国立劇場12月文楽鑑賞教室が東京芸術劇場に初登場、『万才』『国性爺合戦』を上演。技芸員による解説にも注目を
国立劇場12月文楽鑑賞教室

東京・三宅坂の劇場の再整備のため、首都圏のさまざまな劇場で公演を展開している国立劇場。2025年12月は、東京・池袋の東京芸術劇場 プレイハウスで初の文楽上演が実現する。

今回は「文楽鑑賞教室」。入門者に最適の見どころにあふれた演目に、文楽の演じ手である技芸員による楽しい実演付きの解説もあり、これから文楽に触れてみたいという人やもっと理解を深めて鑑賞したいという人も気軽に楽しめる公演だ。



国立劇場は歌舞伎鑑賞教室、また国立能楽堂の能楽鑑賞教室など、伝統芸能に初めて触れる人でもわかりやすい解説付きの公演を展開してきた。文楽に関しても国立劇場開場当初の昭和44(1969)年から鑑賞教室を実施、文楽を楽しむためのはじめの一歩として、舞踊的な要素の強い作品や大作の名場面などを取り上げている。「なるほど」と興味をかきたててくれる解説も人気だ。



国立劇場12月文楽鑑賞教室が東京芸術劇場に初登場、『万才』『国性爺合戦』を上演。技芸員による解説にも注目を

『解説 文楽の魅力』の様子

三人の人形遣いが人形を遣うスタイルや彼らが演じる舞台の設えは文楽ならでは、太夫と三味線とで表現される語りもの音楽、義太夫節も独特、その仕組みや技術、表現を、技芸員たちが実演を交えて丁寧に説明してくれる。伝統芸能の担い手として、普段はひたすら舞台に集中している技芸員たちの生の声が聞けるのも、コアなファンにとって注目ポイントに。昨年9月に東京・新国立劇場 小劇場で行われた「文楽鑑賞教室」では、Aプロ・Bプロでは人形遣いが、Cプロでは太夫と三味線弾きが解説を担い、ちょっと高めに感じられる敷居も一気に引き下げてくれる。今回はどんな解説が飛び出すか、期待が膨らむ。



国立劇場12月文楽鑑賞教室が東京芸術劇場に初登場、『万才』『国性爺合戦』を上演。技芸員による解説にも注目を

『万才』

もちろん、上演演目もとても魅力的。幕開きは、旋律的な部分の多い演奏で人形の舞踊的な演技が繰り広げられる景事物が登場。近畿圏の四季の情景を春・夏・秋・冬の4つの場面に綴った『花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)』のうち、春の場面にあたる『万才(まんざい)』だ。

京都の町並みを背景にふたりの芸人が新春を寿ぐおめでたい一幕。舞台は、正月を迎えた京都。町に門松が立ち並び、清々しい空気が漂う。そこへ芸人の太夫と才蔵がやってくる。ふたりは新春を祝い、鼓の音をうららかに響かせながら寿ぎの舞を見せ、商売繁盛、子孫繫栄を祈る。



後半は、近松門左衛門作の『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』の名場面、 「楼門」「甘輝館(かんきやかた)」「紅流しより獅子が城(べにながしよりししがじょう)」を上演。日本と中国を舞台にした壮大なスケールで描いた本作は、そのドラマティックな展開と異国情緒の物珍しさから、初演当時17カ月におよぶロングランを記録した作品だ。



国立劇場12月文楽鑑賞教室が東京芸術劇場に初登場、『万才』『国性爺合戦』を上演。技芸員による解説にも注目を

『国性爺合戦』楼門の段
国立劇場12月文楽鑑賞教室が東京芸術劇場に初登場、『万才』『国性爺合戦』を上演。技芸員による解説にも注目を

『国性爺合戦』甘輝館の段
国立劇場12月文楽鑑賞教室が東京芸術劇場に初登場、『万才』『国性爺合戦』を上演。技芸員による解説にも注目を

『国性爺合戦』紅流しより獅子が城の段

明国出身の父、鄭芝龍(ていしりゅう)と日本人の母を持ち、明国再興に尽力した17世紀の武将・鄭成功(ていせいこう)──作中では和藤内(わとうない)の生涯をもとに、日本と中国大陸を股にかけた華々しい活躍や、悲惨な戦の中での義理人情の厳しさと美しさを描く。今回上演されるのは、青年・和藤内が、両親とともに日本の肥前国から中国大陸へ渡ってからの物語だ。「解説 文楽の魅力」を聴いてからの鑑賞は、「なるほど!」が散りばめられた体験になる。



国立劇場12月文楽鑑賞教室が東京芸術劇場に初登場、『万才』『国性爺合戦』を上演。技芸員による解説にも注目を

『国性爺合戦』紅流しより獅子が城の段

入場料の価格がお手頃なのと、無料のプログラム付きなのも嬉しい。平日や日中に劇場に出向くことが難しい社会人のために、開演時間を夕方に設定した「大人のための文楽入門」、さらには平成28(2016)年度から実施されている外国人向けの公演、「Discover BUNRAKU―外国人のための文楽鑑賞教室―」も好評。

第一歩を踏み出す絶好のチャンスだ。




<公演情報>
国立劇場 令和7年12月文楽鑑賞教室



【演目】
万才(まんざい)
解説 文楽の魅力
近松門左衛門=作
国性爺合戦(こくせんやかっせん)
 楼門の段/甘輝館の段/紅流しより獅子が城の段
※日本語プログラム付

2025年12月4日(木)~18日(木) 
会場:東京・東京芸術劇場 プレイハウス

大人のための文楽入門 12月5日(金)・6日(土) ※18時開演

Discover BUNRAKU─外国人のための文楽鑑賞教室─
12月17日(水) ※18 時開演
※英語を交えた特別版の解説。
※日本語・英語のイヤホンガイド、6か国語のプログラム付。



関連リンク

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2538766(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2538766&afid=P66)



公式サイト:
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2025/0712/

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