
大森靖子と銀杏BOYZが共演する『dabadabada』。 2018年は東京・Zepp Tokyo、2023年は東京・立川ステージガーデンでの開催だったが、今回の『ToyosuPIT 10th ANNIVERSARY Special Live Extra dabadabada vol.3 in SENDAI~夏に似合う痣に愛を垂らして~ supported by エンタメサイト ぴあ』は、宮城・仙台PITに場所を移して開催された。
“大森靖子と銀杏BOYZ”という字面だけで、何かが起こりそうな気がしてならない。そんな化学反応を体感できる対バンというものも、昨今では貴重である。期待で胸を膨らませたオーディエンスでフロアは埋め尽くされた。
Photo:阿部和徳 Text:高橋美穂
銀杏BOYZ
「僕の音楽は日常にあってはいけないもの。日常をぶっ壊してくれる特別なもの」
先攻は銀杏BOYZ。ブルーの照明に包まれたステージに峯田和伸とバンドメンバーが登場し、「アーメン・ザーメン・メリーチェイン Remix ver.」がはじまった。同期を交えた手練れの演奏のなかで、自由に泳ぐように歌う峯田。2曲目「若者たち」では、大森靖子Tシャツのオーディエンスからもコブシが。さっそく峯田は、ギターを弾きながら背中からフロアにダイブし、彼らしい接近戦を繰り広げる。このオープニングの2曲で、体と気持ちが自然とグルーヴと世界観に引き込まれ、会場全体がひとつになって走り出すような感覚があった。銀杏BOYZのライブは、バンドとお客さんが一緒に作るものなのだと改めて思った。


「仙台の皆さん、ここから車で1時間ほど行った隣町、山形県で生まれました」とMCを切り出した峯田。友だちからニルヴァーナ『ネヴァーマインド』を聴かせてもらった高校生の頃、授業中に居眠りして夢を見ているまま30年間ロックをやり続けている――という話からの「東京少年」が染みた。続く「エンジェルベイビー」でも、峯田は《ここにしかない》と、足元を指しながら歌った。峯田の地元に近い仙台だからこそ、さらに年齢を重ねた今こそ実感できる“夢の続き”感に共鳴の渦が広がっていく。だが、峯田がアコギを持って歌う「漂流教室」は、2005年のリリース当時よりも、どこか穏やかに聴こえた。あの頃のように、がむしゃらな少年ではもういられないんだなと、ふと感じた。そんななかでも、変わらない石のような意思を持った人たちがこの会場には集まっていたのだと思う。




さらに温度を高めたのは、大森靖子がゲスト参加した「SEXTEEN」。即スイッチを入れて、峯田とぶつかり合い、絡み合う歌声を響かせる。峯田曰く「深い因縁のある大森靖子さん」とのコラボレーションだからこそ見られる、磁石のS極とN極が瞬時に入れ替わるようなパフォーマンス。大森はマイクのコードを引き摺って颯爽と去っていった。



その熱を帯びたまま、「人間」では、峯田のアコギと独唱に、シンガロングが重なる。照明が真っ赤になってバンドの演奏が加わったとき、血がドクドクと通うような生々しさを感じた。それを柔らかな空気に変換したのが「GOD SAVE THE わーるど」。峯田はあちこちに手を振り、マイクを向けて歌わせる。畳み掛けるように「この歌、仙台で歌うの何回目かな」と峯田がつぶやいたのは「BABY BABY」。初めて聴いた頃より《永遠に生きられるだろうか》が、様々な別れと出会いを思い起こさせてキュンとした。その後、「ぽあだむ」では峯田がタンバリンを振り、「少年少女」で一体感をもたらし、ライブを締め括った。



「またアルバム出す出す詐欺だべ」と言われるかもしれない、と自虐も交えつつ、現在レコーディング中であることも明かし、「久しぶりに仙台で、バンド編成でライブができてうれしい」と笑顔を見せた峯田。さらに、サブスク・SNS時代の今、「日常のなかに音楽があるのはいいこと」と認めつつも「僕の音楽は日常にあってはいけないもの。日常をぶっ壊してくれる特別なもの」と断言したMCも印象的だった。「何歳になってもこれしかできない」と語り、最後は「承認欲求の向こうへ」「偽善者どもに」と言い放ってマイクをゴンとステージに置いて去っていった。日常を息苦しくしか生きられない僕らは、この“特別”をお守りのように抱えて、ここまで来たんだ――余韻のなか、そんな想いを噛みしめていた。


大森靖子
今年の夏はこれだけで十分じゃないかと思わせてしまう尊さ
後攻は大森靖子。フロアがペンライトでピンク色に染まるなか、「桃色団地」でライブをスタート。バンドのタイトな演奏のなかで、大森のアイデンティティそのものと言える歌声が際立って聴こえてくる。続く「TOBUTORI」では、手を叩き、手を振り、ステージを下手に上手に動き、「大森靖子!」と叫ぶ。オーディエンスに“大森靖子”の存在を焼きつけつつ、MCでは「あなたに会えて幸せです」と、オーディエンスを称えることも忘れない。そんな美しい関係性を感じただけに、大森が「夏これ以外予定ありますか?」と呼びかけて、オーディエンスのひとりが「一切ないよ!」と返答してからの「SUMMER SHOOTER」は、今年の夏はこれだけでも十分じゃないかなあ?と思わせてしまうような尊さがあった。




「子供じゃないもん17」では、オーディエンスを見つめながら「私も大好き」と応え、「怪獣GIGA」では、「おかえり」「ただいま」のコール&レスポンスから全身全霊で歌い上げ、さらに世界観が憑依したように歌う「SickS ckS」と畳み掛ける。オーディエンスへの愛情とプロフェッショナルな意識があふれる一挙手一投足から、目と耳が離せない。



「仙台の人はどれぐらいいますか?」と問いかけ、「地元のライブはイヤなことを上書きできる」という考え方を提示してからの「呪いは水色」は、震える声もアコギもエモーショナル。その後の、静寂をも音にした「死神」も圧巻だった。流麗なピアノと感情的な歌声が、不思議とピッタリ合う。その後の「Rude」も、壮大なスケール感に拍車をかけていく。
ラストは、演奏を務める四天王バンドのメンバーの紹介やソロ回し、《同情すんな愛させろ》のコール&レスポンスやで盛り上がった「最後のTATTOO」、そしてジャンプやハンドクラップの花が咲いた「ミッドナイト清純異性交遊」。いわゆるライブのお決まりみたいなものとは違って、誰もが衝動そのもので飛び跳ね、笑い泣きしているように感じた。バラバラなみんながひとつになる刹那の美しさでフロアを満たして、本編は幕を閉じた。



アンコールでは、すぐに出てきて「お前がいちばんかわいいよ」「私がいちばんかわいいよ」「峯田がいちばんかわいいよ」とコール&レスポンス。そしてハンドクラップに包まれた「絶対彼女」へ。「Re: Re: Love」では峯田も登場し、デコボコなようでふとしたときに重なり合う、ふたりらしいハーモニーを響かせる。オーディエンスは最後列まで笑顔でジャンプしていた。本当の最後も峯田と一緒に「VOID」。すべてを出し尽くすような歌とギター、そして叫び。大森は「幸せだー!」とストレートに想いを届けた。大森は本編でも「私や峯田さんやみなさんの聖地」という言葉や、オーディエンスと共にピースサインを掲げる場面があった。こんなにも今を肯定してくれるアーティスト、魅せられないわけがないじゃないか。




何をホンモノとし、何をニセモノとするかは、人それぞれの価値観もあるだろう。でも、感情のK点越えともいえるパフォーマンスを見せてくれた大森靖子と銀杏BOYZを、私はホンモノだと思う。そして帰り道、ひとりで歩いているファンもたくさん見かけた。わちゃわちゃライブを楽しむことも悪くはないけれど、ひとりだからこそ居場所を求めて足を運んでいるファンが、この日は多かったように感じた。きっと大森と峯田も“ひとり”であることを自覚していて、オーディエンス一人ひとりを見ているから、ひとりでも居心地がいいのだ。一人ひとりが“今、ここ”を求める切実さが集結した、夜闇のなかのまぶしいライブだった。
大森靖子×銀杏BOYZ『dabadabada vol.3 ~夏に似合う痣に愛を垂らして~』ダイジェスト「Re: Re: Love」~「VOID」
<公演概要>
大森靖子×銀杏BOYZ
『dabadabada vol.3 ~夏に似合う痣に愛を垂らして~』
7月29日 宮城・仙台PIT
【Set List】
◼︎銀杏BOYZ
01. アーメン・ザーメン・メリーチェイン Remix ver.
02. 若者たち
03. 東京少年
04. エンジェルベイビー
05. 漂流教室
06. SEXTEEN w/大森靖子
07. 人間
08. GOD SAVE THE わーるど
09. BABY BABY
10. ぽあだむ
11. 少年少女
◼︎大森靖子
01. 桃色団地
02. TOBUTORI
03. SUMMER SHOOTER
04. 子供じゃないもん17
05. 怪獣GIGA
06. SickS ckS
07. 呪いは水色
08. 死神
09. Rude
10. 最後のTATTO
11. ミッドナイト清純異性交遊
encore
01. 絶対彼女
02. Re: Re: Love w/峯田和伸
03. VOID w/峯田和伸
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表:銀杏BOYZ / 裏:大森靖子
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大森靖子 オフィシャルサイト
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