世界中のリーダーの行く手を妨げている、どうにも困った企業風土10選
世界中のリーダーの行く手を妨げている、どうにも困った企業風土10選

複雑で急速に変化する今の時代に、リーダーは勇敢になる必要がある――。『dare to lead リーダーに必要な勇気を磨く』(サンマーク出版)の著者で、米ヒューストン大学のブレネー・ブラウン教授は、そう説く。

その勇敢なリーダーシップの根底には何があるのか。

本書より一部抜粋、再構成してお届けする。

道を妨げるものが道になる

リーダーシップの研究を進めるにあたり、私たちは「ひとつの質問」からはじめた。世界のリーダーたちに対して、こう尋ねたのだ。

「複雑で急速に変化する(一見手に負えない挑戦や、革新に対する飽くなき要求がはびこる)環境で、リーダーが成功するためにいまのやり方を変えるとしたら、どうするべきだと思いますか?」

インタビューで出た答えはこれだ。「リーダーがいまより勇敢になって、勇気ある文化を育むこと」

では、なぜ「勇敢なリーダーシップ」が必要なのか、その具体的な「理由」の追究に乗りだしたとき、この調査は重大な危機に陥った。その答えはひとつではなく、50近くもあったうえに、多くが勇気とは無関係に見えたからだ。

上級幹部たちは、さまざまな観点から語った。「批判的思考」「情報の統合」「分析して信頼を構築する能力」「教育システムの再考」「刺激的な革新」「対立が深まるなかで共通の政治基盤を見つけること」「厳しい決定をくだすこと」「機械学習や人工知能という文脈で共感や関係性を構築することの重要性」……。

「スキル」ではなく「性格」?

私たちは質問をすることで、玉ねぎの皮をむきつづけた。「勇敢なリーダーシップの根幹となる〝具体的なスキル〟をあげてもらえますか?」

参加者の大半がこの質問に答えあぐねていたことに、私は驚いた。話を聞いたリーダーのうちおよそ半数弱が、はじめ、勇気を「スキル」ではなく、「性格」にかかわるものとして語っていたのだ。

特定のスキルに関する質問では、彼らはたいてい「もっているか、もっていないか」で答えた。私たちは興味深く彼らの態度を観察しつづけた。

「もしそれをもっていたら、どんなふうに見えますか?」

勇気が「行動力」だと信じている人も含め、8割以上のリーダーは具体的なスキルを特定できなかった。それでも彼らは、問題のある行動や、信頼や勇気を損なう文化的規範については即座に、熱っぽく語ってみせた。

まずはそこをスタートにしたいと思う。幸いにも、私のおこなっている研究では「わかっていることからはじめる」というのが原則だ。進むべき道を理解するために、私はその10倍もの時間を「道を妨げるもの」のリサーチに費やしてきた。

たとえば、私はもともと「恥」を研究するつもりはなく、「つながり」と「共感」を理解したいと思っていた。しかし、恥が一瞬にしてつながりを台無しにするということを知らなければ、本当の意味でつながりは得られない。

また、「ヴァルネラビリティ」(傷つきやすさ、脆さ、脆弱性、不安な気持ちなど)を研究するつもりもなかったが、それはたまたま、私たちが人生で求める大半のものに対する大きな障壁となっており、とくに「勇気」を奮うことを妨げていた。

行く手を妨げる問題行動と企業風土10選

まさしくマルクス・アウレリウスの言葉どおり「道を妨げるものが道になる」のである。

ここで、リーダーたちが世界各国の組織で「行く手を妨げている」とみなした、10の「問題行動と企業風土」を見ていこう。

1.    率直で生産的なフィードバックなど、相手に言いづらいことを言わない。これを勇気の欠如とみなしたリーダーもいれば、能力不足だと指摘した者もいたが、衝撃だったのは、半数以上のリーダーが、「優しく丁寧」な文化的規範が、気まずい会話を避けるための言い訳に使われていると指摘した点だ。

理由はどうであれ、気まずい会話を避けた結果、明快さの欠如や、信頼と献身の低下を招き、受動的攻撃性行動や陰口、裏でのやり取り(「会合のあとの集まり」)、うわさ話、うわべの同意(表ではイエスと言いながら、裏でノーと言う)など問題行動が増加したというデータが山のようにある。

2.変化や混乱で生じる恐怖などの感情を積極的に認めて対処する時間よりも、問題行動の対処に法外な時間を費やす。

3.つながりや共感の欠如によって信頼が低下する。

4.変わりゆく要求や飽くなき革新へのニーズに応えるために、しかるべきリスクを冒し、大胆なアイディアを思いつき、それを共有できる人材の不足。何かに挑戦して失敗する、あるいは斬新なアイディアを提示することで見下されたり、笑い者になったりする恐怖を感じると、人は現状維持や集団思考に甘んじるのが最善だと考えるようになる。

根底にあるのは「人間」の問題

5.挫折、失望、失敗によって行き詰まった際に、リソースを整理して顧客や株主に分配したり、社内のプロセスを完遂したりするよりも、チームメンバーに自分の仕事ぶりや価値を認めてもらうことに多くの時間とエネルギーを費やす。

6.恥をかかされ、非難されるばかりで、十分な説明がなく学びが得られない。

7.誤った印象を与えたり、間違った発言をしたりすることを恐れ、だれもが多様性や包括性に関する重要な会話を避ける。耳の痛い会話を避けて居心地のよさを選ぶのは典型的な特権であり、それによって信頼が損なわれ、意義深い永続的な変化を遠ざけてしまう。

8.問題が発生した際に、個人もチームも問題の特定や解決に取り組む代わりに、効率の悪い持続不可能な解決策に走る。間違った理由で間違ったものを修正すると、ふたたび同じ問題が表面化する。これはお金の無駄であり、士気も低下する。

9.組織の価値観が浅薄で、教えたり、数値化したり、査定できる実際の行動ではなく、願望の観点から評価される。

10.完全主義や恐怖が人びとの学びや成長を妨げている。



この10項目を見た大半の人は、これが「組織」内の話にとどまらず、「自分」の内面の葛藤を表すものであることにすぐに気づくだろう。これらは「仕事」に対する態度や組織文化の懸念を示すものだが、根底にあるのは「人間」の問題である。

文/ブレネー・ブラウン 訳/片桐恵理子 写真/shutterstock

dare to lead リーダーに必要な勇気を磨く

ブレネー・ブラウン (著), 片桐恵理子 (翻訳)
世界中のリーダーの行く手を妨げている、どうにも困った企業風土10選
dare to lead リーダーに必要な勇気を磨く
2025/2/202,090円(税込)432ページISBN: 978-4763140692

ヒューストン大学教授にしてベストセラー作家
ブレネー・ブラウン博士による、待望の新刊!

★ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー1位!
★米アマゾン53週連続ベストセラーランクイン!
★「CEOが必ず読むべき本」選出!(WSJ発表)
★著者のTEDトーク「傷つく心の力」6000万人視聴!


ヒューストン大学教授でベストセラー作家の
ブレネー・ブラウン博士による
待望の新刊が、ついに日本上陸。

20年にわたって「勇気、傷つきやすさ、恥、共感」
についての研究をおこなってきた著者が、
近年、「リーダーシップ」の研究に取り組み、
その調査結果を一冊にまとめたのが本書である。

複雑で急速に変化する今の時代に成功するには、
リーダーは「勇敢」になる必要がある――
と著者は指摘する。

そして、勇気を養うには、
「ヴァルネラビリティ(Vulnerability)
=傷つきやすさ、脆さ、脆弱性、不安な気持ちなど」
を受け入れることが必須だと説く。

「勇敢なリーダー」になるには、どうすればいいか?
組織を成長させるには?
最高のチームをつくるには?
生産的なコミュニケーションとは?
チームメンバーから心から「信頼」されるには?
どんな失敗からも「立ち直る力」をつけるには?

40万にものぼる最新のデータや
さまざまな研究事例から導かれた、
リーダーや組織の問題解決の具体的な方法が明かされる。
すべてのリーダーと、すべての働く人の必読書。

【賞賛の言葉】
●シェリル・サンドバーグ(Facebook COO)
――「ブレネーは本書を通じて、みずからの数十年にわたる研究を、勇気あるリーダーシップのための実践的かつ洞察力に富んだガイドへと昇華させている。本書は、着実に人々を導き、勇敢に生き、大胆にリードしたいと望むすべての人にとってのロードマップである」

●エドウィン・キャットマル(ピクサー・アニメーション・スタジオおよびウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ元社長)
――「ブレネーがピクサー社を訪れ、映像制作者たちと話をしたことがある。彼女のメッセージは重要なものだった。というのも、制作者がヴァルネラビリティと向きあうとき、みずからの挫折を克服しなければならないとき、打ちのめされるのを厭わないときにこそ、最高の映画がつくられるからだ。

傍観者として、安全で有意義な文化の価値を語るのは簡単だが、それを実現するのは途方もなく大変だ。つねに目を配り、安全な環境を維持し、勇気とヴァルネラビリティをもたなければ、よい文化は生まれない。これは簡単に身に付くスキルではないが、人に伝えることはできる。本書をぜひそのきっかけにしてほしい」

【目次より】
序章 勇敢なリーダーと勇気ある文化
第1部 ヴァルネラビリティと向き合う
 第1章 その瞬間と誤解
 第2章 勇気を呼び起こす
 第3章 武装
 第4章 恥と共感
 第5章 好奇心と確固たる自信
第2部 自分の価値で生きる
第3部 果敢に信頼する
第4部 立ち上がる方法を学ぶ

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