
映画ファンを熱狂させ続けてきた人気シリーズの最新作『バレリーナ:The World of John Wick』がついに公開になる。本作はタイトルのとおり、傑作『ジョン・ウィック』の世界をさらに押し広げ、新たな復讐の物語が描かれる。
監督を務めたのは、『アンダーワールド』シリーズや『ダイ・ハード4.0』など数多くのアクション大作、人気ドラマを手がけるレン・ワイズマン。彼は笑顔でこう語る。「私は観客のみなさんを驚かせることを誰よりも楽しんでいるんですよ」。ワイズマン監督、本作で何を仕掛ける? 来日時に話を聞いた。
シリーズの魅力を引き継ぎながら、新たなリズムを盛り込む

レン・ワイズマン監督 Photo:AFLO
キアヌ・リーヴス演じる伝説の殺し屋が次々と敵を仕留めていく超絶アクションが魅力の『ジョン・ウィック』は、これまでに4作品が公開され、全世界の映画ファンを魅了した。シリーズを手掛けるチャド・スタエルスキとは以前から知り合いだったというワイズマン監督は、本シリーズが始まる前から、その動向に注目していたという。
「チャドはとても才能のある男ですから、最初の映画が公開される前からずっと楽しみにしていましたよ。完成した映画を観たら、どうにかなりそうなぐらいの興奮でした! このシリーズには独特のトーンがあり、とてもクレバーで、すごく奇妙なのに楽しい。私はこのシリーズの大ファンなのです」
そんな彼にシリーズの新たな幕を開ける作品が託された。主人公はアナ・デ・アルマス演じるイヴ。幼い頃に父を殺され、復讐を誓った彼女は暗殺組織“ルスカ・ロマ”で暗殺者=バレリーナとして成長する。そしてついに復讐の糸口を発見したイヴは、傷つきながらも復讐に突き進んでいく。

監督が語るとおり、『ジョン・ウィック』シリーズは独特のトーンを持ったシリーズだ。
「これまでに数多くのアクション作品を手がけてきました。観客から“クール!(カッコいい!)”と言ってもらえるシーンもたくさん撮ってきました。でも、それだけではモノ足りなくて、観客を驚かせたいと思うわけです」
本作もシリーズお馴染みのアクションは健在だ。主人公イヴもまた次から次へと武器を変え、手法を変えて敵を始末していく。さらに本作では観客が“よくある映画だとこうなるよな”という予想を裏切る展開が登場し、観る者の心をブチ上げ、さらに揺さぶる。

「通常のアクション映画ではまぁこうなるよな、という展開をあえて裏切ったり、観客がホッとして観ているであろう瞬間を狙って予告なくアクションシーンを開始して観客を驚かせようとしています。
通常であれば、カメラがクレーンに載って上昇して街の全景を映すようなカットは、穏やかな音楽が流れていたりして、状況を説明している映像か、何か盛り上がる場面が終わった後の映像ですよね。私はそういう瞬間にあえてアクションをぶつけるんです(笑)。観客のみなさんが安心してポップコーンに手を伸ばした瞬間に次のことが始まるわけです! 通常のアクション映画では安心して観ている場面、たとえば主人公がズラリと並んだ銃を前にして武器を選んでいくシーンなんかは“カッコいいな”と思いますけど観客は安心していますよね? そこを狙ってアクションをぶつけて観客を驚かせます(笑)。私は観客のみなさんを驚かせることを誰よりも楽しんでいるんですよ」
アナ・デ・アルマスが本当にすごいのは……?
さらにワイズマン監督は映画全体にわたって主人公が“追われる者”であることにもこだわった。
「何かを追いかけているアクションよりも、追われている者のアクションの方が面白いと思うのです。たとえば、あのゴールにたどり着くには50人の敵を倒さなければならない、というシーンがあったとします。そこで起こるアクションはカッコいいとは思いますが、50人を倒してゴールに着いても驚きはないですよね。でも、追われている者がドアを開けた瞬間、想像もしなかった状況に巻き込まれる。私はそちらの方が面白いと思うのです」

映画『バレリーナ』の最大のポイントは、通常映画であれば“追う者”であるはずの復讐者が、本作では“追われる者”でもあることだ。アナ・デ・アルマス演じるイヴはターゲットを追いながら、常に敵に追われ、過去に追われ、痛みを感じ、その表情はいつも悲しい。
「アナが本当にすごいのはそこなんですよ! アクションをしている俳優というのは、時に演技が後景に退いてしまうことが多いのです。アクションシーンはとにかく危険で大変ですし、やることも多いですから。でも、アナはどんなアクションをしているときも演技がおろそかにならない。そこは本当にすごいと思います。私は圧倒的に強い人物よりも、脆さのある人物の方がカッコいいと思いますし、そういう人物を観客は応援したくなると思っています」

“無双状態”の主人公の超絶アクションを描く『ジョン・ウィック』シリーズの痛快さ、熱量、キャラクターの濃さはキープしたまま、予想外の展開や登場人物の心の痛みや哀しみのドラマを盛り込んだ『バレリーナ:The World of John Wick』は、シリーズ最新作でありながら、ワイズマン監督のこだわりや、想いがつまった1作に仕上がった。
「自分で意識しているつもりはないのですが、いろんな方から“本作は、あなたの過去の作品と共通点がありますね”と言われます。
もしかしたら私は年齢を重ねるごとに、映画をつくることが自分のセラピーになっているのかもしれません(笑)。とは言え、本作を“レン・ワイズマンの映画だ”と思っていただけることは、すごくうれしいですね」
取材・文:中谷祐介(ぴあ)
<作品情報>
『バレリーナ:The World of John Wick』
8月22日(金)公開
公式サイト:
https://ballerina-jwmovie.jp/
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『バレリーナ:The World of John Wick』【超絶!アクショントレーニング映像】