〈子どもの自殺過去最多〉SNSで孤立感を深めるケースも…自殺未遂、うつ病も増加傾向のなか、求められる支援と見逃せないSOSのサインとは
〈子どもの自殺過去最多〉SNSで孤立感を深めるケースも…自殺未遂、うつ病も増加傾向のなか、求められる支援と見逃せないSOSのサインとは

昨年(2024年)の1年間で全国的な自殺者数は減少した一方、小中高生の自殺者は529人と過去最多となった。自殺の動機は「学校問題」が最も多く、自殺者の多くは過去に自殺未遂をした経験があるという。

子どもが自ら命を絶つという選択をしてしまう前に、周囲の大人たちができることは何なのか。専門家に話を聞いた。 

衝動的なケースも 

子どもの自殺者数が過去最多となった。
厚労省によると、昨年(2024年)1年間で、全国の自殺者数は2万320人(男性1万3801人、女性6519人)と前年から1517人減少し、1978年の統計開始以降、2番目に少ない人数となった。

その一方で、小中高生は529人と前年から16人増加し、統計を始めた1980年以降、最も多い数字となった。内訳は小学生が15人、中学生が163人、高校生が351人だった。

小中高生の自殺の動機として最も多かったのが、「学校問題」。次いで「健康問題」「家庭問題」という結果となった。

子どもが自ら命を絶つ選択をしてしまう背景について、精神保健福祉士の石井綾華氏に話を聞いた。

「大人にとっては気にも留めないささやかな内容でも、子どもからすると非常につらい物事に捉えていることが多くあります。特に自殺を選択する子どもの多くは、『こんなこと相談したら迷惑かな』と一人で抱え込んでしまう傾向があり、大人に知られないように悩みを隠しながら深刻な精神状態に陥ってしまうのが特徴です。特に家庭や学校での居場所が感じられないと、なおさらその傾向は強まります」(石井氏、以下同)

さらに、子どもの自殺は必ずしも長期的な悩みの末に起こるとは限らず、衝動的なケースも多いと石井氏は指摘する。その影響の一つがSNSだ。



「最近では、学校内のいじめだけでなく、SNS上での誹謗中傷や無視といった『ネットいじめ』が増えています。またSNS上で友達の“楽しそうな投稿”を見ることで、『自分だけが上手くいってない』と孤独を感じやすかったりなど、こうした希死念慮を煽る情報に触れて衝動的に行動に走る危険性もあります」

一方、SNSは孤独感を和らげ悩みを共有する相談窓口としての役割も担っており、「上手く活用していくことが大切です」と石井氏は言う。

うつ症状や不安障害の子どもが増加 

自殺の動機として「学校問題」に次ぐ「健康問題」についても聞いた。

「最近は小中学生の間でもうつ症状や不安障害を発症しているケースが多く見受けられます。心身の不調により、長期的に学校を休むことになったり、部活動を続けられなくなったりして、『自分はもうダメだ』と自責の念に囚われやすくなります」

また「家庭問題」についても悩んでいる子どもは多く、親の離婚や家庭内不和、経済的困難などが理由として多く挙げられたという。

「家庭問題は学校でも相談しにくいと感じる子も多いです。学校でも家庭でもなく安心して話せる『第三の居場所』を増やすことが大切だと思います」

さらに、こども家庭庁によると、「自殺した子どもの多くが過去に自殺未遂の経験がある」(『令和6年版自殺対策白書』)というが、そのような子どもに対してはどのような支援が求められるのか。

「自殺未遂経験のある子どもは再度危機に陥る可能性が高く、早期の介入が鍵となります。周囲の大人が『話せることがあったら教えてね』と声をかけるだけでも助けを求めるきっかけになります。

また『今日はご飯が食べられたね』など小さな成功を一緒に喜び、安心を増やしていくことも大切になってきます。必要に応じて医療機関や専門の相談窓口につなぎながら、学校や地域の支援体制の強化が求められます」

異変に気付くためのサイン

 子どもが追い詰められ、自ら命を絶つ選択をしてしまう前に、その異変に気付くサインはあると石井氏は話す。

行動面では、

・突然、学校に行きたがらなくなる
・身の回りの整理を始める(大切なものを人にあげる)
・SNSで「消えたい」「もう疲れた」などの投稿をする

感情面では、

・急に元気がなくなる、または逆にハイテンションになる
・以前楽しんでいたことに興味を示さなくなる


などの言動が見受けられた際には、注意が必要だという。

「こうしたサインを見つけたときは、『最近どう?』と声をかけることが大切です。

特別な言葉をかける必要はなく、『あなたのことを気にかけているよ』と伝えるだけで、救われる子どもはたくさんいます。

すべての悩みを解決できなくても『話を聞くよ』と寄り添うだけで、子どもは『一人じゃない』と感じることができます。周囲の大人の小さな一歩が、子どもたちの未来を守ることにつながります」

子どもたちにとって生活環境が大きく変わる年度初めの4月。小さな命を守るために一人一人ができることを考えていきたい。

〇いのちの電話 ℡0570・783・556(午前10時~午後10時)、℡0120・783・556(午後4~9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

〇こころの健康相談統一ダイヤル ℡0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

取材・文/集英社オンライン編集部  

編集部おすすめ