Text:森朋之 Photo:シンマチダ
a flood of circle・佐々木亮介が主催の弾き語りツーマンシリーズ『雷よ静かに轟け』の第十二夜が3月25日東京・浅草フランス座演芸場東洋館で開催された。これまでに中田裕二、NakamuraEmi、奇妙礼太郎、古市コータロー、小山田壮平、詩人・御徒町凧、中村一義(Acoustic set with 三井律郎)、TOSHI-LOW(BRAHMAN, OAU)、橋本絵莉子、山口洋(HEATWAVE)、落語家の春風亭昇羊が出演してきたこのイベント。
3月25日の東京は冷たい雨。外国人観光客の数もいつもよりはだいぶ少なく、人力車を引っ張る車夫のみなさんも手持ち無沙汰のご様子。咲いたばかりの桜を眺めることもなく、これじゃあ国会前のデモのみなさんも大変だろうなと思いつつ会場に入ると、聴こえてきたのはロバート・ジョンソンの「Me and the Devil Blues」だ。お、今夜はブルースの気分だねと心のなかで呟き、「flood関連のライブで、いちばんチケット取りづらいのはこのイベントなんだよ」という立ち見客の会話に耳を澄ませているうちに会場が暗転し、黒のジャケットに身を包んだ日食なつこが颯爽と舞台に現れる。
キーボードの前に座って放たれたのは「100」。焦るばかりでなかなか足が前に出ない自分を鼓舞するような楽曲にいきなり胸を突かれ、瞬く間に日食なつこの領域へと誘いこまれる。曲が終わった瞬間の、女性客の歓声も気持ちいい。「浅草、江戸のど真ん中でございます。朝から晩まで、そこら中で“あやかし”どもがドンチャンドンチャン……」という口上から始まったのは、怪談めいた雰囲気と「99鬼夜行」。続く「√−1」は、彼女自身の大切な音楽仲間が亡くなったときに書かれた曲。この日は「卒業までたどり着けなかった者に向けて」と演奏されたのだが、どこまでが自分でどこまでお前かわからない関係のふたりが「存在しない数」を求め続ける姿を描いたこの曲の凄さはライブでこそその真価を発揮する。
「静かに轟きにやってきました。本日、一撃目の雷でございます」と笑顔で挨拶し、最初のMC。「1991年生まれ、ピアノ弾き語り屋さんです。高校生として、岩手の山奥で鬱々としているときから、佐々木さんたち、a flood of circleさんたちは、雑誌、ラジオ、テレビなどで活躍していて。それから18年経って、まさか浅草で一緒にやる未来あったんだ? と不思議な気持ちを抱きながら、このステージに乗っています。……そうですね、ロックンローラーだと思います、佐々木さんは。さっき楽屋でお話させてもらったんですけど、ステージに乗ってなくてもライブしてるような方だなと。なんで笑うんですか?(笑)」
この後は、物語性に溢れた楽曲が続いた。高校生のときに読んだ携帯小説と、孤独を抱えた自分自身の姿が重なる「ライオンヘッド」。抒情的なメロディとともに紡がれる<春の陽気に耐えられずに散っていく / 僕こそ八重の桜かもしれない>がいまの季節を滲ませる「やえ」。人間の愚かさと強さを寓話的に描いた「ヒューマン」。これらの楽曲を通して伝わってきたのは、ストーリーテラーとしての彼女の魅力。
「すごいですね、落語家さんは日々、こんな強い照明でやってるんですね。ロックとピアノの弾き語りがクロスオーバーすることは少ないので、呼んでもらえてうれしいです。今日はそんな佐々木さんの魂に応えたいと思い、そういうセットリストを組んできました。みなさんに刺さってたらうれしいなと思います」そう語り掛けると、客席から「“ド”刺さってる!」という声が飛ぶ。「“ド”刺さってる、いい言葉ですね」と笑顔で応えた日食の演奏はここから性急に勢いを増していく。
“Oh~Oh~”のコーラスの大合唱が巻き起こるなか、安定も保障もない”俺たち”の人生を歌い上げた「四十路」、観客の手拍子と<退屈な世の中と共に錆びることはないぜ>というフレーズが共鳴した「ダンツァーレ」、そして最後は代表曲のひとつ「ログマロープ」。ハンドクラップはさらに強くなり、サビの<鋼の心臓 生意気に歩こうぜ>が高らかに響く。凛とした佇まい、ケレン味と上品さ、激しさと繊細さが混ざり合う圧巻のステージだった。
まだ会場の照明がついているのに、アコギを抱えた佐々木亮介がふらりと舞台へ(このイベントではギターを2~3本使うことが多いのだが、この日はアコギ1本だった)。おしゃべりしていたお客さんたちは「あ、佐々木だ」みたいな感じでステージを見始める。
静かに始まり、最後にギターをかき鳴らした「ひとさらい」を歌い、「日食なつこ……さん。すごい。日食さんの音楽を聴いてると、人間が独りだってことを思い出します。寂しいとも言えるけど、独りでいることが誇らしくなる。……すみません、4人組なんですよ、自分」というトークでしんみりさせたり笑いを取ったりして、「ロックンロールの前にはブルースがあります」という言葉から始まったのは初期の名曲「泥水のメロディー」。ブルースとロックロールが絡み合う歌が響き渡り、「紹介します! ギター俺!」とギターソロをぶちかます。またもや「ひとりになる勇気がないんです……」とつぶやいたあとや「コインランドリー・ブルース」へ。
「日食なつこさんのいる時代に、生きててよかったね。間に合ったじゃん、きっと自慢できるよ」と語りかけながらアコギでメロディを爪弾き、そのまま「マイ・モーターサイクル・ダイアリーズ」。叫ぶように放たれる言葉に叙情が宿り、「いまさら言いたいことないよ、20年もやってきてさあ」といつもインタビューで言ってるような言葉を挟みながら、死ぬことを選ばなかった“俺たち”の切なさを生々しく描き出す。歌の求心力がすごい。
「間に合った人がいるってことは、間に合わなかった人がいるってことで。ここにハイエナがいます。バイトしたくなさすぎて、何があっても歌にします」そんな懺悔(?)から始まったのは「モモちゃんのブルース」。さらに「走馬灯のリクエストは最後まで決められない」という言葉とともに、最新アルバム『夜空に架かる虹』から「ルカの思い出」。佐々木亮介の生歌を近い距離で堪能できることがこのイベントの醍醐味なのだが、この日の歌はいつも以上にグッと伝わるものがあった。
舞台袖のスタッフに残り時間を確認し、「あ、まだそんなにあるんだ」とつぶやいた佐々木はステージの端に座り「Oh Yeah! いい年こいてさあ、ジャンプするとやっちゃうかもしんない」と、年末の大阪のフェスで足を怪我したことを歌にして自虐的に報告して笑いを取る。そして“ケガつながり”の(?)「全治」でこの日のライブはエンディングに向かいはじめる。「傷だらけでも笑ってあげるよ、踊ってあげるよ」と即興のブルースを奏でたあとは、新たなアンセム「夜空に架かる虹」だ。<5月6日 武道館/目を開けて夢を見ている>を直接聴くたびに、このフレーズの重みと素晴らしさが増しているような気がするのは、きっと筆者だけではないだろう。
「ないから欲しいのかも、戦争のない世界とか暴力の無い世界とか」と独り言のように呟き、「Honey Moon Song」を披露し、本編は終了。最後は日食が呼び込まれ、彼女の存在を知らしめるきっかけとなった「水流のロック」をセッション。佐々木は「5月6日、武道館に来てくださいね」と話し、舞台を後にした。
気が付けば5月6日(水・祝)の武道館公演まであとちょっと。凄みと愛らしさと奥深さと解放感を持ち合わせた佐々木の歌をあのステージで聴ける瞬間は、すぐそこまで迫っている。
<公演概要>
佐々木亮介弾き語り興行『雷よ静かに轟け』第十二夜
3月25日 東京・浅草フランス座演芸場東洋館
出演:佐々木亮介 / 日食なつこ
【日食なつこ/ Setlist】
1. 100
2. 99鬼夜行
3. √−1
4. ライオンヘッド
5. やえ
6. ヒューマン
7. 四十路
8. ダンツァーレ
9. ログマロープ
【佐々木亮介 / Setlist】
1. 花
2. ひとさらい
3. 泥水のメロディー
4. コインランドリー・ブルース
5. マイ・モーターサイクル・ダイアリーズ
6. モモちゃんのブルース
7. ルカの思い出
8. 全治
9. 夜空に架かる虹
10. Honey Moon Song
Session
水流のロック
<ライブ情報>
『“a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館”』
5月6日(水・祝) 東京・日本武道館
開場15:00 / 開演16:00
【チケット情報】
一般指定席:7,700円(税込)
学割指定席:5,500円(税込)
Tシャツ付き 一般指定席:11,000円(税込)
Tシャツ付き 学割指定席:8,800円(税込)
▼チケットはこちら
http://afloodofcircle.com/budokan2026/(https://lp.afloodofcircle.com/budokan2026/)
a flood of circle オフィシャルサイト
https://afloodofcircle.com/

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