallのベースの独奏に合わせてフロアからハンドクラップが湧き上がり、それに合わせて三船雅也が歌に入った。

幾重にも重なり合う8人の音と白&青の照明が相まってO-EASTが幻想的な空気に包まれた「みず/うみ」。三船雅也がイントロのギターを引き始めるとフロアから「おおっ!」と声があがった「Innocence」。
「もしも僕がこの体を 脱ぎ捨てたとしたら 本当の気持ちを君に 見せることができるだろうか/宗教を変えて 住む国を変えて この名前を捨てたなら 僕は何になる?」というラインがインパクトを持って耳に刺さる「VENOM-天国と地獄-」では、サビで、この日最初のシンガロングが起こった。
以上の、前半の8曲を終えて、次々とゲストが登場するブロックへ。

「けもののなまえ」のイントロが始まると、三船雅也、「盛大な拍手でお迎えください」と最初のゲスト、Hana Hopeを呼び込む。彼女がハンドマイクで歌い始めると、既にギターを手放していた三船雅也は、自分の歌うパートが来るまで、ギターアンプに腰を下ろして彼女の歌に聴き入った。

同曲を歌い終えたHana Hope、「考えてみたら、ROTHバンドと一緒にやるのが3年ぶり? けっこう時間が経ってて、『ああ…』ってなりました」。三船雅也、「お帰り」と答える。
去年(北海道の)RISING SUN ROCK FESに出た時、帰りのクルマのラジオで「サマータイム・ブルース」が流れた、「この英語の発音やべえ。すごい新人が出てきた」と思ったらHana Hopeだった、知ってる人だった──などというMCを経て、「いい感じの曲ができたので、これHanaに合うんじゃないかなと思って。タイトルはまだ考え中」と、新曲を初公開。アコースティック・ギターと歌だけで始まり、2コーラス目から各楽器が加わっていく美しい曲で、1コーラス目は三船→Hana、2コーラス目はHana→三船とボーカルをリレーした。

二番目のゲストWONKの荒田洸の1曲目は、バンド全員がインプロビゼーションをくり広げる上に彼が声を重ねていく、という始まり方。後半では荒田、工藤明の隣に座ってツイン・ドラムの状態になる。曲は荒田洸自身の新曲のようである。その曲が終わると三船雅也が「花吹雪」を歌い始め、荒田洸はそのままドラムを叩きながらボーカルでも参加する、というセッションだった。

演奏を終え、笑顔で挨拶して去る荒田洸に、「ずっと一緒にやってみたかったんだ、ありがとう!」と、三船雅也は喜びを伝えた。
「(ギターの)西田くんは僕の友達なんですが、西田よりも友達歴が長い人に来てもらいました」と紹介された3人目のゲストは、吉澤嘉代子。
吉澤「そうですね、15年くらい」三船「よく一緒にライブハウスとか出てたよね」吉澤「そうですね、ラ・ママとか」。
当時を振り返った吉澤嘉代子は、「三船さんは……明るくなった」と言い、オーディエンスもメンバーも大笑い&拍手。
吉澤嘉代子が某オーディションに出た時に、三船雅也が偶然同じオーディションに居合わせており、吉澤がギターの弦を切ってしまい、三船に張り替えてもらった──という、思い出の曲が1曲目。「らりるれりん」である。

歌い終えて「……楽しかった」と漏らした吉澤嘉代子は、「ギターを貸します」と三船雅也に自身のアコースティック・ギターを渡す。吉澤「この曲はすごい思い出の曲で、大好きなディレクターさんの結婚式で、ふたりで歌ったんです」三船「歌ったね。じゃああれ以来なんだね。バンドでやるのは初めてか」吉澤「ロットバルトバロンは日本でいちばん好きなバンドだから、うれしいです」。
その曲は「アルミニウム」。自分の曲のように自然にメロディを形にしていく吉澤嘉代子と、どんどんエモーショナルになっていく三船雅也、それぞれの歌にオーディエンスはじっと聴き入り、大きな拍手と歓声を贈った。
最後のゲストは、Nulbarichが活動休止中であるにもかかわらず、出演オファーに応えたJQことJeremy Quartus。左手はマイクで右手はポケットに、というフォームで、リズムに身をまかせながら、ROTH BART BARONがタイのバンドSafeplanetとコラボした曲「BLOW」を、三船雅也とデュエットする。
「ここ数日で聞き飽きましたね、『失われた30年』っていうパンチライン。いい日本になるといいですね。なるんでしょ、失われてたんだから」という、参議院議員選挙投票日の前日ならではのMCをしたあと、「明日以降の日本の明るい未来を。失われていないことを証明しましょう、始めていきましょう」という言葉から、自身の「Sweet and Sour」をオーディエンスにプレゼントしたJQは、三船雅也と握手とハグをしてから、ステージを下りた。

ゲストのゾーンを終えての、本編後半のブロックは5曲。Ryu(Ryu Matsuura)がピアノを弾きながらリードボーカルをとる Ryu 自身のオリジナル楽曲「Kid」。この日の楽曲の中でもっともファンキーでダンサブルなバンド・サウンドで、O-EASTの空気がぱっと華やいだ「Goodnight」。と思ったら、次はそれをさらに上回るほどアッパーな「MOON JUMPER」で、フロアがハンドクラップとダンスで埋まる。
続いて、メンバー全員がパーカッションを叩くインタールード・タイムへ。全員のプレイがどんどん熱を挙げながら続き、それがピークに達した次の瞬間、音が止まると同時にシームレスに西田修大のギターにバトンが渡って「TAICO SONG」が始まる。そのつながりの見事さ、美しさに、フロアから悲鳴のような大きな歓声が飛んだ。
「今日はほんとに来てくれてありがとうございました。

アンコールは、まず「月光」で始まる。フロアも二階席も超満員状態のオーディエンスを見ていると、三船雅也の声を一瞬も聴き漏らすまいとしている、そのエネルギーが目に見えるような感覚に陥る。
そのまま曲間なしで「赤と青」へ。最初が三船雅也、次がRyu、後半はツインで歌を聴かせていく。曲が終わった時の拍手と歓声が、ここまでの22曲でもっとも大きかったのは、この曲だった。
秋に2年ぶりのニューアルバムを出すこと、そのツアーを行うこと、11月15日に京都で『HOWL LAB 2』(2025年にROTH BART BARONが始めた「アートと音楽の小さなParty」)を開催すること、などを告知してから、「今日こうやって仲間が集まってくれたこと」に感謝を伝える三船雅也。「ROTHのみんなもそうだし、来てくれるみんなもそうだけど、たくさんの人に助けてもらって、救われて、楽しい時間を過ごせて、幸せです。さっき『明るくなった』って言われましたけど、明るくなる前の俺は、こんなことはできなかったから」。

「最後にこの曲をやって帰ります。みんなも一緒に歌ってください。いくぞ」と、自身のギターで三船雅也が歌い始めたのは、この曲が最後でないと『BEAR NIGHT』は終われないし、最後にしか置きようがない曲でもあるし、そもそも『BEAR NIGHT』云々以前に、ROTH BART BARONにとって極めて重要な曲である「鳳と凰」。
即座にこの日一番の「ラララ」のシンガロングとハンドクラップがO-EASTに満ちる。それが最大ボリュームになったのは、曲の最後に三船雅也と歌とギターだけに戻った時だった。
曲を終えた三船雅也は、ひとりずつメンバーを紹介、「鳳と凰」で既にステージに出て来ていたDJ水野蒼生も紹介、さらにゲストもひとりずつ呼び込む。全員で横一列になって肩を組んで大きくお辞儀をし、2時間半強に及んだ2025年の『BEAR NIGHT』は終了した。

<公演情報>
BEAR NIGHT 6
7月19日 東京・渋谷 O-EAST
セットリスト
1.フランケンシュタイン
2.Ghost Hunt
3.000Big Bird000
4. Ring Light
5.あくま
6.みず/うみ
7.Innocence
8.VENOM~天国と地獄~
9.けもののなまえ(feat. Hana Hope)
10. Untitled(feat. Hana Hope)
11. Untitled(feat. 荒田 洸/WONK)
12.花吹雪(feat. 荒田洸/WONK)
13.らりるれりん(feat. 吉澤嘉代子)
14.アルミニウム(feat. 吉澤嘉代子)
15.BLOW(feat. Jeremy Quartus/Nulbarich)
16.Sweet and Sour(feat. Jeremy Quartus/Nulbarich)
17.Kid feat. Ryu
18.Goodnight
19.MOON JUMPER~Percussion Interlude
20.TAICO SONG
21.極彩| IGL(S)
EN1.月光
EN2.赤と青
EN3.鳳と凰
<ツアー情報>
ROTH BART BARON 9th AL TOUR 2025-2026 / タイトル未定
11月16日(日) 京都・ロームシアター・ノースホール ~with Strings編成~
11月29日(土) 東京・青山 草月ホール ~with Strings編成~
12月12日(金) 兵庫・神戸 KOBE QUILT ~SOLO編成~
12月13日(土) 静岡・浜松 space-K ~BAND編成~
12月20日(土) 宮城・仙台 青葉山公園 仙臺緑彩館 交流体験ホール ~BAND編成~
2月14日(土) 愛知・名古屋 THE BOTTOM LINE ~BAND編成~
2月15日(日) 岡山・YEBISU YA PRO ~BAND編成~
2月21日(土) 福岡・福岡市民ホール・小ホール ~BAND編成~
2月22日(日) 熊本・早川倉庫 ~BAND編成~
2月23日(月・祝) 鹿児島・CAPARVO HALL ~BAND編成~
2月27日(金) 北海道・札幌 cube garden ~BAND編成~
2月28日(土) 北海道・札幌 モエレ沼公園"ガラスのピラミッド ~BAND編成~
3月1日(日) 北海道・札幌 モエレ沼公園"ガラスのピラミッド ~SOLO編成~
3月14日(土) 大阪・梅田 シャングリラ ~BAND編成~
3月20日(金・祝) 東京・渋谷 Spotify O-EAST ~BAND編成~
【チケット情報】
▼オフィシャル先行受付:8月4日(月)23:59まで
https://w.pia.jp/t/rothbartbaron-9thaltour/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560930&afid=P66)
※料金は会場によって異なる
■ROTH BART BARON 公式サイト:
https://www.rothbartbaron.com/