
ストーリー、キャラクターデザイン、設定などを原作者の鳥山明先生が担当した新作アニメシリーズ『ドラゴンボールDAIMA』。この作品が現代で放送されている尊さを改めて確認してみたい。
ドラゴンボールで盛り上がったあの頃
国民的漫画『ドラゴンボール』は、1984年11月20日から1995年6月5日にかけて「週刊少年ジャンプ」にて連載された。
当時の子どもたちの火曜日の話のテーマは、今週のドラゴンボール。発売されたジャンプをいち早く読み、突然大きくなった悟空にびっくりし、出生の秘密を知ってワクワクし、ナッパのあまりの強さにビビり、フリーザの戦闘力に絶望し、謎のスーパーサイヤ人・トランクスの正体をめぐって考察を繰り広げ、最終回を読んで喪失感に打ちひしがれた……そんな人がこの世界に何千万、いや、何億人いるだろうか。
ドラゴンボールの人気は日本だけにとどまらない。全世界で爆発的なヒットを記録し、サッカーのネイマール選手は自身の身体に悟空のタトゥーを入れ、パリ五輪で陸上男子100メートルで金メダルを獲得したアメリカのノア・ライルズ選手もファンだと公言している。
今年はメジャーリーガーの大谷翔平選手も、ドラゴンボールの“フュージョンポーズ”をとって、新天地のロサンゼルス・ドジャースでチームメイトと打ち解けていた。ドラゴンボールはもはや、世界の共通言語なのだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、ドラゴンボールDAIMAだ。なんとなく見ている人も多いだろうが、今一度、この作品が地上波、さらにネット配信にて、全世界で“1話ずつ”同時に放送されていることのすばらしさを考えたい。
ドラゴンボールDAIMAは、とある陰謀によって小さくなってしまった悟空たちが、初めての世界“大魔界”へと行き、そこで大冒険を繰り広げるというストーリー。
鳥山明先生が細部まで監修したストーリーで、原作のラスボス・魔人ブウの誕生の秘密や、悟空たちが暮らす宇宙の成り立ち、さらには地球のドラゴンボールの始祖とも言える“大魔界のドラゴンボール”が登場し、原作で描かれきることがなかった“ドラゴンワールド”をより深く知ることができるようになっている。
もちろん世界観の掘り下げだけではなく、ドラゴンボールらしいバトル描写も見ごたえ抜群。新たな強敵が次々に現れ、悟空たちの行く手を阻んでくる。
全世界の仲間と同時体験できる喜び
こうしたワクワクするストーリーが毎週、決まった時間に放送され、放送後にはSNS上で日本のみならず、海外のファンもあれやこれやと感想を言い合って盛り上がっている様子は、まさに、ドラゴンボールが連載されていた1990年代を彷彿とさせる。
また奇しくも、ドラゴンボールDAIMAという作品が、原作の魔人ブウ戦直後のストーリーを描いていることからも、そのまんまあの当時の続きが再スタートしたかのような気持ちにもなってくる。
放送の時間帯が金曜の夜というのも絶妙で、一週間の仕事を終えたごほうびとして、寝る前にドラゴンボールの最新作を楽しむ時間は、何物にも代えがたい。衝撃的な展開を見た後は、ネット上で感想や考察を読みふけり、寝不足を気にせず、次の日の朝までドラゴンボールの世界を堪能することができる。
ドラゴンボールDAIMAは鳥山先生が「いつもよりかなり気合が入ってるかもしれません!」とコメントしていたように、先生の熱い魂が込められている。
まだ誰も見たことのないストーリーを全世界のファンと一緒にリアルタイムで視聴し、小さくなった悟空たちとは反対に、大きくなったファンたちが「こうなるのではないか?」「実はこのキャラが強いのではないか?」とあの頃と同じ熱量で語り合える幸せを感じ、改めて、一ファンとして、鳥山明先生に感謝の気持ちを伝えたい。
取材・文/ライター神山 集英社オンライン編集部