
PTAが揺れている。学校行事の充実や子どもの安全対策、保護者と学校をつなぐ役割など、重要な存在ではあるものの、あまりにも重い負担に保護者たちが悲鳴を上げている。
ボランティアのために仕事は休めない
PTAの活動について、30代女性(事務職、公立小2女児の母)は、「もちろんやりたくないですよ。だって面倒くさいし、大変じゃないですか。やりたい人だけでやってほしいです」と否定的だ。
「うちの子の学校では、1クラス6人も選出しないといけないので、卒業までにほぼ強制的に順番が回ってくる。PTA役員は、嫌々されている方が多い印象ですね。でもやらないまま卒業するのは気まずいし、私もいつかやらないといけないのかなと思うと心配です。仕事と両立できる自信がないです」
確かに、共働き家庭が増えた今、仕事との両立が難しいという声は多い。40代女性(会社員、公立小4男児の母)は、「周りのママ友や先生からお願いされて、『最初は仕事優先でいい』と聞いていたので引き受けたのですが、実際は仕事で来られない人の悪口を来ている人たちで言い合うような陰湿な雰囲気です」と語る。
「仕事が忙しい人は、2回に1回くらいしか会議に参加できず、他の役員から裏で『こんなに休むなら、やらなければよかったのに』『◯◯さんは何もしないから一緒にやりたくない』などと言われていて、かわいそうでした。
お金が一切発生しないPTA活動のために有休を使うわけにもいかないから、PTAを休むのは仕方がないですよね」
増える負担、かさむ打ち上げ代
30代女性(会社員、私立小3と小2男児の母)は、「高い学費を払って私立の学校に行かせているのに、保護者が仕事をさせられるなんて、納得できませんね。保護者の手を借りなければ学校が回らないのであれば、学校運営に問題があると思います」と厳しい。
「うちは共働きで、ただでさえ毎日忙しい。
実際にPTA活動をしている30代女性(会社員、公立小2男児・小1女児の母)は、集まりの飲食代が負担になると嘆く。
「ほかのママにお願いされてPTA役員をやっています。最近はママたちの年齢の幅が広いから、若いママはよく年上のママさんからPTA役員をお願いされています。自分よりも10歳以上年上の方からお願いされると、断れないですよね。
夜遅くまで会議や打ち上げがある日も多く、そのたびに母に子どもたちを預けないといけないので大変です。しかも、最近はレストランで会議をしたり、居酒屋で打ち上げをしたりすることもあるので、そのたびに出費がかさみます。飲食代は全て自腹なので」
ボランティアの範囲超えるなら縮小を
40代女性(会社員、公立小6男児の母)は、PTA役員に選ばれた経験がある。その仕事内容は、ボランティアの範疇を超える負担だったという。
「先生や周りのお母さんたちにお願いされたので引き受けたのですが、正直、複雑な気持ちでした。子どもの学校のために力になりたい気持ちはあるけど、仕事との両立は難しい。うちの子の学校には、PTA活動に力を入れている保護者の方が多くて、温度差を感じました。
行事の前や大事な会議のときは、有休を取ってPTA活動を優先させていましたが、時代に合わせてPTAをなくすか、縮小してほしいです」
一般的には、コロナ禍をきっかけに、学校行事やPTAも縮小の傾向にある。40代女性(自営業、私立中3女子生徒の母)は、「希望した人だけでやっても、人数は十分足りる」と指摘する。
「自営業をしている関係で、時間の融通がききやすいと周りの保護者に思われたのか、お願いされたので、しぶしぶPTA役員を引き受けたことがあります。活動に力を入れている人とそうじゃない人との間に溝ができていて、雰囲気は悪かったですね。くじ引きでなった人や、先生にお願いされて断れなかった人が多かったです。
一方で、熱心な方の中には、3年間ずっとPTA役員をしている人たちもいて、仲良しグループみたいになっていました。
会議のときはほぼその人たちが決めて、ほかの人は発言すらしない。仕事も中心になっている人がほとんどやってくれたので、私に振られた仕事はわずかな雑用程度でした。学校のために熱心に動いていただいているのはありがたいのですが、内輪ノリの感じが苦手でしたね」
地獄の委員決めは改善すべき
これまで『PTAの活動は忙しくて難しい』『やってみたけれど負担が大きい』といった否定的な意見を紹介した。ここからは肯定的な意見も紹介したい。
30代女性(パート、公立小5女児の母)は、「もし機会があれば、またやってみたいです」と前向きだ。
「昨年度、くじ引きで本部役員になってしまったときは、どうしようと思いました。でも実際にやってみると、周りのPTAの方や先生方に支えられて、楽しく1年間を終えることができました。
40代女性(専業主婦、私立小3男児の母)は今、PTA役員になって2年目だ。
「1年目にくじ引きで当たったときは、私に務まるのか不安でしたが、やってみると楽しかったし、思い出ができました。それで、2年目は自分から立候補しました。
学校のことをよく知ることができるし、ほかの保護者の方や先生方との距離を縮められてよかったです。学校行事に直接携われたり、学校のことを役員みんなで協力して決めていったり、すごくやりがいを感じています」
もちろん、仕事や家庭の状況、活動への適性、どのくらいゆとりがあるかなど、事情は個々によって違うため、誰にとってもやりがいがあるとは言えないだろう。
30代女性(専業主婦、公立小4女児の母)は、「地獄の委員決め」を経験した上で、次のような改善策を提案する。
「誰がPTA役員をするのか、保護者会で話し合って決めるときの雰囲気がすごく苦手です。1時間以上話し合っても、決まらなかったこともあります。誰かが立候補しないと終わらない、まさに地獄の空気です。仕方なく私が役員をしたこともあります。
私は専業主婦なので『あなたがしなさいよ』みたいな無言の圧力を感じたのも、立候補した理由の一つです」
PTAの仕事はやってみたら、意外と楽しいこともあったという。
「でも、いろんな家庭がありますし、1クラスから◯人出さなければいけない、みたいな縛りは早くやめるべきだと思います。できる人だけで、協力し合ってするのがいいのでは」
教員の負担増を心配する声も
できる人が、できるときにできることをやる。本来、ボランティアはそうしたものだ。「効率的でないことを強制される」のは時代に合わない。共働きの家庭も増え、昔ながらのPTA活動を見直すときが来ている。
だが、まったく保護者の活動がなくなると、運動会での安全対策や、児童のための行事をサポートする人がいなくなり、当たり前にあると思っていたイベントがなくなるかもしれない。それを踏まえた上での意見もあった。
40代女性(サービス業、公立小6男児の母)は、「PTAは学校運営に必要だと思うけど、押しつけ合いみたいになっている現状はよくないと思います。かといって、PTAがなくなったら、保護者に学校の情報が入ってきづらくなるので、廃止すべきでないと思います」
30代女性(パート、公立小4男児の母)は「今、学校を支えているのはPTAだと思うし、なくすのはよくないと思います」という。
「私も昨年度PTA役員をやって、その大変さは痛いほどわかります。ただPTAが縮小することによって、行事が少なくなったり、学校の質が落ちたりするのは嫌だから複雑ですね。保護者が無理なく協力し合える形を、学校が作ってほしいです」
40代女性(会社員、公立小2女児の母)は、教員の働き方改革が進む中、教員の負担を慮る。
「本音はやりたくないですけど、PTAは必要だと思います。今後もし自分がやることになったら、しっかりPTAの仕事をして、少しでも学校に貢献したいです。
PTAがなくなったら、その仕事は誰がするの?って思います。そのしわ寄せは学校の先生に行くんじゃないですか? これ以上、先生たちの負担を増やせないですよ」
取材・文/なかのかおり
集英社オンライン編集部ニュース班