
「USB」といえば、今やデジタル関連製品全般で使われる定番の接続規格。PC用の周辺機器はもちろん、スマホやタブレットの充電ケーブルにも使われている。
まずはコネクタ形状の違いを押さえよう
世の中には、さまざまなUSB規格が溢れている。「USB-A」や「USB-C」、「USB 2.0」、さらには「USB 3.2 gen 2」など……まるで呪文のような呼称まであり、PC用の周辺機器や充電ケーブルを買うときに迷ってしまう人も多いことだろう。
そもそも、USBに関する呼称がわかりにくい原因の1つは、「コネクタ形状の違い」を指す言葉と、「バージョン(世代)」を指す言葉が複雑に絡み合っているからである。
そこでまずは、USBの「コネクタ形状の違い」から整理していこう。
たとえば、USBの後ろに「Type-A」や「Type-C」といった記載がある場合、これはコネクタ形状の違いを表現している。製品によっては「Type」という表記を省略して「USB-A」や「USB-C」と記載していることも、ややこしくしている要因だ。
アルファベットはA~Cの3種類だが、少々面倒なことに「mini USB」や「Micro USB」という規格も存在する。Mini USBとMicro USBにも「A」と「B」が存在するが、現在はMini USB Type-AやMicro USB Type-Aはほとんど使われていない。なので、「USB Type-A」「USB Type-B」「USB Type-C」「Mini USB Type-B」「Micro USB Type-B(2.0)」「Micro USB Type-B(3.0)」6種類を覚えておけば、困ることはないだろう。

現在使われているUSBのコネクタ形状は、おおむね6種類。Mini USB Type-BやMicroUSB Type-Bは、携帯電話やゲームコントローラー、デジタルカメラ、外付けストレージなどで使われることが多い
USBケーブルは、両端が同じ形状のものだけでなく、片方の端がUSB Type-Aで、もう片方がUSB Type-Cといった異なる形状を持つものも存在する。
なお、アクセサリ市場ではUSBの形状を変換できるコネクタも販売されており、このコネクタを使うことで形状の違うアクセサリを接続できる場合もある。
数字の違い=世代の違い
次に押さえておきたいのが、「数字」に関してだ。USBに関する表記でよく見かける「2.0」や「3.0」といった数字は、USBのバージョン(世代)を指している。
USBの初期バージョンである「1.0」が登場したのは、1996年のこと。その後、2000年に「2.0」、2008年に「3.0」がリリースされ、最新の規格である「USB4」は2019年に登場した(USB4では「4.0」という表記は使用されないのが、またややこしい…)。
USBの規格は、長い年月をかけて細かくバージョンアップされており、「USB 1.1」のように小数点以下で区別されることもある。しかし、USB規格は「後方互換性」を持っているため、たとえば「USB 2.0に対応するPCは、USB 1.0のアクセサリも使用することが可能」だ。
また、USBは世代によってデータ転送速度が異なってくる。
基本的に新しい世代ほど、転送速度は高速。たとえば、PCに搭載されているUSBポートが「USB 3.2」に対応している場合、USB 1.0やUSB 2.0の外部ストレージよりも、USB 3.2対応のストレージを使用したほうが高速にデータを転送できて快適だ。

USBにおける世代と転送速度のまとめ。図では省略したが、途中に小数点以下のバージョンアップも行われている
多くの人を悩ませ続けた「USB3.x問題」
しかし、USBのバージョン表記は、USB 3.0以降から一気に混迷し始めた。
USB 3.0が登場した5年後に「USB3.1」という規格が登場したが、その際、なぜかそれまでのUSB 3.0を「USB 3.1 Gen 1」に、新しい規格を「USB 3.1 gen 2」と呼ぶことにしてしまった。
この変更だけでもわかりにくいのだが、それから4年後の「USB 3.2」の登場で、さらに事態は複雑に。以前のUSB 3.0(USB 3.1 Gen 1)は「USB 3.2 Gen 1」に、USB 3.1 Gen 2は「USB 3.2 Gen 2」に名称が変更され、新たな規格は「USB 3.2 Gen 2x2」と名付けられた。「x2」は2倍の速度を意味しているが、結果的に、この表記は非常に理解しにくいものになってしまった。
また、過去の規格の呼称変更は、PC周辺機器市場にも混乱をもたらした。
たとえば、USB 3.0対応として販売されていた周辺機器は、新しい呼称に合わせて「USB 3.1 Gen 1」と表記を変更し、パッケージを作り直す必要があった。このため、販売店には古い呼称と新しい呼称の製品が混在し、消費者にとっては混乱の元となっってしまったのだ。
この問題は、時間が経つにつれてある程度解消されたといえる。USB 3.2が登場したのは2017年で、その後5年以上が経過し、現状市場にあるほとんどの周辺製品は「USB 3.2 Gen xx」という表記に統一されている。以下の表に呼称の変遷をまとめたが、現在は主に「3.2」ベースの呼称を覚えておくとよいだろう。

「USB 3.x」は規格の呼称が3回も変更し、市場に混乱をもたらした
USB-Cはケーブル選びに要注意!
USBは、データ転送だけでなく、充電(電力供給)にも利用できる便利な技術だ。
特にUSB-C規格は、「USB PD」(USB Power Delivery)という高速給電規格に対応しており、以前の規格よりも大量の電力を供給可能。

最新のiPhone 15および15 Proシリーズは、USB-Cポートを搭載。現行Apple製デバイスでも、USB-Cが主流になっている(写真/apple.com)
このように注目度が高まってきたUSB-Cだが、ケーブル選びには注意が必要だ。なぜなら、選択するケーブルによっては、望む性能が得られないことがあるからだ。
ケーブル選びで重要なのは、転送速度と対応電力の2点。転送速度に関しては、「ケーブルがUSB 3.xかUSB 2.0か」を確認しよう。USB 3.x規格は5~20Gbpsの転送速度に対応するが、一方のUSB 2.0は最大0.48Gbps(480Mbps)。単に充電用として使う場合は問題ないが、データ転送に使う場合は速度の遅さが問題となるかもしれない。
対応電力に関しては、USB PD対応であることと、対応する電力(たとえば60Wや100W)が明記されているケーブルを選ぶとよいだろう。USB PDに非対応のケーブルを使用すると、高速充電ができず、時間がかかってしまうことがあるからだ。
特にノートPCは注意が必要だ。
USB-Cケーブルは、オンラインショッピングや100円ショップなどで低価格の製品が多数販売されている。しかし規格や性能が複雑であるがゆえに、「購入したけど、思ったように利用できない」と残念な結果に終わる場合も十分考えられる。購入時には、パッケージの表記をしっかり確認して、選ぶようにしよう。
文/小平淳一