
今年2月、大阪市内で男子大学生を転落死させたとして、強盗致死の容疑で逮捕された中学生の男女3人組。そのうちの14歳の女子中学生が「美人局(つつもたせ)」になって男子大学生に近づいたのが事の発端だったという。
「美人局」による事件が頻発
2月に、14歳の女子中学生が「美人局」となり、だました22歳の男子大学生から現金を奪おうとした結果、大学生が転落死してしまうという事件が起きた。この騒動後、SNSを中心に「中学生が美人局って、日本大丈夫か?」など、今の若者たちを不安視する声が多くあがり、Xではトレンド入りした。
また、この件を発端に立て続けに美人局による事件が報道され、中には未成年男子をターゲットにした美人局まであったという。
まず、先の「日本大丈夫か提言」に関して言うと、最近ではパパ活なんかもよく聞く話だし、なにを今さらといった感じだ。よって本記事で展開したいのは、美人局批判ではない。
もちろん美人局する側が悪いということは大前提だ。ただ、男性側にも問いたい。そもそも、未成年に手を出すなよ、と。さすがに危機管理能力と倫理観が低すぎるのではないか。
まともな成人男性であれば、「未成年女性」は迂闊に手を出してはならない、リスクの高い存在だと認識できるはずだ。それなのに欲望のまま、誤った判断をしてしまう。
SNSがもたらす「若さ信仰」と「LJK」
先の男子大学生が死亡してしまった「美人局」事件。女子中学生との出会いはSNSだったそうだ。そう、SNSでは簡単に未成年と繋がることができてしまう。
近年、SNSの一部界隈での「若さ信仰」はすさまじい。とにかく若い女性とセックスがしたい、若ければ若いほどいい、と考える男性は多いものだ(し、それが正解なのだと思いこまされてしまう土壌ができている)。しかも、若い男性にこの思考を根強く持つ人が増えているのだから驚きだ。
Xで、「ナンパ師」を自称するアカウントを見てみると、若い女性が至高だとうたい、若い女性といかに関係を持つか、試行錯誤している様子が数多く見られる。
昔からあった「ナンパ塾」だが、令和ではそれが大きな進化を遂げている。ナンパで女性を口説くためのテクニック、円滑に会話をするためのトークスクリプト、初見で不快感を与えないためのファッションなどが情報商材のような形で発信されており、「ナンパコンサル」という、専属でナンパを教えてくれる自称・専門職まで存在している。
そんな彼ら、ナンパ師が好むターゲットの1つに「LJK」というものがある。
これは「Last(ラスト)JK」、つまり「高校3年生の女子高生」を指す言葉だ。成人年齢が18歳に引き上げられた今、18歳を迎えた高校3年生なら関係を持っても合法であり問題ない、と考える輩が一定数いるのだ。
男性という生き物は、ルールで禁止されているギリギリを攻めたり、ときに規約を破ったりしようとしがちだ。
例えば、私が属するレンタル彼女の世界では、性的接触が完全にNGだ。手繋ぎと腕組み以外の接触はできないとサイトの規約にも明記してあるのに、それでも性的なことを要求してくる人は一定数いる。
それも私のような10年務める古株ではなく、狙われるのは決まって入店したばかりの新人キャストだ。「人気キャストはみんな裏オプションをやっている」「また絶対指名するからさ!」だなんだと言って、業界に慣れていない子をなんとか言いくるめようとしてくる。
「未成年を口説くなんて、そもそもさほど難しくない」
話を戻す。3月から4月にかけての、高校を卒業し、進学や就職をするまでの1か月間。この「何者でもない空白期間」のLJKは、彼ら「向上心モンスター」の格好の餌食となる。彼女たちは、新しいことへの期待感から解放的になり、「年上の男性」というだけで相手が魅力的に見えてしまう時期だ。
このすれていない状態の女子こそ、経験人数を増やしたいナンパ師界隈では、特に狙い目とされている。
そのためX上では〈合法LJKが大量に湧いてる〉〈上京したてのすれてない子やLJKを狙え!〉〈LJKを即るにはインスタナンパだ〉〈LJKまじすれてなくて可愛いから大学生になる前に即らないともったいない〉といったポストが散見される。ちなみに「即る」とは、ナンパした女性とそのまま「即」ホテルまで行くことの隠語である。
ネットの恐ろしさは同じ思考の人間たちで集まれることで、そのうちに感覚が麻痺してしまうところにある。
未成年との性交渉を推奨するポストや、実際に行動に移しているルポポストを見続けていくうちに、それが問題のないものに思えてきてしまう。挙句、みんなやっているしな……と、敷居が低くなり「より若い子とセックスして、ほかの男たちにすごいと思われたい」という願望まで芽生えてしまう。
特に自己肯定感の低い男性は、ここで結果を出すことに優越感やアイデンティティを見出す。しかし、年齢を重ねた男性が未成年の女性を口説くなんて、みんな節度と常識があるからやっていないだけで、そもそもさほど難しいことではない。
年上フィルターがかかっているため、普通のデートでも「大人の男性カッコいい」になるし、女子の容姿を褒め、奢ってあげるだけで「周りの男子とは違う! それに大人の男性に口説かれるくらい自分は魅力的なんだ! カッコいい!」となるからだ。
勤務先や年収、ルックスが少々微妙でも、「年上である」ということでカバーされるマジック効果だ。
女性に若さを求める男性は、もちろん全員ではないが、女性にモテず、恋愛面以外でもパッとしない人生を歩んできた者が多い。だからこそあるタイミングで一念発起し、今まで無頓着だった外見やトークを磨き、女性を口説きはじめる。その手段として、ナンパに行き着く。
その結果、人生が好転する男性も数多くいたりする。問題は、若さが正義、関係を持つことが絶対、という思考がどんどん強くなると、加害性が増し、女性を見下し変にこじれてしまう男性が少なくない点にある。彼らのその先にはミソジニー的思考が待っている。
ナンパ師の“即!”でSNSにさらされるケースも
以前、ナンパについていった女子大生にレンタルしてもらったことがある。その子はナンパについていき、そのままホテルに行ったそうだ。すると、着替え途中の後ろ姿を隠し撮りされていて、「エロいJD即! どエロかったw」といった文面とともに、ナンパ師垢にその画像をさらされてしまったと言う。
そして運の悪いことにそのアカウントを同級生が見ていて、多くの友人にその隠し撮りの画像がシェアされたそうだ。彼女は、ナンパについていきセックスした軽い女だと認識され、心に大きな傷を負ってしまっていた。
私はただただ彼女の悲しみや後悔を受け止めることしかできなかったが、同じように傷つく少女をこれ以上増やしたくないなとも思った。
しっかり「NO」と言える女性や、経験値のある女性は短時間で口説きにくい。対して、若くまだ経験値の少ない若い女性は優柔不断で口説きやすい。もっと言えば”言いくるめやすい”。
人並みに女性経験のある男性からすると「わざわざそんなリスクのあることしなくても……」と眉をひそめるだろう。
知り合いのモテ男に、この問題を話してみると、さらっと「20歳そこらの子なんて話は合わないわ、身体の手入れも微妙だし、テクもないのにな。そんなのお守りじゃん」と返された。
「お守り」という表現はあながち間違っていないと思う。若い少女はただチヤホヤすればよいのだから、人間として接さなくても好かれるからだ。深い話や対等な会話を望む男性からすれば、そう見えるのも当然のことだろう。
いろいろ書いたがナンパを全否定しているわけではない。相手が未成年でなければ、個々人勝手にすればいいことであり、私がとやかく言える立場にない。ただ、未成年についていくことで、生じるかもしれないリスクを1度考えてみてほしい。
若い女子を、「利用してやろう」と思っていたつもりが、いつの間にか「利用されている」側になっていることもあるのだから。今回の「美人局」事件はそんなことを考えさせられた。
文/よもぎちゃん