
映画『石門』が2月28日(金) に公開されるホアン・ジー、大塚竜治監督のスペシャルインタビューが到着した。
本作は、“中華圏のアカデミー賞”と称される台北金馬獎で日本資本の映画として初めて「最優秀作品賞」を受賞し、「最優秀編集賞」との2冠に輝いた作品。
今回公開されたのは、『卵と石』『フーリッシュ・バード』の日本公開も決定した両監督の、3作品を語るスペシャルインタビュー。予期せぬ妊娠に直面した女性の姿を追った『石門』は、妊娠から出産と同じ10カ月をかけて撮影を行った。両監督のスタイルは、俳優経験のないキャストを起用し、事前に詳細な脚本を作らず、あらすじをベースに現実の出来事を反映して作品を作りあげるのが特徴だ。

『石門』 (C)YGP-FILM
大塚監督は、「中国は都市と地方によって、生活習慣や考え方が本当に違います。脚本を書く際、監督の思想だけでは書ききれないぐらい、様々な考えがあります。その為、出発点は我々の発想から始まっていきますが、出来上がった作品の中でも本当に実在する人物の考えを反映させることによって、映画の物語を紡いでいきました。周りの方々にも真似できない、唯一そこだけで起こっていることが描かれたりしていますので、観客に届いてくれたらいいなと思っています」と、その独自の手法の狙いを語る。
「映画が誕生して以来、さまざまな物語が語られてきました。その中で、私たちは現実の中で瞬間的に発生した出来事を積極的に映画で記録し、それを積み重ねることで、何かを伝えたいと考えています」と語る通り、撮影期間中に見舞われた予期せぬパンデミックも物語に組み込んだ。
「この映画は2019年に撮影され、コロナがまだ来ていない頃の半年間の人々の暮らしが映っています。画面に映る人たちは、まさかその後すぐにコロナが襲ってくるなんて思っていなかったでしょう。

ホアン・ジー監督は、2022年の東京フィルメックスでの体験を述懐する。「10年前に『卵と石』を東京で上映された時に鑑賞しましたが、過去に自分が経験した事と、主人公が経験した事が同じで、本当に感動しました。過去に性被害に遭いましたが、今は結婚して幸せに暮らしています」とひとりの女性に涙ながらに伝えられ、ハグされたことが忘れられないと語る。
続けて、「『石門』完成から時間が経ち、遂に日本で公開されることが決まり、日本の皆さんに観ていただくことができる。そしてこの10年の間に撮った3本の作品を合わせて観ていただくことができるのを、とても嬉しく思っています」と日本で3作品がほぼ同時に公開されることを喜んだ。
3作品を通して主人公を演じているのは、初の長編監督作品『卵と石』撮影地の学校で、ホアン・ジー監督が見出したヤオ・ホングイ。

大塚監督も、「周りの人々の社会や生活はすごいスピードで変化しているのに対して、彼女はすごくマイペースで、独自の世界観をずっと保っています。普段我々の生活の中でも、流されて生きていく人が多い中、なかなかそのような子に出会うことは少ない。彼女自身、軸を持っている点が非常に魅力的だと考えています」とホングイには天性の資質が備わっていると指摘する。
「普段、周りに流されて生きていると、さまざまなことを見過ごしたり、避けてたりしてしまうことがあります。3部作の主人公も、周りから見過ごされたり、避けられたりしているひとりです。この映画をきっかけに、こうした人々が身近に存在していることに気づいてもらえば、それだけでも観る価値があるのではないかと思います。また、同じ主人公が実年齢に合わせて成長していくので、3作品を通して観ることで、ひとりの人生を10年間見続けるという貴重な体験ができるのではないかと考えています」と、ホングイとの10年間にわたるコラボレーションとなる3作品を観て欲しいと願っている。
さらに、ホアン・ジー監督は、「私たちの作品を鑑賞された中国の観客の皆さんから“日本映画に似ている”と言われる機会が多くありました。それは大塚さん自身が日本人としての雰囲気を持っているところもあると思います。
その上で、「私は、日本の観客の皆さんが、中国人である私と、日本人である大塚さんのふたりの“夫婦”の監督が撮った作品を、どのように観てくれるのかを楽しみにしています。またそれは、日本の観客の皆さんにとって、また新たな“門”を開くことになると考えています。観ている時や観終わった時、ふと思い直した時に、何かしらの“門”が開けたなと思うような感覚になるのではないでしょうか」と、作品が訴えかける希望を全身で感じ取ってほしいと語っている。
『石門』
2月28日(金) 公開
公式HP:
https://stonewalling.jp/
(C)YGP-FILM