都内で“引っ越し難民”が急増「2万円多く払っても部屋がグレードダウン」と家賃高騰に悲鳴…「貧乏人は狭い部屋か古い部屋に住めってか?」
都内で“引っ越し難民”が急増「2万円多く払っても部屋がグレードダウン」と家賃高騰に悲鳴…「貧乏人は狭い部屋か古い部屋に住めってか?」

引っ越し最盛シーズンの3月。賃貸住宅の更新に伴い引っ越しを考える人も多いようだが、いざ探してみると高額な物件だらけ。

引っ越したくてもできない人が都内で増加しているという。

給料が上がっても“いい部屋”には引っ越せない

この3月に、今住んでいる賃貸と3度目の契約更新をしたというのは、30代の会社員男性・中島さん(仮名)。練馬区の同じアパートに住み続けて7年目になる。住み始めた当時は築浅物件だった住まいも、今や築10年以上だ。

2年前の更新時は、更新寸前に引っ越しを考えて間に合わなかったため、今回は1年も前から物件を探し続けていたが、希望の物件が見つからず、更新することになったという。

「現在の家賃は管理費込みで7.5万円。上京して4年、仕事も安定してきて、キレイな家に住みたいと思い、社会人になってから一度目の引っ越しでここにやってきました。駅から少し離れていますが、築浅で30平米というのが魅力で今の住まいを選びました。

それから6年、会社で昇進し、給料は月給にして3.5万円ほど、手取りとしたら2.7万くらいはアップしました。そこで、そろそろワンランク上の、より都心で、通勤しやすい家に引っ越そうと思ったのですが、まったくと言っていいほどに部屋が見つからなかったのです」(30代会社員・中島さん)

中島さんは家賃10.5万円以下で、30平米以上、駅から徒歩10分以内、築年数は15年以下、港区の会社までの通勤時間40分以内で物件を探したが、条件に合う物件はなかった。

「6年前の引っ越し時と比べて、どこも家賃が跳ね上がっていて、2万円プラスしても部屋がグレードダウンしてしまうほどの状況です。数万円ほど収入が増えたところでは、いい家に引っ越せないのだと悟りました。

また、今の部屋は、周辺の家賃相場と比べるとだいぶ安いので、いつ家賃引き上げの通達が来てしまうのかと内心ビクビクしています。

年収は50~60万円ほど増えたのに、QOL(クオリティーオブライフ)を高めることができないのは本当に夢がないというか……」(中島さん)

年収650万から転落 身動きができない状態に

30代男性のフリーランス・前山さん(仮名)は、中島さんとは逆で、この数年で収入が減ってしまった。そこで引っ越しを考えていたのだが、希望の部屋が見つからなくて困っているという。

「8年ほど前に会社を辞めてフリーランスになりました。最初は羽振りもよく、会社員時代よりも年収があがって、30歳手前で年収は650万円になりました。そこで、都内の1LDK、家賃12万円の家に引っ越したのですが……」(前山さん)

その後、新型コロナウイルスの猛威や市場の変化によって、前山さんの現在の年収は450万円に。これにインボイス制度のスタートもあり、手元に残るお金は一気に減ってしまった。

今の収入で家賃12万円を払い続けるのは無理だと思い、引っ越しを考えたのだが、家賃を2万円ほど下げようとすると、家のグレードはガクンと落ち、都心からもだいぶ遠ざかってしまうことから、引っ越しを躊躇しているという。

「引っ越し料金も上がっていて、初期費用を見積もると50万円ほどかかってしまいます。これでは月々2万円を節約しても、元を取るのに約2年もかかります。

どこも家賃があまりにも高いので、試しに私が上京したてのときに住んでいた墨田区のマンションの家賃がどうなっているのか調べてみました。すると12年前、8.7万円だった部屋が、10.5万円で貸し出されていました。

物件の価値って、築年数を重ねるごとに下がっていくと思っていたので、本当に驚きです。都心部での家賃の高騰の現実を目の当たりにしてしまい、引っ越しができずに立ち尽くしています」(前山さん)

結果として、前山さんは無理をしてでも今の部屋に住み続けるという選択しかできなく、どんどん生活が圧迫され続けているという。

わずか1年で家賃相場が3.2万円も上昇

ネット上を見ても、彼らと同じような声がいくつも散見される。

〈来年の2月までに引っ越しをと思っていろいろ見ているけど、家賃相場も上がっていてこれじゃあ引越しできないなぁ…… 我が家を快適にする方がよさそう〉

〈今の経済状況と家賃高騰でもう二度と今より上のランクには引越せへんかもな〉

〈家賃が高騰しすぎて引っ越ししたくてもできません。高級マンション建てすぎじゃね?みんながお金持ちじゃないんよ? 貧乏人は狭い部屋か古い部屋に住めってか? それでも家賃が上がりすぎて無理なんよ〉

株式会社LIFULL(ライフル)が運営する情報サイト「LIFULL HOME'S PRESS(ライフルホームズプレス)」のマーケットレポートによれば、ここ数年、首都圏での平均賃料は上昇傾向にある。

特に、昨年の引越しシーズンである2024年1~3月期のレポートを見ると、東京23区のファミリー向き賃貸物件の掲載平均賃料は、わずか1年間で3.2万円上昇。2023年3月が17万9651円だったのが、2024円3月では21万1618円になっている。

シングル向き物件も9万3744円から10万1232円に上昇。初めての10万円超えを記録した。

2025年のレポートはまだ発表されていないが、近頃の物価高を見るとさらに上がっているのは確実。ますます引っ越しができない状態に陥ってしまうだろう。

物価や光熱費の高騰もあって毎月の支出は増えてばかり。引っ越しができずに身動きがとれないまま、ひたすらに貯金を減らしてしまう人が増え続けている。数年後、事態はより深刻化していそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部

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