2年目の阿部巨人に課せられた”もうひとつのミッション”…松井秀喜、坂本勇人に次ぐ生え抜きスターをいかに育てるか? その候補は?
2年目の阿部巨人に課せられた”もうひとつのミッション”…松井秀喜、坂本勇人に次ぐ生え抜きスターをいかに育てるか? その候補は?

3月28日に開幕するプロ野球。セリーグ連覇を目指す巨人だが、ロサンゼルス・ドジャースやシカゴ・カブスとのプレシーズンゲームでは2試合で計3得点と連敗を喫した。

今年も“守り抜く野球”を標榜するも、打力不足は大きな課題だ。2年目を迎える阿部慎之助監督が目指す野球とは。連覇に向けた条件などを徹底解剖する。

チーム防御率が大幅改善した理由

昨シーズンは、前任である原辰徳政権からの大きな課題だったリリーフ陣を整備。ケラー、バルドナード、大勢という「勝利の方程式」で3連投を避ける方針もハマり、チーム防御率が2023年の3.39から2.49へと大幅に改善した。

リリーフ防御率で見ると、2022年の3.78、2023年の3.81から昨年は2.27。1.5以上も良化したこのリリーフ防御率は12球団トップで、4年ぶりのリーグ優勝の大きな要因だったことは間違いない。

阿部監督は昨シーズン前からリリーフについて「7、8、9回にそれぞれ2枚ずつ用意して日替わりで起用したり、そういうことができれば1年間乗り切れる」とコメント。

その言葉どおり2020年後半から2023年にかけて目立っていた行き当たりばったりの継投策はほとんどなくなり、リリーフ陣のパフォーマンスが一気に向上したのだ。これは捕手出身監督ならではのマネジメント術だろう。

さらに捕手陣の運用もポイントだった。

シーズン中盤から大城卓三、小林誠司、岸田行倫の3捕手体制を確立。大城が96試合のうち、打力を活かすために一塁手としても出場したり、岸田はキャリアハイとなる79試合でマスクを被ったりと柔軟な采配で捕手の負担を軽減した。



この3捕手の併用は2019年に原前監督が見せた小林、大城、炭谷銀仁朗をうまく使い分けた捕手マネジメントを彷彿とさせており、投手と捕手のパフォーマンスを最大化させたことで、“守り抜く野球”を実現したシーズンだった。

阿部巨人と原巨人の比較の違い

監督として巨人歴代最多の通算1291勝という記録を持っている原前監督は、2002年の就任1年目から発想力とアグレッシブなマネジメントを発揮していた。

具体的には、長嶋茂雄監督時代に左投手相手になかなか出番のなかった清水隆行を1番で固定し、先発として伸び悩む河原純一をリリーフに配置転換。すると清水は最多安打を獲得し、河原は5勝2敗28セーブ防御率2.70というキャリアハイの成績を残した。

さらに阿部を正捕手に据えるなどの大胆な起用にファンはワクワクしたものだ。

一方で、阿部監督の1年目はいい意味で新人監督らしさがなかった。

前述の投手と捕手の運用以外にも、岡本和真、吉川尚輝、門脇誠、坂本勇人という内野陣は12球団トップクラスのディフェンス力を誇った。この起用で投高打低の傾向を活かして老練な試合運びを展開したのだ。

かと思えば、比較的狭い球場では両翼を打力重視の選手で臨んだり、岡本や大城などを本職以外のポジションを守らせるといった柔軟な采配も見せた。このあたりもある種、“新人離れ”していたのではないか。

今後の課題と展望

あとはファンとして望むのは、長嶋氏における松井秀喜、原氏における坂本勇人といったスター選手を育て上げてほしいところ。現状、秋広優人や浅野翔吾などの選手に出場機会を多く与えているが、今後は独り立ちさせ、球界トップクラスの選手にまで育てられるか。

阿部自身が右投げ左打ちで球界史上屈指の名選手となっているだけに、同じタイプの大城や秋広に非常に厳しく指導しており、彼らがこれを乗り越えられるかが注目だ。

チームとしては、昨年日本シリーズ進出を逃している。

クライマックスシリーズはナイトゲームにもかかわらず、昼間に全体練習をするなど、短期決戦に向けての調整、つまり選手のコンディションのピークの持っていき方に筆者は疑問を感じた。

この影響か、選手の動きがよくないままシリーズが進んでしまい、敗退の憂き目にあったと言えよう。

短期決戦に関しては、近年に日本一に輝いた監督のマネジメント術を参考にすべきであるが、ディフェンス重視のチームがポストシーズンを制して日本一を制すのは、落合博満が指揮した中日や2014年の巨人を見ると難易度が高い。

ディフェンス力を保ったまま一定以上の打力があったチームといえば、1991年の西武や2017年ソフトバンクが挙げられるが、果たして……。2025年シーズンは阿部巨人の真価が問われる。

取材・文/ゴジキ

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