木下晴香の歌声が響く! 音楽劇『コーカサスの白墨の輪』稽古場レポート&トレーラー映像が到着
音楽劇『コーカサスの白墨の輪』稽古場より (撮影:田中亜紀)

2026年3月12日(木) より東京・世田谷パブリックシアターで開幕する音楽劇『コーカサスの白墨の輪』の稽古場レポートおよびトレーラー映像が到着した。



ベルトルト・ブレヒトの傑作戯曲を、劇作家・演出家の瀬戸山美咲が未来の物語として大胆に再構成した本作。

生みの親と育ての親、どちらが真実の母親かを争う裁判を描いた名作が、エレクトロやロックなど多彩なオリジナル楽曲に彩られた音楽劇として現代に蘇る。料理女・グルーシェ役の木下晴香をはじめ、兵士・シモン役の平間壮一、太守夫人・ナテラ役のsara、スリカ役の加藤梨里香、“旅一座の歌手”役の一路真輝、そして裁判官・アズダク役の眞島秀和といった実力派キャストが集結した。



また、キャストが登壇する終演後ポストトークの追加開催が決定。役作りや稽古場でのエピソードなど、作品をより深く楽しむためのトークが繰り広げられる。



以下、熱気あふれる稽古場の様子を伝えるオフィシャルレポートを全文掲載する。



ファンクでロックでディスコティック!
大胆かつスリリングに、未来から現在を風刺する

2026年3月12日(木) から世田谷パブリックシアターで開幕する、音楽劇『コーカサスの白墨の輪』の公開稽古のレポートを送る。同作は、ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトがナチスの弾圧を恐れ、アメリカでの亡命生活を送る中で執筆した戯曲。文化的にも歴史的にも背景が違う現代日本で、半世紀以上前の作品を上演するには綿密な“戦略”が必要となる。それを劇作家・演出家の瀬戸山美咲は、未来の戦争が終わった後の物語として、人工知能といったモチーフも織り込みながら大胆かつスピーディーに、スリリングに上演台本を再構成。観客を驚かせる斬新なアップデートで、原作に内包された普遍性を浮き彫りにする。ブレヒトは古典や近代古典を大幅にアレンジし、改作でも物議を巻き起こす存在だったとか。そんな挑発的な劇作家自身でさえ、2026年の現在地を映し出す巧みな読み解きにびっくりするに違いない。



幕が開いて音楽が鳴り、おそらく観客が最初に感じるのは、メロディーを聞いた途端「これは普通のブレヒト上演ではないな」と一瞬でキャッチできる斬新さだろう。

演出家いわく「未来ではあるけれど、どこか80年代的な懐かしさもある。従来のブレヒト劇の常識にはとらわれず、ダンスミュージックとロックを混在させる──最終的に古今東西の参考曲を80曲ほどのプレイリストにまとめ、イメージを擦り合わせていきました」とのこと。確かに、ファンクでロックでディスコテック。踊り出したくなるようなノリの良さ、口ずさみたくなるキャッチーさ。舞台となる荒れ果てた世界に一見ミスマッチなキラキラとしたメロディーには、快い驚きと楽しさ、一種のアイロニーが満ちている。ブレヒトが提唱した“異化効果”は、あえて違和感あるものとして提示することで心理的距離を置かせ、観客に理性的な「観察」を促す効果を狙った手法。そう考えると、ここにも“瀬戸山流・異化効果”が横溢している。



木下晴香の歌声が響く! 音楽劇『コーカサスの白墨の輪』稽古場レポート&トレーラー映像が到着

億万長者が支配し、シンギュラリティが起きてもまだ人間たちが己を信じてすがりつく、未来の見えない荒廃した世界。そんな中ミサイルが発射され……不穏な序幕、物語の導き手である歌手(一路真輝)がリードしながら、キャスト総出でエネルギッシュに歌うオープニング《クーデター》は強いビートが効いた迫力あるナンバーだ。



混乱のさなか、料理女グルーシェ(木下晴香)は戦地へ赴く兵士シモン(平間壮一)と結婚の約束をする。シモンと別れたグルーシェは、城から逃げ出す太守夫人ナテラ(sara)が巨大な卵型カプセル器に入った小さな受精卵を置き去りにするのを目撃し、友人の料理女スリカ(加藤梨里香)の制止を振り切り、見殺しにできない“こども”を連れて逃亡。ここで歌われる《あなたと逃げる》は、ヒロインであるグルーシェの心情にピッタリと寄り添う曲。

リズミカルに手際よく、コミカルな表現で彩りながら、めくるめく展開で“瀬戸山版コーカサス”の世界観がしっかりと提示される。



木下晴香の歌声が響く! 音楽劇『コーカサスの白墨の輪』稽古場レポート&トレーラー映像が到着

木下晴香の歌声が響く! 音楽劇『コーカサスの白墨の輪』稽古場レポート&トレーラー映像が到着

《アズダクのテーマ》は、家を失い行き場を失った難民たちの一群の中から、酔っ払いで人でなしのアズダク(眞島秀和)が歌う曲。飲んだくれの仲間を引き連れたアズダクはこの作品のダークヒーローだ。演出家から聞くところによると、ブレヒト『マハゴニー市の興亡』でも歌われる《アラバマ・ソング》(クルト・ヴァイル作曲)のような曲調を目指したとか。酒の匂いが漂うような、庶民たちがしたたかに生きるパワーが感じられる愉快なシーン。



木下晴香の歌声が響く! 音楽劇『コーカサスの白墨の輪』稽古場レポート&トレーラー映像が到着

“こども”を可愛がってくれそうな農村の夫婦の家に、ひっそりと培養器を置き去りにするグルーシェ。農婦が愛おしそうに培養器を家に持って入るのを見届け、安心したグルーシェと歌手が掛け合いで歌うのが《わたし、うれしいの》だ。「身も心も軽いの、だからちょっと悲しいの」と相反する気持ちを吐露するグルーシェと、優しく寄り添うような歌手の対話は胸に沁みる。原作でもグルーシェが歌手から「街に帰る娘よ/やけにうれしそうじゃないか」と問いかけられ、「愛するあの子から解放されたから/ああ 心がはずむ(略)身も心も軽くなったから 悲しいの」(酒寄進一訳)と答える。矛盾した心理状態をうまく織り込んだ歌に、観客も心が揺れることだろう。



木下晴香の歌声が響く! 音楽劇『コーカサスの白墨の輪』稽古場レポート&トレーラー映像が到着

この日の公開稽古はここまで。観た場面はほんの一部だが、立ち上がる光景はどれも、戦争が起こる構造を深く分析したブレヒトが物語に刻んだリアルだろう。

AIに比べると誤作動だらけ、人間とはなんと厄介なものか! 魅力的なキャラクターをパワフルに“人間くさく”体現するキャストたちが、ここからどう仕上げていくか実に楽しみである。果たして人間の中に「善なるもの」はあるのか? ──ラストシーンには、未来から現在のわたしたちを鋭く突き刺す、強烈な場面が待っている。



取材・文:川添史子 撮影:田中亜紀



音楽劇『コーカサスの白墨の輪』トレーラー映像



<公演情報>
音楽劇『コーカサスの白墨の輪』



原作:ベルトルト・ブレヒト(東宣出版 酒寄進一訳)
上演台本・演出:瀬戸山美咲
音楽監督:坂井田裕紀



出演:
木下晴香、平間壮一、sara、加藤梨里香
森尾舞、西尾友樹、武谷公雄、辰巳智秋、斎藤瑠希
大久保祥太郎、阿岐之将一、酒巻誉洋、浜野まどか
一路真輝、眞島秀和



【ミュージシャン】
Bass:
大林亮三
木村朋徳(2026年3月15日(日) 13:00、16日(月) 13:00/18:30、4月18日(土) 14:00、19日(日) 12:30のみ)



Guitar:
大舘哲太
鶴田伸雅(2026年3月22日(日)13:00のみ)



Drums:
小牧佳那



【東京公演】
2026年3月12日(木)~30日(月)
会場:世田谷パブリックシアター
■終演後ポストトーク
2026年3月14日(土) 18:30(追加):眞島秀和×一路真輝×大久保祥太郎
2026年3月16日(月) 18:30(追加):sara×平間壮一×阿岐之将一
2026年3月17日(火) 13:00:瀬戸山美咲(上演台本・演出)×白井晃(世田谷パブリックシアター芸術監督)
2026年3月21日(土) 18:30(追加):木下晴香×加藤梨里香×大久保祥太郎



【兵庫公演】
2026年4月11日(土)・12日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■終演後ポストトーク
2026年4月11日(土) 15:00(追加):木下晴香×sara×阿岐之将一



【岡山公演】
2026年4月18日(土)・19日(日)
会場:岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場
■終演後ポストトーク
2026年4月18日(土) 14:00(追加):木下晴香×平間壮一×大久保祥太郎



【佐賀公演】
2026年4月24日(金)・25日(土)
会場:鳥栖市民文化会館 大ホール
■終演後ポストトーク
2026年4月24日(金) 18:30(追加):木下晴香×加藤梨里香×阿岐之将一



【愛知公演】
2026年5月2日(土)・3日(日・祝)
会場:春日井市民会館



関連リンク

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563921(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563921&afid=P66)



公式サイト:
https://setagaya-pt.jp/stage/25041/

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