
キャンディーズにはじまる70年代のアイドル、国産名車、そしてラーメン、カレーなどなど。自民党所属の衆議院議員として多くの引き出しを持つ、石破茂氏。
小学生の頃は『日清チキンラーメン』、中学時代は…
――まず、ラーメン議連会長でもある石破さんが初体験したインスタントラーメンとは?
もちろん、これ。『日清チキンラーメン』です。これは私と同世代ならみんな一緒でしょう。はじめて食べたのは小学生のとき。まだ、たまごポケットもなく、パッケージも地味でしたけど、お湯を注ぐだけなので小学生にでも簡単に作れる。ええ、食べまくってましたね。
――以前、石破さんが日清食品の50周年記念のようなテレビ特番で、チキンラーメンをすすってる姿を目撃したのですが、あれは?
農林水産大臣時代に出演しました。当時、「大臣がひとつの企業、商品を推す番組に出演するなんて、けしからん!」という意見があったんです。でも、「私は50年これを食い続けてるんだ! 何が悪い!!」と言って出演しました。
というのは冗談で、インスタントラーメンは日本が世界に誇る“食文化”ですから、そのルーツをテーマにした番組に農林水産大臣が出るのはれっきとした職務だということになりました。
ところで『出前一丁』ないの?
――すんませんッ! 買い忘れましたー。
じゃ、話だけするね。出前一丁のごまラー油。あの香りと、パンチの効いた辛味。今でこそ激辛なんて当たり前ですけど、当時はそういった刺激のある味がなく、「こんな味があったとは!」(かなり前のめりぎみで)と本当に斬新でした。
私、中学3年に高校受験があって、その時の夜食はひたすら出前一丁でしたね。
高校時代は『エースコックワンタンメン』、大学時代に遂に…
――他にも石破さんが前のめりになるほどの衝撃を与えたインスタント食品はあるのですか?
エースコックの『ワンタンメン』ですね。これは、まず「ワンタンなんぞ?」からだったんです。
これが発売された昭和38年当時、私は本物のワンタンも食べたことありませんでしたから。で、食べたら、もちっとした食感の生地がスープとあって、美味しいじゃないですか。
ただ、後になって本物のワンタンを食べたら、エースコックのとはまったくの別物でしたけど(笑)。
高校受験勉強中の夜食は、出前一丁とワンタンメンを7:3で食べてましたね。
――そして石破さんが大学生になる時期には、日清から『カップヌードル』も発売されてますよね。
やはり試験前の夜食は『カップヌードル』ですよ。これもお湯さえ注げばいい。夜食として大いに役立ちました。
今でもこのパッケージを見ただけで、50年前に時間が戻る気持ちになります。パッケージのデザインは微調整されているけど、それを私のような発売当時から食べている世代に感じさせないのが上手いんでしょうな。
――この時期は、『サッポロ一番』シリーズも人気だったと思うのですが?
東日本出身の学生には人気でした。う~ん。『サッポロ一番』も悪くない。嫌いじゃありません。でも、私のような西日本出身の人間は、やはり出前一丁なんでしょうな。
「余計なことすんな! そのまま作るのが一番うまい!!」
――カップラーメンを食べきったらスープにごはんを入れるのは、学生あるあるですけど、石破さんは?
まったくなかった。ひたすらこのまま食べてました。最近はお湯を注いで3分のところ、あえて10分まで延ばす食べ方もあるようですが、私はそれを行ないません。
そりゃ、人それぞれ好みがあるから、「10分のほうが絶対にうまい!」と言う人を否定はしませんよ。でも、私はパッケージに書いてある通りにしか調理しません!
――そこまで頑なになるのは、パッケージ以外の調理法を試して失敗した経験でも?
一時、【カレーにインスタントコーヒーを混ぜると味が引き締まる】というのがネットで流行して、私もそれをやってみました。
――石破さん、ネットで調べてまでカスタムしてるし!
でも、味は引き締まらないし、違和感しかない味でした。それで「余計なことすんな! そのまま作るのが一番うまい!!」と実感したんですよ。
それからは、どんなインスタント食品やカレーのルウでも、パッケージに書いてある通りに作る。だって開発者が試行錯誤を重ねて“3分”って数値を出したワケですよ。彼らは命がけで開発してるんです。
だったら、それが一番美味しいに決まってますから。そうして食べることが開発者に対する最大のリスペクトです。
最後の晩餐もインスタントラーメンで?
――ところで石破さんが最も愛するインスタントラーメンは?
やはり、出前一丁でしょうな。
――人生最後の食事も出前一丁ですか?
人生最後に出前一丁はちょっとさみしいよね(笑)。
――石破さん、開発者へのリスペクトーッ! それこそ出前一丁って海外でも人気がありますよね。
はい。香港や台湾には、現地仕様の商品がいっぱい並んでいます。
――出前一丁の大ファンの石破さんは、そういった現地仕様も実食するんですか?
なにも中華料理の本場に行ってまで、それを食べようとは思いませんが(笑)。
ただ、こうして現地の人たちからも支持される味を作り出す。その開発力は相当なものだと思います。それは心からリスペクトできることです。
取材・文/直井裕太 撮影/下城英悟