
Text:ヤコウリュウジ Photo:若奈
大阪発のロックバンドBye-Bye-Handの方程式が、全国15カ所を巡る対バンツアー『MODEL ANSWER TOUR』初日を8月8日に千葉LOOKにて開催した。今年5月に結成10周年を迎えたこともあり、バンドがいちばん最初に行ったイベント名を英語表記にしたタイトルを掲げ、改めてバンドを見つめ直すという意味も込めた本ツアー。
数あるバンドの中から自分たちをツアー初日の対バンに選んでくれたことに喜びを爆発させ、その気持ちに応えるべく、矢口結生(vo/g)のどデカい挨拶から、興奮を抑えきれない様子で曲をぶっ放していったのがペルシカリアだ。1曲目の「優しい人」からたいぴょん(フルギヤ)(g)と中垣(b)は何度もジャンプを繰り返しながら弾き倒し、もっとイケるだろ、と言わんばかりの強いリズムを中村達也(ds)は叩き出す。「オレたちが埼玉のペルシカリアだ!」と観客へ向けて何度も叫んでいたが、それは自分たち自身に活を入れる為でもある。さらにマシマシのテンション感で踏み込んだ「死ぬほどどうでもいい」や初心を思い出しながら歌うと宣言して鳴らした「さよならロングヘアー」はもちろんのこと、ダイバーも出現した「風道」を2連投したのも気合いの表れ。このステージに立ったからにはカッコ悪い姿は見せられないのだ。
もちろん、ただただ攻め倒すだけのバンドではない。抜くところはしっかり抜いたアレンジも秀逸だった「右手」や人懐っこいメロディーをゆったり響かせた「いびき」、ヘヴィなリズムに浮遊感のあるリフ、芯のある歌声を融合させた「ラブソング」等も披露したように彼らは繊細さも持ち合わせたホームランバッター。そういった深みもいい。観客が突き上げた拳は間違いなくバンドを続ける理由になっていると矢口が語り、楽屋にいるBye-Bye-Handの方程式へ届くようにと観客も大合唱した「タイムオーバー」からラストはとにかく前へ進もうと宣言する「黎明」。ライブバンドらしい迫力と溢れ出る熱意を存分に見せつけてくれた。
そんな後輩バンドの大熱演を受けたBye-Bye-Handの方程式はスタートから血気盛んに踏み込むかと思いきや、暗がりの中で10周年を噛みしめるようなムードが広がり、「オレたちの10周年のツアー、『MODEL ANSWER TOUR』初日、千葉LOOK始めます。よろしくお願いします」と汐田泰輝(vo/g)が口にし、厳かな幕開けを飾っていく。まだツアーは始まったばかり。その為、詳細にセットリストへ触れていくことは避けるが、このツアーに懸ける気持ちの強さをいきなり感じさせてくれる。

汐田泰輝(vo/g)

Bye-Bye-Handの方程式
ロックシーンには結成20年、30年というバンドもたくさん存在しており、たかが10年かもしれない。でも、されど10年。ペルシカリアの矢口も触れていたが、どんなことだって10年続けるのは難しいのに加え、人生のど真ん中にバンドを置き、過ごしてきた10年が軽いわけがない。あえてゆったりと踏み出すことで生まれる重みと伝わる意志に触れ、彼らの抱く思いを再確認できる空気はまた格別だった。
もちろん、「始めようか? かかってこい!」と汐田が声を上げてロックチューンを連投すれば、ライブバンドらしいスタイルも健在どころか、さらにパワーアップしていることが伝わってくる。岩橋茅津(g)の叫び倒すコーラスやギターソロ、中村龍人(b)の挑発的目線もグッとくる。観客も瞬時に反応してフロアも熱を帯びるが、「オレは本気で来てくれないと本気でやれない人間なんで。やれますか?」と焚きつける汐田。
10周年にちなんで当初は10本予定だったという本ツアー。だが、気づけば全15本。それだけ築いてきた繋がりがあるということだろう。今日はあるがままの姿を、今のリアルを伝えようと、MCで話す内容はあまり考えてこなかったと汐田は語りつつ、ハリのあるポップチューン「閃光配信」へ瞬時にスイッチを切り替えて入っていったが、これはライブハウスで培ってきたキャリアだけでなく、Bye-Bye-Handの方程式というバンドを愛情を持って理解しているサポートドラマーの存在も大きい。

中村龍人(b)

岩橋茅津(g)
本ツアー直前に前ドラマーが脱退し、どんなライブになるのか、雰囲気はどうなのか、と思っているファンもいるであろうが、その点においては何の心配もいらないことも触れておく。しかも、このサポートドラマーはBye-Bye-Handの方程式が結成して間もなく行った初企画『模範解答 vol.1』に出演したバンドのドラマーであり、メンバーの地元である大阪・豊中の先輩。メンバーとの関係性もすでに構築されているという、美しすぎて作り話のようにも思えてしまうストーリーがあるのだ。
「オレたちはロックバンドが好きで、ライブハウスが好きで、ただそれだけの気持ちでステージに立っています。今日もオレたちをスペシャルにしてくれてありがとう!」と汐田が観客へ謝辞を述べてから突入した後半戦も見どころも聴き応えも十分。ビートで引っ張り、音で酔わせ、言葉で刺すダンスチューン「熱帯夜と遊覧船」、ポップパンク的アプローチでフロアをグイグイ引っ張る「swamp(沼)」といった曲では岩橋や中村が何度もモニターに乗り、フロアのいちばん後ろまで呼びかける。「やろうぜ、お前が必要だ!」と激走必至のショートチューン「風鈴」で汐田が叫んでいたが、やはりBye-Bye-Handの方程式はいつでも共鳴を求めている。


また、終盤になってくると時折メンバーから笑みがこぼれる場面も出てきたのも印象的なポイント。10周年という節目のツアー、その直前のメンバー脱退、積み重ねてきたことがあったとしても一抹の不安を抱えていても不思議ではない。現場に駆けつけてくれた観客を楽しませなければ、という責任感もあるだろう。そんな中、ライブでしか感じることができないたしかなモノを手にし、曲を追うごとにこの瞬間をより楽しめるようになったに違いない。
「千葉LOOK店長のサイトウさんの言葉にドキッとして、どういうことなんかな、と考えながらツアーをまわるのがオレの中でルーティーンになっていて。オレは頑張ります、って言っちゃうんですけど、(そうすると)頑張らなくていいから楽しんで、と返されて。頑張るとかどうでもよくて、本気で楽しんでいる姿が興味あるんだよ、って。えぇ、オレたち10年間ずっと頑張ってたんですけど、って思っていたけど、(その意味が)初めてわかったような気がします。頑張るとかじゃないわ。楽しむしかないわ、って。
「たしかに心へ刺さる曲をしっかり作っていくから。そのひとつひとつの音、言葉にちゃんと責任を持って届けていく」と力強い宣言もし、まさに今の彼らが投影されていると言ってもいい、7月16日に配信リリースされたばかりのストレートなラブソング「ひまわり」も披露しつつ、終わりの寂しさを吹き飛ばすように盛大に締めくくった。大熱狂のうちに幕を閉じたが、本ツアーはまだまだ始まったばかり。縁のある土地を巡りながら、ツアーファイナルは11月21日(金) Shibuya WWW。Bye-Bye-Handの方程式というバンドが描いていきたい景色を各会場で必ずや見せてくれるに違いなく、未来へ向けてステップアップしていく彼らの勇姿をぜひ体感して欲しい。

<公演情報>
『MODEL ANSWER TOUR』
8月8日 千葉・千葉LOOK
出演:Bye-Bye-Handの方程式 / ペルシカリア
<ツアー情報>
『MODEL ANSWER TOUR』
8月29日(金) 京都・京都MUSE
共演:LOCAL CONNECT、パーカーズ
9月11日(木) 兵庫・神戸 太陽と虎
共演:後日解禁
9月15日(月・祝) 香川・高松TOONICE
共演:EVE OF THE LAIN、CAT ATE HOTDOGS
9月19日(金) 北海道・札幌SPiCE
共演:ペルシカリア ほか
9月22日(月) 静岡・静岡UMBER
共演:osage、ミニマムジーク
9月23日(火・祝) 新潟・GOLDEN PIGS BLACK STAGE
共演:ザ・シスターズハイ、Wash My Friday
10月4日(土) 栃木・宇都宮HELLO DOLLY
共演:May Forth、Cloudy
10月5日(日) 神奈川・F.A.D Yokohama
共演:後日解禁
11月3日(月・祝) 愛知・名古屋 ell.FITSALL
共演:the paddles
11月16日(日) 大阪・梅田 Shangri-La
共演:KALMA
11月21日(金) 東京・Shibuya WWW
共演:ammo
※終了分は割愛
【チケット情報】
一般:3,500円(税込/ドリンク代別)
https://w.pia.jp/t/bbh-ma-tour/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2558359&afid=P66)
■Bye-Bye-Handの方程式 公式サイト:
http://byebyehand.com/
■YouTube Channel
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