〈広がる「一足制」〉学校から上履きがなくなる!? 「買い替えがなくていい」「でも動物の糞を踏んだら…」保護者たちは賛否真っ二つ…導入理由を教育委員会に聞いてみた
〈広がる「一足制」〉学校から上履きがなくなる!? 「買い替えがなくていい」「でも動物の糞を踏んだら…」保護者たちは賛否真っ二つ…導入理由を教育委員会に聞いてみた

現在、東京都内の公立小中学校では上履きを廃止し、外履きのまま入室する「一足制」を導入しているところが増えていると話題だ。特に港区では、公立小中学校29校中20校で一足制が導入されている。

港区教育委員会の担当者に「なぜ一足制を導入するのか?」を聞いてみた。また、港区の親たちは一足制に対してどう思っているのだろうか? 街頭アンケートを行ない、本音に迫った。 

一足制導入の目的は「昇降口のスペース確保」

上履きを廃止し、外履きのまま入室する「一足制」。東京23区では、港区や中野区、台東区をはじめとする6区で一足制の導入が進んでいる。中でも、港区ではなんと29校中20校と、半数以上の公立小中学校で一足制が採用されている。

しかし、これに対してSNSやネット上には、「土足のまま教室に入るなんて不衛生だ」「雨の日はどうなるの?」など、否定的な意見が多く見られる。

そこで今回、港区教育委員会の担当者に取材を行ない、一足制が採用された経緯を聞いてみた。

担当者によると、第一に「子どもの数が増えている」ことが大きく影響しているとのことだった。

港区ホームページの年齢別人口によると、5~14歳の子どもの人口が20年間で約2.2倍に増加している。それに伴い、靴箱をなくし、“昇降口のスペースを確保”することが大きな目的だという。

また、前出の担当者はこのように語った。

「一足制が導入された背景には、港区の地域性が大きく関係しています。港区では1校当たりの土地が狭小で、十分な広さの昇降口を確保しづらいというのが大きな理由の一つです。

下駄箱はかなりの面積を取るため、なくすことで昇降口が広くなって、スペースを有効活用できます。

さらに、港区でグラウンドの人工芝化が進んだことも影響しています。グラウンドを人工芝化したタイミング等で一足制の導入が始まりました。現在では、小学校は19校中18校、中学校は10校中2校が上履きを廃止しています」

しかし、一足制が導入されたことによって心配されるのが「衛生面」だ。前出の担当者はそれについて次のように話した。

「港区は通学路も整備されていて、とてもきれいです。そのため、改めて上履きに履き替える必要性はないと考えています」

賛成派は「上履きを洗わなくて済む」「買い替えがなくていい」

「上履き廃止」になった学校の実態はどうなっているのだろうか? 

一足制が導入されて約1年が経つ港区の公立小学校周辺にて、保護者を対象にアンケートを行なったところ、賛否分かれる結果となった。

まずは、「一足制に賛成派」の保護者の意見から。

小学5年生の娘を持つ30代自営業の女性は「一足制が導入されてから、上履きを買い替える手間がなくなってラク」と話した。

衛生面は気にならないのか?と聞いてみたところ、「地域によっては、昔から上履きを導入していないところもあるみたいだし、あまり気にならないですね」と答えた。

次に小学4年生の息子を持つ30代専業主婦の女性は「子どもは『登下校のときに履き替える手間がなくなってうれしい』と言っています」「私も保護者会とかで学校に行くときに、土足のまま入れてラクになったなぁと思います。学校にスリッパを持参する煩わしさがなくなりました」と話した。

一方で、小学3年生の息子を持つ40代パートの女性は、学校から「上履きが廃止される」と聞いたとき、真っ先に「雨の日はどうするんだろう?」という心配が頭をよぎったと話す。

しかし、今では一足制に「大賛成」とのことだ。なぜ?

「子どもは『雨の日は昇降口のマットで靴底を拭いてから室内に入っているから気にならない』と言っています。長靴で登校してきて学校で替えの靴に履き替える子や、学校のロッカーに“置き靴”をしている子もいて、問題なく過ごせているみたいです」

前出の女性は、「何よりも上履きを洗う手間がなくなって、ストレスが減った」と笑顔で話していた。

賛成派の保護者たちからは、「上履きを洗わなくて済む」「買い替えがなくていい」という意見が特に多く集まった。 

反対派は「教室がすぐに汚れる」「動物の糞でも踏んだら…」

一方で「一足制に反対派」の保護者の意見はどうなのか。

小学4年生の娘を持つ30代自営業の女性は、一足制の実態に眉をひそめた。

「娘は『教室がすぐに汚れちゃうから、上履きがあったほうがよかった』と不満げです。親としても、やはり衛生面が気になりますね。『教室が砂や泥だらけになっていないのか?』『病原菌が持ち込まれるんじゃないか?』と心配になります。教室は昼食をとる場所でもあるので」

小学3年生の息子を持つ40代専業主婦の女性も、この意見に大きくうなずいた。

「息子は『教室や廊下の掃除が大変になった』と言っています。汚れた靴のまま教室にズカズカと入ってくる子もいるみたいで、あまりにひどい場合は、先生がすかさず雑巾で拭かなければならないこともあるそうです。

上履きがあったほうが先生も児童もラクだったんじゃないかなと思います」

また、前出の女性は「上履き廃止」に対する心配点をこう述べた。

「もし、通学時に動物の糞を踏んでしまったとして、その靴のまま教室で過ごすとなると地獄ですよね」

時代の流れとともに教育現場では変化が必要とされている。しかし、今回実態を調査した結果、上履きを廃止することによるデメリットもあることがわかった。今後、東京を中心に一足制の流れは加速していくのだろうか?

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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