
7月11日には史上最高値を更新し42224円に達した日経平均株価。しかし8月5日、そんな楽観相場から一転して“ブラックマンデー超え”の株価暴落に見舞われた。
新NISAが始まっていきなり大損かよ
それは多くの投資家にとって予想外のことだった。
下落のきっかけは7月31日、日銀が政策金利を0.25%まで引き上げることを発表したことだ。しかも植田和男総裁は記者会見で、0.5%と具体的な数字を出しながらさらに引き上げていくことも示唆した。
これを受けて8月1日(木)と2日(金)、日経平均は連続して下げた。間が悪いことに、これに8月2日夜のアメリカの雇用統計の発表が重なる。
「雇用統計の数字が悪く、アメリカの景気後退懸念が市場に意識されました。それから中東情勢の地政学的リスクが一段と強まっていたことが拍車をかけました」(経済ライター)
そして週明けの8月5日、日経平均はあのブラックマンデーやリーマンショック、東日本大震災などを抜いて歴代1位となる4451円の下げ幅を記録した。下げ「率」で見ても歴代2位である。
「日経平均はありえない暴落をしました。これは『岸田・植田ショック』と呼ばれています」(同上)
6日、7日は連続して反発したものの、歴代最高値から7000円以上下げた形だ。
岸田政権はこれまで『貯蓄から投資へ』と強調してきただけに、SNSでは怨嗟の声も多く上がった。特に2024年1月に開始した新NISAから投資の世界へ飛び込んだ投資の初心者たちにとっては積み立てを始めてすぐに厳しい洗礼を受けた形だ。
それだけに『国が進めていきなり大損かよ』『国民に損しかさせない』などの批判をはじめ、「やはりNISAは日本政府の罠だった」と謎の陰謀論まで出てくる始末。
そこで、暴落したいま個人投資家たちは何を思うのか、集英社オンラインは実際の声を聞くべく現役世代が集うJR新橋駅前で取材を行なった。
ちょっと前までは朝起きたらお金が増えていたのに
年収は1000万円で運用資金は約3000万円という、投資歴10年以上のAさんは大幅な株価下落に肩を落とす。
「朝起きてスマホでチャートを見るのが日課なのですが8月5日についてはチャートを開いた瞬間にゾクッとしましたよね。ちょっと前までは朝起きてスマホを開けばお金が増えていて上機嫌で仕事に行っていたんですけどね……。個別銘柄の損益は前日比でマイナス500万円以上です。正直、仕事する気分じゃないです」(50代・男性・会社員)
やはりショックを受けている人は多いようだ。別の20代会社員も語る。
「友達にやった方がいいと言われて新NISAを利用して2ヵ月前から始めてみました。今日暴落、暴落ってやたら携帯にニュースがくるんで軽く見てましたが日本のせいでもあるんですよね? それ見た時はなんなんだよと思いました」(23歳・会社員・男性)
「今年の初めから新NISAを使って毎月1万円の投資をしています。ただ、損していると言っても実際は大した金額ではないんですよ。
やはりこの暴落に肩を落としたり、国に不満を持つ人はいた。しかし、取材をしてみて一番多かった声は、“長期投資なので、短期的な下落は気にならない”という冷静な声だ。
「NISAやっていますよ。貯金のつもりでやっているので、今回の暴落で何か思う事はありませんね。ドルコスト平均法という少しずつ積み立てていく投資法なので、いい時も悪い時もあると思っていますから」(29歳・会社員・男性)
「もともと銀行に勤めていたというのもあり、自社の商品に投資するというのがきっかけで投資を始めて4年目になります。いまはS&P500(米国株インデックス)などに投資しています。僕自身は今回の暴落については何も思わないというか、もともと長期投資ですし暴落を受けてもだいたい30万円くらいは利益が出ています」(26歳・会社員・男性)
実は国がNISAで推奨しているのは、積み立てによる長期投資である。“つみたて投資枠”の投資対象には、アメリカのS&Pや日経平均などの株価指数に連動する投資信託が多くラインナップされている。
この指数(インデックス)は短期的には上下するものの、過去のデータを見る限りではあるが、長期的には右肩上がりになっており、利益を出すことができると言われている。
もちろん、未来は誰にも予測できないが、“長期投資をしてほしい”という国のメッセージは投資初心者にもある程度伝わっているようだ。
今はバーゲンセール?
「まあ、先週末から下落するだろうなっていう兆候は感じていました。
「コロナショック時にすぐにアメリカの個別株にありったけのお金をつっこんで儲けましたね。それこそ100万円入れた株があっというまに3倍近くになったり大儲けできました。こういったショック時こそ全力で買うと私は決めています。ありったけですよ。お金を借りてでも株を買った方がいいと思ってます。バーゲンセールなわけですから」(40代・男性・会社員)
「一番よくないのは暴落してそこで焦って株を手放してしまうことだと思っていますので売らずにホールドしますよ。日本とアメリカの個別銘柄を中心に投資をしていますが今日だけでマイナス400万円です。もともとすぐにお金にするつもりでもなかったのでのんびりかまえてみますよ。いやいや平気なわけじゃないです。もちろん気持ちは落ちてますし株価がどこまで落ちるのか気になりますよ」(50代・男性・会社員)
この暴落に対する態度も投資家によって様々なようだ。
果たして株価はどこで下げ止まるのか。
7日、日銀の内田真一副総裁は「市場が不安定な状況で利上げをすることはない。当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要がある」と火消しに走った。
日銀の金融政策だけでなく、アメリカの景気動向や海外投資家の動向にも左右されるため、しばらく落ち着かない相場が続きそうだ。
投資は自己責任と言われる。自分のリスク許容度を見極め、暴落に動じない姿勢が必要かもしれない。
取材・文/集英社オンラインニュース班
写真/Shutterstock