中村雅俊が明かす『俺たちの旅』50年前の撮影裏話と最新作への思い「生きることは楽しいけど切ない」
『五十年目の俺たちの旅』原作本出版記念トークショーイベントより

映画『五十年目の俺たちの旅』の原作本「噴水 五十年目の俺たちの旅」の出版を記念したトークショーイベントが、ニッポン放送のイマジンスタジオで開催され、監督・主演の中村雅俊、原作・脚本の鎌田敏夫が登壇した。



1975年10月から日本テレビ系列で放送されたドラマ『俺たちの旅』は、中村演じるカースケ(津村浩介)、秋野太作演じるグズ六(熊沢伸六)、田中健演じるオメダ(中谷隆夫)による青春群像劇。

今年で放送開始50周年を迎えるにあたり、彼らの「今」を描く最新作『五十年目の俺たちの旅』が2026年1月9日(金)より公開される。本作では主演の中村が初めてメガホンをとり、グズ六役の秋野、オメダ役の田中、そしてオメダの妹・真弓役の岡田奈々と50年前のオリジナルキャストが結集した。



中村雅俊が明かす『俺たちの旅』50年前の撮影裏話と最新作への思い「生きることは楽しいけど切ない」

映画『五十年目の俺たちの旅』より
中村雅俊が明かす『俺たちの旅』50年前の撮影裏話と最新作への思い「生きることは楽しいけど切ない」

映画『五十年目の俺たちの旅』より

往年のファンを中心に大勢の観客が集まった会場内は熱気に包まれた雰囲気の中、観客の拍手に迎えられた中村は「この50年間で実感したのは、『俺たちの旅』という作品を愛してくれる人が本当に多いんだなということ。それが50年後に映画になるとは思いませんでしたし、ましてや僕が監督するなんて……本当に驚きの一言です」と感慨深い様子で挨拶。



中村雅俊が明かす『俺たちの旅』50年前の撮影裏話と最新作への思い「生きることは楽しいけど切ない」

続く鎌田は「本を買ってください」とストレートに呼びかけ、「トークショーはこれまでも出たことがあるけど、こうしてメディアの前に出てきたことはなかった。でもこれだけは断るわけにいかない。しょうがないから今日はふたりでやることになりました」と付け加え、会場を沸かせた。中村も「僕も50年以上の付き合いですけど、(トークショーに出ると聞いて)最初は“ほんまかいな”と驚いたんですけど、実際にこうやって今日お会いすることができて。本当だったのかとビックリです」と笑った。



これまで『男女7人夏物語』『男女7人秋物語』や『金曜日の妻たちへ』など数多くの作品を手がけてきた鎌田だが、中村の「そういった数多くの作品の中があるで、なぜ『俺たちの旅』なんだろう、という話をしたんですけど、鎌田さんは『俺たちの旅』のことが大好きなんですよ」という指摘に、鎌田は「もちろん好きです。好きじゃないと50年もできないもんね。そういうことです」と頷く。

その言葉に、作品を愛するファンの間からも大きな拍手が沸き起こった。



今回の映画化にあたり、中村の頭には「相棒のワカメ(森川正太さん)も亡くなっているし、食堂の主人の名古屋章さんもいない。キャラクターが少なくなって、鎌田さんがどう物語を作るのか心配」ということがよぎったという。その流れで鎌田は、最新作でも大きな存在となっているカースケのかつての恋人・洋子についての秘話を明かした。「20年くらい前に(洋子を演じた金沢碧に)次は脚本上で“死んでもらうことになる”と言ったんですけど、そしたらポロッと泣かれて。“出たいんだろうな”と思ったんだけど、洋子との例の話は終わっているし、今度やると脇役になっちゃうから。それは忍びないんで“死んでくれたら主役になれる”ということで、今回は見事に主役になっています。僕はこれで良かったのかなと思っているんですけど、彼女はどう思っているか分からないですね」と振り返った。



中村雅俊が明かす『俺たちの旅』50年前の撮影裏話と最新作への思い「生きることは楽しいけど切ない」

本作のテーマを「切なさ」であると語る鎌田。その言葉に深くうなずいた中村が「青春物って、ともすれば明るいだけということもあるけど、『俺たちの旅』はちょっと違っていて。生きていることは楽しいけれど、同時に切なさがある、ということがあったので。“生きているって切ないよね”ということをテーマにしました」と明かすと、鎌田も「切なさって、ある程度、年齢を重ねないと分からないものだから。

それは皆さんよく分かっていただけると思います」と語った。



「自分の中ではアカデミー賞!」ファンも太鼓判

トーク終盤では、会場から質問を受け付けることに。新作を試写で鑑賞し、ドラマ同様「切なさ」を感じたという観客からは「初監督ということで、アカデミー賞を目指していますか?」という質問がぶつけられて会場は大笑い。中村も「あまりにも唐突な質問だったんで言葉がないんですけど……」と笑いながらも、「でもこの作品は娯楽ものだと思っていて。そうやって楽しんでもらえばいいなという気持ちでいるんです。だから50年前に一生懸命テレビを見ていた人も、見て懐かしく思ってもらいたいし、それと同時に、見ている自分もそこに反映してくるというか、昔の自分に再会してほしい。だからアカデミー賞の“あ”の字もなかったんですが、でもできるだけ多くの人が見てほしいというのが一番の願いです」と返答。その観客からは「自分の中ではアカデミー賞です!」と太鼓判を押され、会場は大いに盛り上がった。



また「俺たちの旅」の企画を立ち上げた当時、プロデューサーからは「大学生ドラマなんて絶対に当たらない」と猛反対されたという。「それでも岡田(晋吉)さんというのは面白いプロデューサーで。『当たらないからやめよう』と言いながらも、頭の中では『どうやろうか』と考えていました」と振り返る。さらに「実績のない俺をいきなり主役にするなんて、すごくないですか?」と中村が笑うと、鎌田は「田中健ちゃんは当時売れない歌手、こっち(中村)は新人。

だから僕は秋野さんに“芝居できる人は誰もいないから頼む”とお願いしたんです」と明かす。中村も「今、再放送を見ていても、僕らの稚拙な芝居を秋野さんがお笑いという形で包み込んで成立させてくれた。本当に感謝しかない」と秋野への感謝の思いをあらためて述べると、「映画には70過ぎになったおじさんふたりと、80過ぎのおじいちゃんが出てきてストーリーを作っていくんですけど、“青春もの”というのは絶対に感じられるし、そういう意味では切なさとか、生きてることの楽しさみたいなテーマはちゃんと描かれていると思います」と付け加えた。



最後のコメントを求められた中村は、「監督をやってみて、本当に大変でした。でもこの大変さというのは今まで経験したことがない喜び、充実感、達成感に変わってきました。この大好きな『俺たちの旅』という映画の監督をさせてもらったことは、本当に自分の中では誇りに変わっています。こんなに頑張ったから、ぜひ多くの人に見ていただきたいですし、見ただけじゃなくて“もう1回見る”とか、人に“良かったよ”と言ってもらえたら最高だなと。だから来年の1月9日、ヒヤヒヤしながら待っています」とメッセージを伝えた。



鎌田も「今回のキャストは前からやってくれているんだけど、スタッフが大勢いて。映画って彼らがいないと成立しないんだなっていうのをあらためて感じさせていただいたことが、僕にとっては収穫でした。ちょっと昔の話ですが、(脚本の執筆が遅れて)ロケ先に本(台本)を届けることがあったんですけど、スタッフっていい本ができると喜んでくれるんですよ。自分たちが一番迷惑するのに。

スタッフってありがたいなと思った記憶があるんで。だから映画は、脚本・監督だけでなく、周りにも大勢いるというのをちゃんと見ていただければありがたいです」と呼びかけた。



<作品情報>
『五十年目の俺たちの旅』



2026年1月9日(金)公開



中村雅俊が明かす『俺たちの旅』50年前の撮影裏話と最新作への思い「生きることは楽しいけど切ない」

映画『五十年目の俺たちの旅』ポスタービジュアル

公式サイト:
https://oretabi50th-movie.jp/



(C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会



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