法廷を舞台にした宮藤官九郎の人気ロックオペラ・シリーズ最新作 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足…』11月開幕
宮藤官九郎 (撮影:藤田亜弓)

宮藤官九郎が作・演出に加え、作詞・出演・演奏も兼ねるロックオペラ・シリーズ「大パルコ人」。その最新作、オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足…』が11月に開幕する。

キャストにはおなじみのメンバーに加え、松たか子峯田和伸といった初参加組も。その気になる中身について、宮藤に現段階の構想を語ってもらった。



初参加の松たか子、峯田和伸の“感情の振り幅”に期待

――「大パルコ人」で法廷劇、少し意外な気もしました。



宮藤官九郎(以下、宮藤) 映画『ジョーカー』の2(=『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』)が法廷劇だったんですよね。あれ、あんまりいいって言う人がいないですけど(笑)、僕も1回観ただけじゃよくわからなかったんですけど、2回観たらすごくいい映画で。みんな2回観ればいいのに(笑)。やっていることはものすごくセコいというか、ちまちましているのに、急に歌い出したり。法廷って本来歌う場所ではないので、その時点でめちゃくちゃインパクトあるんですよね。もともと法廷劇はやってみたいと思っていましたが、『ジョーカー』観て、あ、全然アリだなと。むしろ敷居をちょっと高くしといて、やっていることがくだらないっていうギャップが、表現しやすいんじゃないかなと思いました。



――そこで行われるのが離婚裁判、しかも夫婦役を阿部サダヲさんと松たか子さんが演じます。松さんは宮藤さん演出初参加ですね。



宮藤 きっと松さんが出る芝居の脚本を書いた人は、すごく嬉しいと思うんですよ。あんなに素敵な声で、素敵な表情で、素敵なトーンで台詞を言ってもらえるなんて。だから僕でいいのかな、とは思いますけど(笑)。阿部くんと、ドラマ『しあわせな結婚』でも夫婦役をやっていましたけど、今のところ全然被っていないです。あとドラマでは一応お互いに向かい合っている夫婦の話ですが、こっちは真逆なので。それも楽しいのではないかなと。仲良かったころもあったのにねっていうのはドラマの記憶で補って頂いて(笑)。



――さらにふたりの関係に子供が影響してくるのが大きな違いでしょうか。



法廷を舞台にした宮藤官九郎の人気ロックオペラ・シリーズ最新作 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足…』11月開幕

宮藤 そうですね。阿部くんがミュージカル俳優、松さんが演歌歌手という役どころで、そのふたりの子供だからさぞ才能があるだろうと思っていたら……という内容で。自分を顧みたら「お前だって大したことないだろう!」ってわかるんですけど、親ってなんかそれを忘れちゃうんですよね。子供が可愛すぎて、大事にし過ぎて。

そういう哀しさが出るといいなと思っています。



――ふたりの長男を演じるのが、銀杏BOYZの峯田和伸さんです。



宮藤 峯田くんのライブを何度も見たくなるのは、絶対に同じものがない、同じ感情でやっていないのが伝わるからだと思うんです。危ういんだけど惹きつけられる。舞台も何本か出られていますけど、あまり歌ってはいないですよね。そういう部分も含め、僕の作品だとこうなるんだっていうのを一度見てみたいと思ったんです。



――初参加のおふたりに対し、宮藤さんの作品だからこそどういった一面が見えたら、と思いますか?



宮藤 感情の振り幅には期待しています。特に松さんに関しては、ふざけている時と、大真面目な時と、泣いている時と、怒っている時。その全部を見たいと思っています。そんなに何回も出てくれないでしょうし(笑)。峯田くんは、最終的に役なのか、峯田くんなのか、よくわからないんだけどそれでも成立する。そんな感覚になるといいなと思っています。



――音楽は今回も怒髪天の上原子友康さんが手がけます。その魅力とは?



宮藤 90年代以降の日本のロックバンドは、わりと重いというか、シリアスな志向が強い気がするんですけど、友康さんはなんかカラッとしていて、すごく劇的なものも、ポップなものも作ってくれる。とにかく引き出しが多いんですよね。あと演奏する僕らの技術のこともよくわかってくれていて、難しいコードとかまったく使われていない(笑)。優しいなって思います。



――演者が演奏も担うのが本シリーズの大きな特色です。おなじみのメンバーもいますが、その成長は感じますか?



宮藤 向上心は感じますけど、成長は感じないですね。だから面倒くさい(笑)。でもそれがカンパニーの一部になった時、上手いだけじゃない、乱暴な感じがやっぱりいいなと思います。



法廷を舞台にした宮藤官九郎の人気ロックオペラ・シリーズ最新作 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足…』11月開幕


取材・文:野上瑠美子 撮影:藤田亜弓




<公演情報>
大パルコ人⑤オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足…』



作・演出:宮藤官九郎
音楽:上原子友康(怒髪天) 峯田和伸(銀杏BOYZ)

出演:阿部サダヲ 松たか子 峯田和伸 三宅弘城 荒川良々
黒崎煌代 少路勇介 よーかいくん 中井千聖  宮藤官九郎 藤井隆

【東京公演】
日程:2025年11月6日(木)~30日(日)
会場:PARCO劇場(渋谷PARCO 8F)

【大阪公演】
日程:2025年12月4日(木)~14日(日)
会場:SkyシアターMBS

【仙台公演】
日程:2025年12月20日(土)・21日(日)
会場:仙台サンプラザホール



チケット情報:
https://w.pia.jp/t/okatai/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560333&afid=P66)



公式サイト:
https://stage.parco.jp/program/okatai

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