1975年に放送が開始され、青春ドラマの一大ムーブメントを巻き起こした『俺たちの旅』が、50年の時を重ね、初めて映画化、1月9日(金)から全国公開される。タイトルは『五十年目の俺たちの旅』。
『五十年目の俺たちの旅』
「夢の坂道は 木の葉模様の石畳~」で始まる主題歌を聴くと、急に青春モードに切り替わって、甘酸っぱい思い出がよみがえる昭和世代は多いと思う。友情、恋愛、就職、夢……そんな普遍的なテーマが“切なさ”とともに飛び交う青春ドラマ『俺たちの旅』は、1975(昭和50)年10月に日本テレビ系で放送をスタート。1クールで終了のはずがあまりの人気に1年間続き、46話に至った。中村雅俊が演じるカースケと同じベルボトムのジーパンに下駄というファッションの若者が街中にあふれていた。
放送終了後も『十年目の再会』(1985)、『二十年目の選択』(1995)、『三十年目の運命』(2003)と10年ごとにスペシャルドラマが放送されてきたが、演出を手がけてきた齋藤光正監督が逝去したため、“四十年目”は製作されなかった。それが“五十年目”で復活、齋藤監督の演出のもとで一緒に作り上げてきた中村雅俊が初監督を務めることとなり、しかも劇場映画となって戻ってきたのだ。脚本も、シリーズを通して気心が通じ、ドラマの精神を支えてきた鎌田敏夫が書き下ろした。ファンの皆様、お待たせしました、の“俺旅”です。
登場人物には、おもしろいあだ名がついている。主演の中村雅俊が演じるのは、すぐカーッとなるから「カースケ」。
70代の彼らは、それぞれに自分の居場所をみつけて、平穏に暮らしている。カースケは、技術と着想力、熱量で、時代の最先端の一役を担う町工場の社長、いかにも彼らしい職業だ。一番じいさま感がただようグズ六は、ビジネスの才がある妻のおかげで介護施設の理事長の座におさまり、名士風。格言めいたセリフをつぶやくのも面白い。オメダなんて、妻の故郷、鳥取・米子市長でいまや貫禄の地方政治家、次は県知事かとうわさされている。
そのオメダが突然、カースケを訪ね東京にやってきて、「実はオレにはやりたいことがあるんだ」と打ち明けるところからドラマは始まる。彼はまだ、迷い、悩み、つまり、青春しているのだ。
シリーズもので、前作を知らずに観ても充分楽しめる映画は多くあるけれど、さすがに本作は、1作目から見守ってきたファンが一番楽しめる。「五十年目の答え合わせ──」のキャッチフレーズ通り、今まで描かれてきた3人の男たちの“人生の選択”が、すべて壮大な伏線となってこの映画で回収される。
当時を知らない人でも、そんなに大ヒットしたドラマなら時代を超えた感動があるはず、と興味を感じたなら、今、TVerでドラマが観られるし、BS日テレでスペシャル・ドラマも放送されるので、ちょっとだけでも観ていただけたらと思う。また、YouTubeにアップされた、〈“俺旅”を一気に予習&復習!〉というまとめ動画もよくできていて、だいぶ忘れちゃったなという人にもオススメ。
──冒頭に、おなじみの主題歌がながれ、若き日のカースケのひたむきな姿が映し出されると、もうあの時代にタイムスリップをしてしまう。身勝手なひとたちだなあ、となかばあきれる場面もある。開き直ったじいさんたち、とみえなくもない。でも、青春なんて、そういうものかも。変わらない俺たちの旅は続く──、のです。
文=坂口英明(ぴあ編集部)
(C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会

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