
“ライバー”がリアルタイムで配信し、視聴者が“ギフト”と呼ばれる投げ銭を送る生配信サービス「TikTok LIVE」。その世界で人気のライバー・夢幻氏はわずか5分間で約2億4,000万円を稼いだことがあるという。
昨年の所得は約8億2000万円。それでも家賃8万5000円の物件で暮らす理由
――ライバーになったことで、私生活に変化などはありましたか?
夢幻(以下、同) 収入面は大きく変化しましたね。昨年でいうと、所得は8億2000万円ぐらいでした。
逆に、それ以外はほとんど変わっていません。自宅も変えず、今でも徳島にある家賃85000円の物件に娘と住んでいます。やっぱり生活水準って、一度上げてしまうと下げるのがすごく大変ですよね。配信業には流行り廃りがありますし……。
それに、娘もいますし、豪勢な生活をするのは教育上よくないんじゃないかなとも思っています。港区に住みたい、みたいな気持ちもまったくなくて、このまま田舎暮らしがいいです(笑)。
――夢幻さんは、普段どのような配信をしているのでしょうか?
僕は基本的に「雑談配信」がメインですね。“NGなし”というか、生活のすべてをさらけ出すようなスタイルです。
過去の借金の話もしますし、家族の話もします。今では母も娘も僕の配信を見ていて、配信中に娘から「おこづかいくれ」ってコメントが来ることもあります(笑)。
以前、コメント欄で母と娘が喧嘩して、それをファンが見ているという謎の出来事もありました(笑)。
ほかにも、飼っている犬をテーマに話したり、料理をしながらトークしたりと、配信内容に変化をつけることも意識しています。
5分間で2億4000万円を稼ぐ。秘訣は“パワーギフター”の存在
――なぜ夢幻さんは、TikTok LIVEとしてそこまで稼げるのでしょうか?
僕がライバーとして稼げるようになった理由のひとつが、“パワーギフター”の存在ですね。
これは、大きな金額を投げてくれる投資家や経営者の方のことで、そういった方々が僕の配信に来て、応援してくれるようになったんです。中には、ひとりで1億円を投げてくれた方もいました。
高額のギフトを投げることで、その人自身の知名度が上がるという側面もあります。宣伝というか、自分の知名度を上げるために投げている方も多いと思います。
僕がよく言っているのは、「女の子の配信に投げるより、夢幻の配信に投げたほうがいい」ってこと。TikTok LIVE内では、より有名な配信者に投げたほうが、自分の名前も広まりやすいんですよ。
あと、僕は世界記録も持っていて、5分間で飛んだギフトスコアが世界最高の3億2,600万スコア。現金換算で、だいたい2億4,000万円くらいです。これは、配信中に「歴史的記録を作ろう」と呼びかけて、みんなと一緒に達成しました。
色々話しましたが、実際は“ひとりの人がドカンと投げてくれる”よりも、“たくさんの人が平均的に投げてくれる”ことのほうが圧倒的に多いです。
――娘さんには、収入の話はしていますか?
お金の話は一切していません。でも、金額まではわからなくても、「稼ぎが多いのかも」というのはバレていますね(笑)。
とはいえ、僕自身が贅沢をしないですし、娘にも贅沢をさせているつもりはありません。「お父さんはいつまで稼げるかわからんで」と、ずっと言い続けていますし、娘はいまもファミレスでバイトしています(笑)。
――お仕事に関しては知っているんですよね。
仕事についてはもちろん知っていて、先ほども話したように配信を見てくれたり、たまに声が入ったりもします。
娘が中学生になってからは、田舎ということもあってか、「○○のお父さんって~~」みたいに言われることもあるようです。
もしかしたら生きづらさを感じさせてしまっているのかもしれませんが、娘はすごく理解してくれていて、それが理由で喧嘩になることもありません。本当にありがたい存在です。
――今の1日のルーティーンはどのような感じですか?
お昼くらいに起きて、まずは愛犬に餌をやります。昼に配信する日はそのまま配信して、夜もまた配信する、という感じですね。あとは、経営している化粧品会社や犬のグッズ会社の仕事もこなしています。
――ライバー以外の仕事もされている夢幻さんから見て、配信業界は今後どうなっていくと思いますか?
僕は正直、まだまだ伸びていくと思いますね。最近「業界が広がったな」と実感したのが、「日間ランキングトップ100」という1日の投げ銭ランキングを決めるシステムを見たときでした。
僕が始めた頃は、100位に入るのに必要なコイン数は7万コイン程度だったんです。でも今では、100位に入るには30万コインが必要になっている。およそ4倍の投げ銭が必要になっていることに、素直に驚きました。
最近ではタレントのデヴィ夫人も参入されるなど、新しいライバーがどんどん増えています。知名度のある方が入ってくることで、業界全体の認知度もさらに広がっていくはずです。僕としても、もっともっとこの業界の発展に貢献していきたいですね。
ライバー殺害事件の影響は?
――最近、ライバーが殺害された事件が起きました。あの事件に関して、率直にどう思いますか?
被害者と加害者の間で金銭トラブルがあった、という報道を見ました。もちろん、加害者が悪いのは当然ですが、ひとつ思うのは、プライベートでの金銭トラブルとなると、それはもう配信の域を超えてしまっていたのではないかということです。
投げ銭は、あくまで配信というパフォーマンスに対する応援であるべきで、今回のように金銭の貸し借りなどが絡んでくると、配信者と視聴者という関係性から逸脱してしまっていたのではないかと感じています。
ホストクラブやキャバクラなどでも、店内での関係を越えてしまい、トラブルに発展するケースがありますよね。今回の件も、それに近いものを感じていて、「配信者だから」というよりは、配信者と視聴者という枠を超えてしまった結果、起きてしまったのではないかと思います。
配信という場も、使い方を一歩間違えれば、思わぬトラブルに巻き込まれるリスクがある。利用するにも十分に気をつけなければいけないと感じる出来事でした。
――ライバー刺殺事件で、ご自身や周囲で変化はありましたか?
それは特にないですね。
でも、ルールやモラルを守れば安全に楽しめるということは、しっかり伝えていきたいです。
――夢幻さんのファンのなかにも、課金や投げ銭で無理をしてしまう方がいるかもしれません。それについてはどう考えていますか?
無理をして投げ銭するのは、絶対にやめたほうがいいです。それは視聴者にとっても、配信者にとっても同じことです。
目先のギフトが欲しくて、視聴者を煽るような配信者もいるかもしれません。でも、もしそれでパンクしてしまったら、大切な視聴者がひとりいなくなってしまう。
そんなくだらないことをするより、“遊び”の範囲で楽しんでもらいながら応援してもらうほうが、長く視聴者でいてもらえる。それが結果的に視聴者やギフトの増加にもつながるんです。
目先のものに囚われず、視聴者に楽しさを感じてもらえる配信をする。それが巡り巡って、自分の結果として返ってくると僕は思っています。
――無理をさせないように、呼びかけなどはしていますか?
普段からかなり意識して呼びかけるようにしています。
配信をしていると、「この人、少し無理しているのでは?」と感じることがあるんですよ。そう思ったら、すぐに名指しで「◯◯さん、無理しないでな? 最悪バトル負けてもいいからな」と声をかけるようにしています。
やっぱり、一度無理をしてしまったことで、その視聴者が離れてしまうのは本当に嫌なんです。投げ銭に限らず、ゲームの課金なども“遊び”の範疇にとどめておくことが、とても大事だと思っています。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班