
4月13日に開幕を迎える大阪・関西万博。会場となる大阪市の「夢洲」は四方を海に囲まれた人工島であり、アクセスルートが限定されることが最大の懸案となっている。
そこで注目されるのが会場に最も近い舞洲の駐車場からのシャトルバスだ。当初、「ピーク時の午前8時から9時に80便運行する」という計画に対し、「“45秒に1本のシャトルバス”輸送なんて可能なのか?」という疑問で話題となった。開幕2週間を切り、改めて現状の交通計画の課題について専門家に話を聞いた。
ロンブー淳〈そんな運行が本当に可能なのか?〉
4月13日にいよいよ開幕を迎える「大阪・関西万博」。
会場となるのは大阪市の人工島「夢洲」であり、四方を海に囲まれた万博史上初の「海の上の万博」開演に期待も高まる。
その一方で、懸念されているのが会場までのアクセスルートの確保だ。
日本国際博覧会協会は会期中(4月13日~10月13日)、国内外から延べ2820万人、ピーク時では1日22万人超となる来場者数を想定している。
そんな中、交通の要となるのが今年1月に開業した夢洲駅をつなぐ大阪メトロ中央線だ。協会は「来場客の6割が地下鉄」での輸送を見込んでおり、大阪メトロは会期中の混雑時には増便し、2分半間隔で運行して対応するという。
一方、残りの4割はバス利用がメインとなる。新大阪駅や大阪駅といった主要駅から会場直通のシャトルバス(事前予約制)を運行するほか、自家用車の場合は、近くの専用駐車場でバスに乗り換える「パークアンドライド」で会場まで輸送するという。
しかし、専用駐車場は舞洲、尼崎、堺の3拠点のみで、会場に最も近く大規模な舞洲に来場客が集中する可能性が高い。
これに対し、お笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号の田村淳氏が自身のX上で、
〈僕が大阪万博で1番見たいものは、空飛ぶ車でも大きな木のリングでもなく、45秒に1本運行するシャトルバスが見たい。そんな運行が本当に可能なのか?楽しみが増えました!〉
と投稿。SNS上では、
〈山手線よりはるかに過密ですよね??〉
〈高齢者が2人乗車するだけで無理〉
などさまざまな声があがった。
「15秒に1本でも足りない」可能性も…
複数の乗り場や降車場があるとはいえ、45秒に1本のバス運行をさばくことは現実的に可能なのか。大阪産業大学工学部の波床正敏教授(地域・交通計画)に話を聞いてみた。
「45秒に1本の運行間隔はたいしたことないです。東京や大阪など地下鉄が発達しているエリアではあまり見受けられませんが、人の往来が多い地方都市のメインストリートの朝だと、地下鉄が発達していない分、1日で往復3500本以上、45秒以下の間隔でバス運行しているところもあります」(波床教授、以下同)
45秒に1本間隔は現実的に可能であるというが、バス運転手の数は足りているのか。
「関西圏のバス会社は、他の運行や貸し切りバスの予約を断って万博のバス運行に協力するそうです。実際、貸し切りバスの予約を受けたほうが儲かりはするけど、長年の付き合いもあるので協力せざるを得ないのでしょう」
協会はその後、運行計画を見直し、4月1日時点で、舞洲から夢洲までのシャトルバスをピーク時(午前8時から午前9時)の1時間で最大60便、発着場所5カ所で3ルートに分けて運行することに決めた。
だが実際、開幕前のチケット売上不調など下火予測の現況よりも予想以上に盛り上がった場合、「現状の輸送計画の中でも懸念する点がある」と波床教授は話す。
「地下鉄以外で行く場合、最終的にシャトルバスに乗らなくては会場に行けません。船利用者にも限りがあるでしょう。
しかし、予想以上に盛り上がった場合、自家用車で近くの専用駐車場まで行ってバスで会場入りしようと思う客が増えると、観光バスなども含めた総合的な輸送力が15秒に1本のペースでも間に合わなくなる可能性があります」
最終的には地下鉄での輸送が可能なため、交通混雑を避けるためには「地下鉄へのすみやかな誘導が必要になる」と波床教授は指摘する。果たして開幕後どれほど盛り上がるのか…期待と不安が広がる。
会期中、激混みする路線と駅は?
だが、懸念はシャトルバス運行だけではなく、朝の地下鉄事情にまで広がる可能性があると波床教授は言う。
「万博が開場する午前9時を目指して都心から地下鉄に乗って移動するとなると、朝のラッシュ時の8時台では、通勤客と万博客がバッティングしてかなり混乱すると思っています」
夢洲駅につながる大阪メトロ中央線は、会期中の朝のラッシュ時、定員に対する乗客数の割合を示す混雑率が通常の倍となる140%にのぼると想定している。これを受け、大阪府や市は、企業側に会期中の時差出勤やテレワークを呼び掛けているが、どこまで交通分散されるかは疑問だ。
「万博会場に通じる中央線は近鉄けいはんな線直通で奈良から大阪まで東西に走っており、沿線上に大きなターミナル駅がほとんどないんです。だから基本的に南北を走る御堂筋線や大阪環状線から乗り換えて乗車してくるとなると、弁天町駅(環状線)と本町駅(御堂筋線)が激混みするでしょう。
しかも環状線の弁天町駅の場合は、いったん改札の外へ出てからの乗り換えですが、本町駅の場合、改札内での乗り換えとなるので、御堂筋線のホーム上に乗り換え客が溢れかえる危険性があります」
これを受け、協会は「来場者が20万人を超える日において平日朝ピーク時に大変混雑すると予測しています。万博期間中の円滑な万博来場者輸送と都市活動の両立を目指すため、一般交通の抑制や分散、平準化の取り組みを実施してまいります。皆様もご協力お願いいたします」とコメントしている。
“海の万博”会場だけあってアクセス面に不安は残るが、会場への行き帰りも含めて、万博というイベントの熱狂と興奮を肌で感じるためにも、会場外の交通整備は不可欠となるだろう。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部