
ウルフルズの野外ワンマンライブ『ヤッサ!』が、今年も『スマドリでええねん!PRESENTS "20th & 25th Anniversary" OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る! ヤッサ!20/25』と題されて、5月24日に大阪の万博記念公園もみじ川芝生広場で開催された。今年は2000年の初開催から通算20回目、そして25周年を記念する回である。
当日は生憎の雨となったが、本番前の楽屋ではトータス松本・ジョンB・サンコンJr.、そしてサポートメンバーの桜井秀俊(g/真心ブラザーズ)・菅原龍平(g)・浦清英(key)・小杉泰斗(key)・武嶋聡(sax)・村上基(trumpet/在日ファンク)・滝本尚史(trombone)が和やかに穏やかに談笑しながら過ごしている。それほど雨を気にし過ぎていない雰囲気がとても良かった。
14時30分開場となり、ステージかぶりつき席など様々に用意されたエリアの観客皆様が広場に入場していく。すでに12時頃から雨にも関わらず、多くの観客たちが公園内では見かけられ、この日を本当に楽しみにしていることがわかった。開演16時30分直前の16時20分頃から、楽屋裏は急に慌ただしくなり、ステージかぶりつき席購入の方は、メンバーとスタッフの本番直前のルーティンであるハイタッチ会にも参加出来るため、その準備も行なわれていく。16時25分、楽屋からはトータスと思われる気合い入れの声が聞こえてきて、メンバーが楽屋から出てくる。舞台監督による「記念のヤッサスタートです!」が号令となり、約40人のヤッサダンサーズが祝福の声を浴びせる中、ハイタッチが行なわれていく。サポートメンバーは舞台に向かい、メンバー3人は観客エリア側へと向かう。いよいよ今年の『ヤッサ!』が始まる。

この公園で1970年に開催された大阪万博のテーマソング『世界の国からこんにちは』が流れて、所属事務所タイスケの森本社長による挨拶の声が聞こえてくる中、メンバー3人が観客エリアを練り歩いていく。完売の場内を、それも雨なのに大熱狂の場内を、3人が満面の笑顔で歩く姿は記念すべき大きな祭が始まった事を実感が出来た。3人は花道へと上がり、1曲目「ウルフルズA・A・Pのテーマ」を歌う。

「雨め! 雨のアホ!!」
一発目のMCが秀逸すぎた。ここにいる全員の気持ちを大代弁してくれたトータスのひと言。思わず観客からは「ほんまや! ありがとう!」なんていう大阪らしい歓声が飛ぶ。楽屋では雨を感じさせない雰囲気と先述したが、実際はトータスいわく「(会場への移動の)車の中ではメンバー誰も口ききませんでした!」とのこと。そりゃそうである。年に1回の楽しみな大祭りであり、それも今年は記念すべき回。盛りだくさんの演出も用意されていたが、雨により全ては出来ないかも知れないという事も丁寧に説明された。そんな雨のヤッサだが、この一発目のMCには間違いなく鼓舞された。
「20回目の忘れられないヤッサになると思います!」
雨の野音などと呼ばれたりして、雨の野外ライブは昔から伝説になっている。トータスの言葉で我々は伝説の場に立ち会えているんだと誇らしくすらなった。




トータスとジョンBが歌う「センチメンタルフィーバー ~あなたが好きだから~」から、雨をぶっ飛ばす「SUN SUN SUN’95」ではメンバーと水着に着替えたダンサーズが一緒に踊りながら歌う。その名の通り1995年のナンバーだが、30年経った今もウルフルズが格好良く居続けてくれている事がよろこばしい。「ヤッサが好きだ~!!」というトータスの声も響き渡り、続く「バカサバイバー」とぶっ飛ばされていく。

メンバー紹介では、皆それぞれ「雨降っているのに楽しい!」、「雨の中アガる!」と口にする。桜井の「伝説確定のライブに参加できて光栄です!」という言葉にも背中を押される。トータスは直前に上がったり、途中少し降ったりと過去のヤッサ雨情報を話しつつ、今まで雨が降らなかったのがおかしいくらいで、今年は雨を経験が出来て良かったと前向きに話す。

そして、「レアな曲をやろう!」と「おーい!!」へ。2015年公開の『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』エンディング曲として書き下ろされた楽曲であり、当時のさくらももことの楽曲依頼にまつわるエピソードも明かされる。「ガッツだぜ!!」「バンザイ~好きでよかった~」両方の要素を求められた秘話にトータスは笑うが、意外にもライブ初披露だとも打ち明けた。ライブで披露することを薦めた舞台監督についても少し喋ったが、ちょうどその時、その舞台監督が観客エリア内を忙しそうに移動しており、そんな光景を偶然にも目撃した事で、ウルフルズがメンバーだけなくスタッフと共に一丸となって本気で観客へ良いライブを届けようとしていることがより深く感じられた。

「まだまだ色々な機会をもらえるのがうれしい!」とトータスは漏らしていたが、我々からしても色々な機会に挑んでいるウルフルズをずっと観られている事が何よりも悦ばしい。まだ前半戦だが早速「ええねん」「笑えれば」と大人気曲であり大代表曲を二連発!! 特に「笑えれば」の曲の良さは、いつどこで聴いたって沁みまくる。ラブソング「あついのがすき」も歌われて、これにて前半戦が終了。メンバーは一旦舞台を去り、スクリーンでは過去19回の『ヤッサ!』を写真映像で振り返ったり、先程話題になったWEST. 「ウェッサイソウル!」のMVが流れて、WEST.全員からの開催お祝いコメントも届けられる。


映像終わり、特に登場SEも無く、メンバーたちが静かに舞台へと再登場するが、トータスのネイティブ・アメリカンの羽根冠を始め、全員が世界各国の民族衣装などを着ている。ずばり今年のテーマは『万博』。なるほどである。本来は全員が花道へずらりと並ぶ予定であったが、雨の為、メンバー3人だけが花道へと移動して、花道先端に建てられたテントの中で「愛すれば」「アイズ」「ヤッサ!コレカラ音頭」が披露される。
トータスのみ花道に残り、『ヤッサ!』25年20回目の歴史を回想していく。初年度はジョンBが脱退中であり、ジョンBが戻ってからの数年は穏やかであったが、バンドに危機が訪れて活動休止に際して、『ヤッサ!』2デイズを開催したら超満員になったと思い起こす。

トータス自身も初年度は大阪万博30周年記念として開催したので、毎年開催するとは想像していなかったと話し、今年は関西万博に負けないつもりで組み立てたと言い添えた。そこでドラムカウントが入り、「大阪ストラット」へ。屈強なラガーマンたちが突然現れて、トータスは肩車をされて、オープニング同様に観客エリアを雨に打たれながら練り歩く。拳銃型マイク2丁を手に「バキュン! バキュン!!」と叫びながら、いつの間にか「今夜どう?(ここまではOK!)」も歌われる中、『ヤッサ!』史上初めてピクニックエリアまで練り歩く。オープニングの練り歩きだけでも凄い演出であったが、後半戦でも長時間をかけて観客エリアを、それも史上最長の距離を練り歩いてくれたことは、ウルフルズから本当に大切にしてもらっていることを観客も体感が出来たであろう。
トータスは羽根冠を脱ぎ、スーツ姿で「サムライソウル」の序盤をギター1本で歌う。さっきまでの練り歩きの熱狂とはまた違う静かなる熱狂を感じざるをえない歌声。祭騒ぎから胸騒ぎとでも言おうか、全く違うタイプの騒ぎを続けざまに感じさせてくれる凄みには驚きしかない……。漢気の塊と言うべき歌は、「僕の人生の今は何章目ぐらいだろう」へと歌い継がれる。25年20回目の『ヤッサ!』で来年還暦を迎えるトータスが「僕の人生の今は何章目ぐらいだろう」と歌うのには堪らないものがある……。絶対に最終章まで見届けたいと、その場にいた全員が思ったはずだ。
「20回やっても毎回毎回探求心が止まらなくて!」
このトータスの言葉にすべてが表現されている。改めて雨のせいで用意していたすべての演出が見せられなかったとも話し、でも25年やっているものの、あれだけ観客エリアを練り歩いたのは初めてだとも話す。「雨のおかげで一体感が生まれた」とも言っていたが、我々からしても雨だからと言って物足りないという感情は一切無く、雨にも関わらず大満足という感情でしか無い。初の試みであった屈強なラガーマン肩車は来年も取り入れる事も宣言されて、一通り色々な事を経験したので「怖いもの無いです!」という言葉も心強過ぎた。新曲を制作していることも発表されて、「いつでも観に来て下さいね!」から「イェーイ!」と歌い出される「バンザイ~好きでよかった~」へ! この日はMCから突然曲へ入る流れが多く、だからこその異様な高揚感興奮感が凄まじかった。日が暮れたと思ったところで、最後の曲へ。「それが答えだ!」のイントロに乗せて、最近好きな曲であり、この曲の様に若い時の曲で最近好きな曲がいっぱいあると、そういう波長があると語り始めて、こう続けた。
「みんなの役に立ちたいです!」
35年以上のキャリアがあり、こんな大規模な祭を25年20回も開催しているバンドが、そんな思いをまだまだ観客へ思ってくれていることが何よりも感動した。“それが答えだ! そーです そーなんです”という歌詞が、いつも以上に胸をうつ……。雨の中で歌うトータスが兎にも角にも格好良い…。
アンコール。サポートメンバーみんな法被で登場。ジョンB・サンコンは家来の格好で登場。ジョンBが「トータスに逢いたいか~?!」と呼びかける。観客全員のトータスコールから、舞台後方よりトータスが殿様の格好で勢いよくせり上がって飛び出してくる! 1995年の大ヒットシングル「ガッツだぜ!!」ではMVでお馴染みの殿様と家臣たちであり、トータスはシングルCDのジャケットにデザインされたキンキラキンの派手なサングラスをかけている。これで大盛り上がりにならないわけがない! あれから30年も経つが、未だに最先端で鋭く格好良いナンバーであり、何よりも30年愛され続けてきたことが、この場で実証されている……。途中、MVの様にトータスは倒れて、演奏は止まるが、観客からの「トータス!」大コールでトータスは立ち上がり、トータスが倒れた花道の場所だけが空高く上がっていき、そんな高所に威風堂々と立つトータスが胸を張って歌い上げていく。最後はメンバーとダンサーズとラガーマンの全員が花道をぐるっと囲む様に手を繋ぎ観客に向かって大きく両手を上げて頭を下げる。舞台後方では、すっごい爆音で大花火が大連発される。
これで誰もが終わったと思った。充分に大満足が出来ていたので。ところがメンバーとサポートメンバーの10人は舞台に戻り、横一列に並び、「ワンツースリーフォー」のカウントから、10人全員によるアカペラで「ワンダフル・ワールド」を歌い出した。とっさに観客たちはため息に近い歓声を放つ……。トータスの歌とメンバーたちのコーラスが混じり合っていく……。凄いムーディーであり、凄い粋な演出であり、この日一番くらいの大胸騒ぎに……。とんでもない『ヤッサ!』になった……と誰もが感じた。
「元気でいてくださいね! みんな!」
トータスは殿様のかつらを取って、そう挨拶して頭を下げて去っていく。雨という絶対的大危機を何事も無かったかの様に絶対的大成功へと導いたウルフルズ! 「恐れ入りました!」としか言葉は出ないし、「天晴れ!」としか言葉は出ない。雨が降ろうが何が振ろうが、ウルフルズの『ヤッサ!』は燦燦と輝くのみ! 26年21回以降の『ヤッサ!』が今から楽しみでならない。
Text:鈴木淳史 Photo:渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC) / 松本いづみ / ハヤシマコ
<公演概要>
『スマドリでええねん!PRESENTS "20th & 25th Anniversary" OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る! ヤッサ!20/25』
5月24日 大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場
【Set List】
M01. ウルフルズ A・A・Pのテーマ
M02. ワルツ!
M03. 明日があるさ
M04. センチメンタルフィーバー ~あなたが好きだから~
M05. SUN SUN SUN’95
M06. バカサバイバー
M07. おーい!!
M08. ゾウはネズミ色
M09. ええねん
M10. 笑えれば
M11. あついのがすき
M12. 愛すれば
M13. アイズ
M14. ヤッサ!コレカラ音頭
M15. 大阪ストラット
M16. 今夜どう?(ここまではOK!)
M17. サムライソウル
M18. 僕の人生の今は何章目ぐらいだろう
M19. びんぼう’94
M20. ヤング ソウル ダイナマイト
M21. バンザイ~好きでよかった~
M22. それが答えだ!
~ENCORE~
M23. ガッツだぜ!!
~SPECIAL~
M24. ワンダフル・ワールド
<リリース情報>
デジタル・シングル
「おっさんのダンスが変だっていいじゃないか!」
6月18日(水) 発売
※『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』挿入歌
デジタル・シングル
「青春」
7月2日(水) 発売
※『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』主題歌
<作品情報>
『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』
2025年7月4日(金) 全国ロードショー
公式サイト: https://gaga.ne.jp/oppan-movie/
<公演情報>
ウルフルズライブツアー2025-2026『ツーツーウラウラツーシーズン2』
◼︎2025年
9月23日(火・祝) 東京・昭和女子大学人見記念講堂
9月26日(金) 岐阜・バロー文化ホール(多治見市文化会館)
9月27日(土) 三重・イスのサンケイホール鈴⿅(鈴⿅市⺠会館)
10月11日(土) 和歌⼭・和歌⼭県⺠文化会館
10月12日(日)大阪・東京建物Brillia HALL 箕面(箕面市立文化芸能劇場)
11月1日(土) 岩手・一関文化センター
11月3日(月・祝) ⻘森・弘前市⺠会館大ホール
11月22日(土) 富⼭・砺波市文化会館
11月23日(日・祝) ⻑野・須坂市文化会館メセナホール
◼︎2026年
2月11日(水・祝) 滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
2月14日(土) 愛媛・⻄条市総合文化会館
2月15日(日) ⼭口・⼭口市⺠会館
2月21日(土) 鳥取・米子市公会堂
2月23日(月・祝) 奈良・なら100年会館
2月26日(木) 徳島・あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)
2月28日(土) 熊本・荒尾総合文化センター
3月1日(日) 宮崎・都城市総合文化ホール
3月7日(土) 栃木・かぬまケーブルテレビホール(⿅沼市⺠文化センター)
【チケット情報】
プレミアム席:9,000円(税込)※各会場、前から4列目まで
通常席:8,000円(税込)
ツアー特設サイト
http://www.ulfulsspecial.com/tsu-tsu-uraura2-2/
ウルフルズ オフィシャルサイト
https://www.ulfuls.com/