「幸せは人と比べて決めるものではない」90歳の美容研究家が嫉妬の感情を断ち切れるためにしていること
「幸せは人と比べて決めるものではない」90歳の美容研究家が嫉妬の感情を断ち切れるためにしていること

「幸せとは、人と比較して決めるものではありません」90歳を迎えた今もなお美容研究家として精力的に活躍する小林照子さんは、35年以上にわたり化粧品会社で活躍後、56歳で起業し75歳で高校を設立するなど、長い人生においてさまざま挑戦をきた。そうした経験から、他人を妬む前に、まず目の前の幸せに気づくことだと説く。

小林さんが「25のしないほうがいいこと」と「25のしたほうがいいこと」を説いた『少しよくばりくらいがちょうどいい』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

「妬み」と「恨み」はもっともいやな感情

<嫉妬はもっとも醜い感情。他人を妬む前に、まず、目の前の幸せに気づくことです>

人が持つさまざまな感情の中で、「妬み」と「恨み」はもっともいやな感情ではないでしょうか。「怒り」や「悲しみ」はたしかに抱きたくない感情ではありますが、一方で「怒り」は行動のエネルギーになったり、「悲しみ」は心を浄化してくれたりという効果もあります。

ところが、「妬み」や「恨み」は、人を苦しめ、どんどん醜くしていくのです。

私も若い頃、「なんで自分ばかりが、こんなにつらい思いをしなければならないの?」と、自分の人生を恨んだことがありました。東京大空襲で養父の店は焼失、疎開先の山形で養母は骨盤カリエスで寝たきり。家は貧しく、子どもの私が働いて一家を支えていく。そんな生活でした。

幸せは身近なところにあるもの

私は少女時代から、「いつか演劇のメイクアップを仕事にしたい」という夢を持っていました。そのためにはまず東京の美容学校で勉強をしたい。

でも、家計を支える必要のある私には、そんなことは夢のまた夢。その頃の私は、母校の小学校で「給仕」として働きながら、併設された高校の分校で勉強をしていました。

給仕というのは、先生たちにお茶をいれたり、授業の準備を手伝ったり、いわば雑用をすべて処理していくのが仕事でした。

安くても毎月お給料がもらえるので、私は一生懸命でした。

でも、自分と同年代で、勉強だけに打ち込める人たちが少しだけうらやましく思えました。私だって、自分のやりたいことに打ち込むことができたら。そう思ったときに鏡に映った自分の顔をいまでも忘れることができません。他人の人生をうらやみ、嫉妬する顔はほんとうに醜いものでした。私は激しい自己嫌悪に陥り、二度とこういう感情を抱くまいと思いました。

人はどうしても、自分と他人とをくらべて幸せを推し量ってしまうものです。自分が不幸だと決めつけている人、自分がいま何を望んでいるのかわからない人ほど、その傾向があると思います。

他人のほうが自分よりも楽しそう。他人のほうが自分よりも「いい人生」を送っていそう。他人とくらべて自分の人生はなんてつまらないのだろう、なんてみすぼらしいのだろう。そういう妬みの感情はどんどん負のスパイラルを生みます。


人間は多面な感情を持っています。ですから、負の面でつきあっていると負の面を引き寄せてしまいます。でも、そもそも幸せとは、人と比較して決めるものではありません。自分自身が決めることです。そして案外、幸せは身近なところにあるものなのです。

どんなことが起きても、カッとなってはいけない

かつては私も貧しい生活を強いられました。でも、養父母と3人そろって暮らすことができたわけですし、毎日の食事も十分足りていました。そして、子どもの頃から農作業を手伝ってきたからこそ、日本の四季の移り変わりに敏感になることができたのですし、自然の美しさをこの目に焼きつけることができたのですから。

私たちはすでに十分幸せなのです。妬みや恨みにとらわれているときは、なかなかそんなことに気づけないものですが、私たちの身のまわりには、小さな幸せがそこかしこにたくさん落ちています。戦争で亡くなった人たちがたくさんいるのに、私たちは生きている。

今日の食べものに事欠く生活を強いられる人たちが世界にはたくさんいるのに、三食、ごはんをいただいている。ほんとうはありがたいことだらけの世の中で私たち日本人は生きていて、生かされているのです。



若い頃は悩んだり、苦しんだり、妬んだり、恨んだり、そういったさまざまな感情をむしろ経験するべきだと思います。でも、歳を重ねるごとに、自分の人格のステージを少しずつ上げていきたいものです。

私も聖人君子ではありませんから、嫉妬する気持ちがわいてくることだってもちろんあります。でも、醜い感情がわいてきたときには、「あ、年甲斐もなく嫉妬しているな」と思って、身のまわりの幸せを思い浮かべてみる。

好きな人たちと楽しくごはんを食べる予定を立ててみる。そんなふうに知恵を絞って、負の感情を正の感情に置き換えていく練習をするのです。

どんなことが起きても、カッとなってはいけません。自分の人生のかけがえのない大切な一日が台無しになります。

私たちはいま生きているだけでも、十分に幸せなのです。

「嫉妬」という醜い感情との縁を完全に断ちきったとき、人は心の中で、すがすがしい高みに登ることがきっとできるのだと思います。

写真/shutterstock

少しよくばりくらいがちょうどいい

小林照子
「幸せは人と比べて決めるものではない」90歳の美容研究家が嫉妬の感情を断ち切れるためにしていること
少しよくばりくらいがちょうどいい
2025/3/61,650円(税込)256ページISBN: 978-4763142023 
編集部おすすめ