「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由
(撮影/堺優史)

役者としてどんなに過酷な挑戦でも楽しんで乗り越えてきた山﨑賢人。実写化は不可能と言われてきた『ゴールデンカムイ』シリーズでは“不死身の杉元”としてすさまじい闘いぶりで観る者を魅了してきた。

北海道に隠された莫大なアイヌの埋蔵金を巡る金塊争奪戦シリーズ史上の最大の闘いを繰り広げた『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』が3月13日(金)から公開。誰が味方で誰が敵か分からない……様々な思惑が交錯する中、決戦の地へ辿り着いた主人公を演じる山﨑が本作に懸ける想いは、誰よりも熱い。



前作に続いてのこだわりは、“痛いアクション”

「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

山﨑が演じているのは、「不死身の杉元」と言われる杉元佐一だ。日露戦争で目覚ましい功績をあげる戦いぶりをして無事帰還したことからそんな異名が付いた元兵士の役どころ。顔の傷に兵士の衣裳が印象的なキャラクターだが、このメイクと衣裳で何の違和感もなく、すんなり役に入れたという。



「今回は、前作までの流れを引き継ぎ、アイヌ民族から強奪された金塊を奪った「のっぺら坊」がアシㇼパさんの父かもしれないという真相を確かめるために網走監獄へ向かうんですよね。アシㇼパさんと父を再会させたいという目的がハッキリする中、金塊を狙う大日本帝国陸軍第七師団の鶴見中尉(玉木宏)や新撰組の土方歳三(舘ひろし)による三つ巴の戦いになるので、とにかく無我夢中で戦う杉元がみどころになります。



戦いのシーンではアクション指導の和田三四郎さんから『ゴリラ感が欲しい』と言われて(笑)。本当に殴ってるかのようにリアルにとにかく1発1発の拳が重くて、強固に見えるようにということをすごく意識して挑みましたね。僕の解釈では、ゴリラ感って、別にゴリラになれっていうんじゃなくて、荒いけど力強い圧倒的なパワーというか。ちょっとパワーが足りてないなっていう時に和田さんから『もうちょいゴリラ感出そうか』って言われて、このチームの共通言語になっていました」



「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

前作に続いてのこだわりは、“痛いアクション”。アクロバティックなアクションではなく、泥臭い肉弾戦が大迫力で描かれる。杉元VS二階堂(栁俊太郎)のバトルシーンはとにかく熱量高いアクションの連続。

本番ではテスト時よりスピードアップし、肉体と肉体がぶつかり合う撮影になったそう。そこは難易度の高いアクションに度肝を抜かれるシーンだ。



「今までのシリーズの中でもあったんですけど、二階堂と戦うところは、刺されたりして。杉元は、それでも動じない不死身さを見せられるように、考えながら演じましたね。とにかくバトルシーンは、『確実にやる!』っていう杉元の気迫みたいな雰囲気を大事に撮影しました。二階堂と対峙するシーンはめちゃくちゃ熱いです」



網走監獄のセットは、本当に原作のまんまでした

「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

山﨑、山田、白石役の矢本悠馬が揃うシーンでは現場が同窓会のようなほのぼのとした賑やかさがあったという。そして、『ゴールデンカムイ』ならではのコミカルなシーンも満載。杉元と白石ら男たちだけでラッコ鍋を食べる場面では、まさかの爆笑の展開も…!? クスリと笑ってしまうシーンも現場はいかに面白いシーンになるのか、試行錯誤していた様子。



「ラッコ鍋に入った肉を食べて、男同士でいるのになんか変な気持ちになるシーンでは、みんな楽しんでやってました。そこのシーンでは無駄に大きい声を出してみたり、みんなで考えて演じましたね(笑)。監督のアイデアだったんですが、尾形の顔を持って『キロランケ(池内博之)が来たぞ』っていう細かいやりとりがあって、やるたびに笑いつつ、『今のでいいのかな?』って言いあっていました」



今回の舞台のひとつは、まるで本物かと思うくらいリアルすぎる網走監獄のセット。タイトルにもなっている網走監獄は、建物内部はパートごとに東宝スタジオにいくつか作られたという。オープンセットは栃木県那須にある広大な敷地に約1カ月かけて建てられたそうで、原作を極力踏襲しつつ、リアリティたっぷりに作られたうえ、CGで完全に原作のディテールを再現したものに。



「網走監獄のセットは、本当に原作のまんまでしたね。オープンセットのクオリティの高さにビックリしましたし、やっぱりあれだけちゃんとした等身大の形があると、俳優たちはすごくお芝居がやりやすかったです。あるきっかけで囚人たちが解き放たれるシーンがあるんですが、めちゃめちゃ広いセットだったんですけど、大人数が入ると結構狭くて。もみくちゃの中でのアクションは結構大変でした」



「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

その囚人が脱走するシーンの囚人役にはアクションレジェンド俳優の方たちも多数出演されていて、受けのリアクションが上手い方ばかりだったそう。迫力の暴れぶりを見せる囚人たちのアクションにも注目だ。派手なアクションはもちろん、笑いのシーンもあれば終盤では人間ドラマが繰り広げられる場面もあり、盛りだくさん。



「今回、熱量高いアクションがある中、笑いをポッと入れていたり。1作目よりも、個人的には緩急がすごかったなって感じたんですよね。アドリブもたまにありますね。完成した本編を観て気づいたのは、矢本くん演じる白石が杉元とアシㇼパさんらと『どっちなんだ。どっちに行けばいいんだ』みたいになった時がそう。多分アドリブだろうなって試写を観て笑いました。

矢本くんが率先してお笑いパートで色々やってくれて、感動します」



杉元とアシㇼパの関係性が深まっているところも見どころ

「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

映画1作目と映画の続編として放送された連続ドラマで信頼関係を築き上げたチーム。撮影は約1年半ぶりに行われ、メインキャストは全員続投。久々の再会とは思えないほど、序盤から役者陣のチームワークは抜群だったという。撮影は2025年1月~4月に北海道をはじめ、全国各地でのロケや東宝スタジオなどで行われた。



「地方ロケもあったので、撮影後にみんなで食事に行くこともありましたね。撮影の終わり時間がバラバラな時は、先にご飯屋さんを見つけたり。いい温泉を見つけた時には、現場で『あの温泉良かったよ』って情報を共有してみんなで行くこともありましたし、すごく仲がいい、良いチームなんですよ」



「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

今作は原作において第一部完結編ともいえるシリーズ最大の戦いが大スクリーンで描かれる。網走監獄で繰り広げられる怒涛のアクションはもちろん、みどころは盛りだくさんだと語る。



「新たなキャラクターもどんどん出てきますし、原作でも人気のシーンも描かれていて前作とは異なる面白さもありますね。ラストシーンの第七師団の駆逐艦が出てくるとこは、VFXやCGのクオリティがすごいですよ。網走監獄編では、杉元たちは、「のっぺら坊」に会うっていうことを目指していたので、やっぱりそこへ向けての盛り上がりはすごいものになっています。あとは、杉元とアシㇼパさんの関係性がどんどん深まってきていることが杉元の台詞で分かるところもあるので、その想いが伝われば嬉しいなって思いますね」



「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

『ゴールデンカムイ』はその独特の世界観から実写は不可能と言われていた作品。2024年に満を持して実写化された。

山﨑は、『キングダム』『今際の国のアリス』シリーズなど、数々のシリーズ超大作の主演を務めている。長期間にわたって役を深堀することができるシリーズものに挑む面白さについて尋ねると、「すごくありがたいことだなって思ってやってます。楽しいですし、やりがいもあります。クオリティの高い作品に出させてもらってるなって思うので、もう一瞬も気を抜かないでやろう、そういう気持ちでやってます」と背筋を伸ばす。



楽しめる方向に持っていきたい 自分がキツくなっちゃうのは1番ダメ

「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

原作に忠実に描かれている実写版『ゴールデンカムイ』。原作へのリスペクトを込めて、杉元を演じてきた山﨑。原作でも重要な台詞となっている「俺は不死身の杉元だ!」と言うニュアンスひとつにもこだわったという。作品への愛が深く、とにかくストイックに作品と向き合う中で、しっかりプレッシャーも感じているよう。



「僕はそんなにメンタルが強くないんですよね。むしろ弱いほうかもしれません(笑)。弱いからこそ、頑張れるんですよね。大勢のキャストやスタッフの先頭に立って引っ張っていくのは得意ではないですけど、本当にいいチームの皆さんに恵まれているので一緒に楽しくできている。

もちろん現場の雰囲気が良くなったらいいなって意識していますけど。全てのことにちゃんと人として向き合っていこうと思っていて、基本的にはフラットにいます。とにかくシンプルに物事を考えるようにしていて、いい映画が撮れたらいい。だから、お芝居をしている時は、主演とかそういうことは全く考えずに、その空間に生きている登場人物の一人だと思っています」



原作ものではとにかく強く、強靭な主人公を演じることが多い山﨑だが、山﨑自身はフラットでニュートラル。周りに人間が自然と集まり、支えたくなるような愛される人間だ。座長として大切にしていることを聞くと、「座長として大切なこと…いい差し入れ入れる、とかじゃないですか(笑)。分かんないですけど」と、気負わない回答で場を笑わせる。



「美味しいものをケータリングで入れると、やっぱり士気が上がりますよね。今回の『網走監獄』では、ステーキのケータリングを入れてます。やっぱりお肉はスタミナつくし、皆好きなので。身体を鍛えている人もいるので、喜ばれますね。僕もお肉が大好きで、差し入れで一番テンション上がるのは、お肉ですから。

肉からパワーもらっています(笑)」



「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

長年、役者として第一線を走り続け、戦い続けている山﨑さん。歩みを止めない中で、大切にしていることを聞くと……。



「戦っていること……。なんでしょうね。自分の中で何か新しいこと挑戦したりするようにはしていますね。作品だったり、役であったり、もちろんまったく同じ役はないんですけど。あまりひとつのイメージに囚われず、いろいろなことにどんどん挑んでいきたいという気持ちでいます。やったことがないことはもちろん。楽しめる方向に持ってかないと、自分がキツくなっちゃうのは1番ダメだなと思ってやってますね。お芝居をしていて楽しめないのは気持ち悪いじゃないですか。日々、そういうのを頑張って1個1個乗り越えてやってみています」。そして、時に疲れた時は、「美味しいお肉とお酒を堪能したり、アウトドアが好きなので自然と触れ合うことでリフレッシュしている」と教えてくれた。



今後の活動において、演出など役者以外のこともやってみたいか問うと「それは、あんまりないです。今は全然考えてもないですね、演じることを楽しめてるので。いつかなんかやってみたくはなりそうだなっていう気配はなくもないですが、具体的なビジョンは、今はないですね」と役者として走り続けたいと語っていた。「自分は、やれてないこととか、見れてないものが、まだまだあるんだなって思っていて。役者という仕事は、奥が深いなってやっぱり思いますね。こういう感じのことは、今までもやってきてるなって感じることはありますけど飽きることはなくて。前にもやってきたなと思ったら、どうしたら新しくできるのか、違う表現はないのかなと考えたり。もちろん求められていることをちゃんとやりますけど。そういうことを考える時間さえも面白いです」。



『網走監獄編』のポスターには、「誰が為に闘うか」というキャッチコピーがある。山﨑が役者として戦い続けられるモチベーションになっているのか、気になるところ。



「毎回、今、創っている作品が何より面白いっていうのが1番のモチベーションかもしれないですね。あとは、やっぱり観て下さった方に『なんか元気出ました』って言っていただけたり、『作品を観たことで人生観が変わりました』と言っていただけたら、それは本当すごいやって良かったなって思うんですよね。やっぱり、皆さんが楽しんでくれているっていう声が届くとやりがいを感じます」



「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由


<作品情報>
『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』



2026年3月13日(金) 全国公開



「挑戦は楽しめる方向にもっていく」山﨑賢人が役者として戦い続ける理由

©野田サトル/集英社 ©2026 映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

原作:野田サトル「ゴールデンカムイ」(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)
監督:片桐健滋
脚本:黒岩勉
音楽:やまだ豊 出羽良彰
主題歌:10-FEET「壊れて消えるまで」(UNIVERSAL MUSIC / BADASS)
アイヌ語・文化監修: 中川裕 秋辺デボ
製作幹事:WOWOW・集英社
制作プロダクション:CREDEUS
配給:東宝
出演:山﨑賢人 山田杏奈 玉木宏 舘ひろし




撮影/堺優史、取材・文/福田恵子



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