
映画監督・写真家の奥山由之が自主制作したオムニバス⻑編映画『アット・ザ・ベンチ』のテアトル新宿での9週間にわたる異例のロングラン上映を記念して、1月19日東京テアトル新宿にて都内では今年初となるトークイベントが開催された。
[第1編・第5編]脚本の生方美久、[第2編]脚本の蓮見翔、[第3編]脚本の根本宗子、そして[第4編]の脚本も手がけた監督の奥山由之が登壇。
「お三方とも脚本家として、つくり手として尊敬している大好きな方々なので。自主制作というイレギュラーな体制であるにも関わらず、オファーを受けていただけたということが、改めてとても幸せだなと実感しています」としみじみと語る奥山監督。自主制作ということで、脚本家陣には奥山監督が自らオファーを出したそうで、「根本さんは元々友人で、お話をする機会があったのですが、生方さんと蓮見さんはお会いしたことがなくて。SNSでいきなり連絡をさせていただいたんです」と振り返った奥山監督に向かって、蓮見と生方が口々に「いきなりだったから怖かった!」と正直な思いを述べて会場は大笑い。

奥山由之
「急に知らない人からDMで連絡があって。この人誰なんだろうと思ったけど、やけにフォロワーがたくさんいるなと思って。友だちに聞いたら、めっちゃすごい人じゃんと言われたんですけど、そこから半年くらい返事を無視しちゃいました」という蓮見の告白に、奥山監督も「昨日も広島で一日中一緒にいたんですが、その時はぜんぜんそんなことを言ってくれなくて。僕のことを知らなかったというのは今日初めて聞きました」とつぶやきはじめ、そんな姿に会場も大笑い。

蓮見翔
この3人に全幅の信頼を寄せているという奥山監督。根本とは映像としてのリズムやスピード感、疾走感の大事さを共有したといい、生方とは登場人物の設定や背景を話し合い、さらに蓮見とはセンテンスやセリフの足し引きを重点的に話したと、それぞれとの制作過程の違いを述懐。

根本宗子
もともと本作は動画共有サイトのVimeoで1編と2編が配信されており、劇場版を公開するにあたり、新作となる3編、4編、5編が追加で制作された。そんな制作過程から、3編の脚本を書いた根本の「いつ公開されるか分からないまま脚本をお渡しして。いつ撮るんだろうと思っていたんですけど、撮影日も連絡なかったので(笑)」という話にビックリした様子の奥山監督。「きっとものすごく大変なんだろうなと思っていて触れなかったんです(笑)。だから完成品を観させてもらって良かった」と根本が続けると、「うわぁ、そうでしたっけ……」と自分自身に落ち込む奥山監督。しかし、最初のオファーの時に、奥山監督から思いの込もった⻑文の手紙を受け取ったことを思い出した脚本家陣は、皆口々に「いやいや、そういえば丁寧でした!」となぐさめはじめて会場に笑いが続いた。

生方美久
終始和やかなムードで進んだこの日のトークイベント。最後には奥山監督があらためて「今回、心からご一緒したいと思った方々に対して、“こういう理由で、他の誰でもない、あなたでなくてはならない”という思いを真摯に熱意を込めて伝え続けた結果、こんなにも作り手たちの愛情が宿る、温かな質感の作品が完成するんだということに自分でも驚きましたし、自信にもなった。

映画『アット・ザ・ベンチ』
公開中
公式サイト:
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