〈大阪・関西万博〉「展示物が地元の科学館と大差ない」「チケット高すぎ」「楽しみは木のリングに登ること」「70年万博の熱量はない」開幕まで10日、関西人の本音は?
〈大阪・関西万博〉「展示物が地元の科学館と大差ない」「チケット高すぎ」「楽しみは木のリングに登ること」「70年万博の熱量はない」開幕まで10日、関西人の本音は?

4月13日に開幕を迎える大阪・関西万博。膨れ上がった建設費用に会場の安全性、チケットの売れ残りなど、雲行きが怪しくもある万博だが、「始まってしまえば盛り上がるはず」との楽観論も。

はたして、現地の人々はどう思っているのか。実際に大阪の街を練り歩き、関西人の本音を聞いて回った。

受難続きの大阪・関西万博

開幕まで残り10日となった大阪・関西万博。

現地・大阪に降り立ってみると、駅構内にポスターや吊り広告、コンビニにはグッズ売り場も展開され、街中の至るところに万博公式キャラクター「ミャクミャク」の姿が見受けられたが、盛り上がりはどうもいまひとつのようだ。

大阪府と大阪市が4年前から毎年行なっている万博来場意向に関するアンケート調査によると、「万博に行こうと思っている」人の割合は、2021年は51.9%だったが、翌22年には41.2%に下がり、昨年12月の最新調査では34.9%にまで落ち込んだ。

万博協会は会期中2820万人の来場を見込み、開幕前の前売り券を1400万枚販売することを目標に据えたが、実際に売れたのは3月5日時点で約800万枚(3月17日の記者会見では1021万枚と発表)にとどまっている。

さらに、当初の予算案より膨れ上がった建設費用や、メタンガス爆発事故、大屋根リングの護岸の浸食被害など会場の安全性を懸念する声は絶えない。さらには万博PRアンバサダーのダウンタウンが活動休止中のため辞退を申し出るなど、不穏な空気が渦巻いている大阪・関西万博。

実際にこの状況を現地の関西人はどう思っているのだろうか。大阪の街を練り歩き、本音を聞いて回った。

「展示物が地元の科学館レベル」「チケットもラーメンも高すぎ」

大阪最大の繁華街として知られるミナミの心斎橋。御堂筋沿いには大阪・関西万博の広告がずらりと並んでいた。そこで買い物をする30代夫婦に話を聞いてみた。

「万博が大阪に来るって決まったときはめちゃくちゃうれしかったし、楽しみにしてたんですよ。

岡本太郎も好きやし、太陽の塔の中に入ったこともあんねんけど、生命の樹からは強いメッセージ性も感じられた。多少金かけても万博ってやる意味があるな~って思ってたんです」(大阪府在住の30代女性)

だが、開催が決定したときと、開幕まで1カ月を切った今とでは、熱量もだいぶ下がってしまったという。

「今回はメッセージ性もちゃっちいし、うっすいし、展示物も水素とか太陽光とか、地元の科学館に行けばありそうなもんばっかやん。一応どんなもんに仕上がったんか視察程度には見に行きますけど、期待はしてません」

今月に入り、万博協会は公式ガイドブックの発売を開始したものの、海外パビリオンなどいまだ建設途中のものも多く、街中でも「何を展示してあるのかイマイチ分からない」との声が相次いだ。

妻の横で「うんうん」と静かにうなずく夫にも話を振ってみると、

「展示物もよく分からないうえに、そもそもチケットが高すぎますよね…。それに会場内のラーメン1杯2000円ってやばないですか?(笑) 1970年大阪万博のときの『アポロ11号の着陸船』や『月の石』が飾ってあるなら見に行きたいですけど、今回の万博はチケット無料でも行くか迷うレベルです」(大阪府在住の30代男性)

と妻同様に熱量は低めだった。

万博チケットの売れ行きが低迷していることを受け、大阪府の吉村洋文知事らは2月5日、石破茂首相のもとを訪れ、当日券の導入を緊急要望。念願叶い、2月25日には協会が当日券の販売を発表したが、万博の入場料としては最高水準の7500円という高値に、現地では

「ディズニーやユニバに行ったほうがマシ」

との声も聞かれた。

万博の楽しみは「木のリングに登ること」

そんななか、約700万枚の前売り券を購入し、社員に配る作戦に出たのが万博の協賛企業だ。実際に、協賛企業で働く大阪府在住の男性(63)にも話を聞いた。

「1970年大阪万博は小学生のときに行ったんですが、暑いなかソ連館やアメリカ館に暑い中ごっつい並んで、すごいインパクトがあったんですよ。ただ当時の熱量を知ってる身からすると、今回は全然盛り上がってないですね」

それでも協賛である勤め先の会社から社員1人当たり4枚のチケットが配布されたことで、万博には行く予定だという。

「空飛ぶタクシー以外、何が展示されてるのか、ようわからないですけど。孫でも連れて木のリングの上、登ってみようかな~程度ですね」

翌日、記者も木のリングを近くで見るため、本町駅から中央線に乗って今年1月に開業した万博最寄りの夢洲駅へ。現地に着くと、会場付近にはツーリング姿の地元住民や外国人観光客の姿がちらほら。会場内は関係者以外立ち入り禁止だったが、遠目から木のリングも見え、フェンス越しにスマホや一眼レフカメラで写真撮影する人々の姿もあった。

フェンス越しに、会場へ熱い視線を送る50代の女性に話しかけてみたところ、

「木のリングの上に登って一周してみたいですよね~。どんな形になろうとせっかく日本で開幕するから行ってみたいです」

とウキウキの様子だった。住まいは横浜だが、親族が関西におり、今回出張ついでに夢洲駅に立ち寄ったという。ただ期待を寄せる一方、こんな不満も口にした。

「事前予約の手続きが煩雑すぎて途中で挫折しました。個人情報をなんであんな大量に記入しなきゃいけないんですか? 途中で手続き止まってるんで、熱量の冷めないうちに再開しようとは思いますけど…」

また仕事の都合で万博内の視察に訪れた神戸市在住の公務員の男性(59歳)にも話を聞いてみたところ、

「今年2月半ばにも仕事の都合で万博会場に視察に行ったんですが、まだ工事中やったわ」

と苦笑い。それでも万博には大きな期待を寄せる。

「会場内には異国のパビリオンがずらーっと並んでて、巨大なガンダムも飾ってあったし、はよ行ってみたいなって気持ちが高まってきてますね。

愛知万博のときも開始前は批判されてたけど、ゴールデンウィークや夏休みに入ると評判が広がって、一気に盛り上がった印象だったし、今回も始まったらどんどん盛り上がるんちゃうか? 地域の活性化にもつながるだろうし、とても期待してます」

開幕まで残り10日…開幕と同時に不穏な空気を吹き飛ばすぐらいの盛り上がりを見せてくれるかどうか、期待したい。

取材・文・撮影/集英社オンライン編集部

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