坂本悠花里監督が目指した「日本映画にない世界観」 長編デビュー作『白の花実』撮影裏話を語る
映画『白の花実』公開直前イベントより

2019年公開の『21世紀の女の子』の一篇「reborn」を監督し、中編「レイのために」(2019)や短編「木が呼んでいる」(2020)などで国内数々の映画祭で受賞、その才能が評価されてきた坂本悠花里の初となる長編作品『白の花実』が、12月26日(金)に公開される。この度、公開直前イベントが12月10日に行われ、映画初出演にして初主演を務めた美絽をはじめ、池端杏慈、蒼戸虹子、坂本監督が登壇した。



先日スペインで行われた第73回サン・セバスティアン国際映画祭のNew Directors部門でクロージング作品として上映され、現地で熱い喝采を浴び注目を集めた本作。周囲に馴染めず、転校を繰り返す杏菜(美絽)は、新たな寄宿学校で美しく完璧な少女・莉花(蒼戸)と出会う。しかし、莉花は突然、屋上から飛び降りて命を絶ってしまう。残されたのは一冊の日記。ページをめくるたび、莉花の苦悩や怒り、痛み、そして莉花の幼なじみ・栞(池端)との記憶と、言葉にできなかった“ある秘密”が浮かび上がる。やがて日記から青白く揺れる“鬼火”のような魂が現れ、杏菜の心に静かに入り込み、予想もつかない行動へと踏み出す──。



イベントでは第38回東京国際映画祭レッドカーペット以来の登壇となる4人が、全国公開に向けての心境や撮影の裏話などを語った。寄宿学校×キリスト教×女子校という設定のもと、ファンタジー&ホラーのジャンルがミックスされた本作について坂本監督は、「ファンタジーやホラーなど現実世界に現実ではないものが入ってくる世界観が好き。ロバート・エガース監督版『ノスフェラトゥ』的な、日本映画では観たことがないものができないかと、そんな世界観を探っていきました」と着想を明かした。



群馬県や山梨県で行われた撮影について振り返ると、美絽は「全てが学びでした」と回想し、蒼戸も「初めての映画出演だったので、すべてに不安と緊張がありました」と初々しさをのぞかせた。坂本監督が「3人のエネルギーが途切れることがなかった」などと評すると、美絽はエネルギーの源を「ご飯を沢山食べること」と明かし、それに同調するように池端は「ケータリングのご飯が美味しくて、給食みたいにみんなでお盆を持って“今日は何かな!?”と言いながら食べに行くのが楽しかった」と声を弾ませていた。



坂本悠花里監督が目指した「日本映画にない世界観」 長編デビュー作『白の花実』撮影裏話を語る

本作の見どころのひとつでもある印象的なダンスシーンについては、約半年にわたるレッスンを経て臨んだという。

美絽は「ダンスは初めてだったので、自分がどこの筋肉を使っているのか、五感を大切にする作業から始めました。今思えば練習期間の全てが楽しい時間でした」と懐かしそうに回想。蒼戸も「コンテンポラリーダンスだったので、自分の体の使い方を知るところから始めて、振りを入れてからは役の踊り方の個性があったので、呼吸や目線を意識して踊りました」とこだわりを紹介した。池端は「レッスンの時間は穏やかに流れていて、この3人ならば落ち着いてやれる雰囲気だったので大好きな時間でした」と思い出深い経験だと述べていた。



坂本悠花里監督が目指した「日本映画にない世界観」 長編デビュー作『白の花実』撮影裏話を語る

坂本悠花里監督が目指した「日本映画にない世界観」 長編デビュー作『白の花実』撮影裏話を語る

『白の花実』というタイトルについて、坂本監督は「白にはイノセントな雰囲気と怖い雰囲気があるので、そこから生まれたもの」と明かし、「一人歩きするようなタイトルでもあると思うので、観客の皆さんも映画を観た後に『白の花実』とはどんなものだったのか考えてもらえたらうれしいです」と観客のイマジネーションに期待を寄せた。



坂本悠花里監督が目指した「日本映画にない世界観」 長編デビュー作『白の花実』撮影裏話を語る

本作の注目ポイントについて聞かれると、「美しい景色と少女たちの葛藤」(美絽)、「わからない、答えがない。それが良いところ」(蒼戸)、「目で見えているものが全てではない、というのが注目ポイント」(池端)とそれぞれ言葉にし、坂本監督は「心と体を委ねて観てほしい」と話した。



最後に主演の美絽は「本作は少女たちの悩みや葛藤を繊細に描いている作品です。大人の方には学生時代を思い出すきっかけになっていただきたいですし、悩んでいる方にとっての救いのような映画になったらうれしいです」と幅広い世代に向けたメッセージを呼びかけ、イベントを締めくくった。



<作品情報>
『白の花実』



12月26日(金)公開



公式サイト:
https://www.bitters.co.jp/kajitsu/



(C)2025 BITTERS END/CHIAROSCURO

編集部おすすめ