世界を巻き込んだ藤原ヒロシ×ポケモン「サンダーボルト プロジェクト」メゾンからホテル、アイスキャンデーまで。今だから明かせる奇跡のコラボの舞台裏
世界を巻き込んだ藤原ヒロシ×ポケモン「サンダーボルト プロジェクト」メゾンからホテル、アイスキャンデーまで。今だから明かせる奇跡のコラボの舞台裏

ポケモンGO(ナイアンテック)、任天堂、モンクレール、伊勢丹、ドーバーストリートマーケット、バカラ、フェンディ、アイスキャンデーの「北極」から「sequence MIYASHITA PARK」という都市型ホテルまで……国内外の多くのブランド、業態とコラボレーションし話題を呼んできた藤原ヒロシ×ポケモンの「サンダーボルト プロジェクト」。

 

書籍『FRAGMENT UNIVERSITY 藤原ヒロシの特殊講義 非言語マーケティング』より一部を抜粋・再構成し、そのコラボレーションが生まれた背景に迫る。

/**/本記事は2023年12月に行われた講義をまとめたものです。

藤原ヒロシ(以下藤原) デザイン集団「フラグメント fragment design」主宰。世界中の企業とのコラボレーションを手がけている
皆川壮一郎(以下皆川) クリエイティブディレクター。株式会社みんな代表(2023年時点では博報堂ケトル所属)
鹿瀬島英介(以下鹿瀬島) 株式会社ポケモン執行役員

快進撃は止まらず

皆川 「流れ」と「タイミング」という話はこの後もたびたび出てくるんですけど、「ポケモンGO」と取り組めたのもすごいですよね。

鹿瀬島 あれは本当によくできたなと思います。ヒロシさんから「ポケモンGO」で何かできないの? と言われて、ダメ元でナイアンティックという開発をしている会社にコンタクトをとったら、わりと短いリードタイムで実装してもらえました。

皆川 簡単だったんですか。

鹿瀬島 いやいや、簡単じゃなかったと思います。あんまり記憶がないですけど、何とかやってもらったという感じですかね。

皆川 これは世界で実装されたんですか。

鹿瀬島 はい。ちょうどハイプフェスト(※1)の日に合わせて、世界中で出ました。

皆川 最初の企画書から1年足らずでここまでいったというのは、にわかには信じ難いんですけど、さらに勢いは止まらずに…。

鹿瀬島 そうですね。ニューヨークが終わった後は日本での展開ですね。

アマゾンファッションウィークで

藤原 アマゾンに関してはポケモン社のほうからやりましょう、という感じでしたね。

鹿瀬島 ここから先は全部、ディスカッションしながら決まっていくことが多かったです。

皆川 新しいことをやるけど、無理してやらないと決めていた、とおっしゃってましたよね。

鹿瀬島 そうですね。やることありきにするとよくないかなと。これはヒロシさんにも共通するところじゃないかなと思います。

皆川 これもまたタイミングなのかもしれないんですけど、モンクレールとのコラボはどういう展開だったんですか?

藤原 モンクレールの仕事は常に何か新しいアイデアを、と言われていて、ポケモンを描いたらどうと言ったら、ぜひやりたいということになって。

皆川 ぜひやりたい、となるのがすごいですけどね。その次はドーバーストリートマーケット※2、さらに伊勢丹新宿店とのコラボがあって、このあたりから徐々にウェア以外のコラボが始まるんですね。

鹿瀬島 Nintendo Switchのフラグメント、サンダーボルトバージョンですね。

藤原 任天堂って結構ハードルが高いんです。

鹿瀬島 本当に、そこはダメ元で。でも、すぐOKしてくれました。

皆川 バカラとのコラボはいくらでしたっけ。

藤原 308万円ですよね。

鹿瀬島 308万円ですね。

皆川 そして突然の「北極」のアイスキャンデー。これはどういった経緯で?

鹿瀬島 これはポッチャマというポケモンなんですけど、このポケモンがこの年は主役級の活躍をするということで。

藤原 ポッチャマ推しで何かやりたいということになって、ペンギンだからアイスでいけるんじゃない、みたいな感じになりました。

皆川 これは僕は知らなかった。北極のアイスって有名なんですか?

藤原 関西では有名です。

皆川 国内とグローバルの振り幅もすごいし、ハイ&ローもすごい。そして2020年には「sequence MIYASHITA PARK」というホテルとコラボレーションしました。

これはどういう経緯で?

鹿瀬島 ずっと物販をやり続けてきたので、それ以外のこともやりたいよね、と。

藤原 物をつくって、ポップアップストアをやって、その次に何ができるのかというので、僕がホテルのワンフロアを使ってポップアップする案を出して、ホテルを探してきたんです。

鹿瀬島 ゲームの世界観の再現性とかアメニティにすごくこだわったので、相当大変でした。

皆川 16階をすべてポケモンの部屋にしたんでしたっけ。

鹿瀬島 部屋と、あと共用部も。

藤原 そうです。だから、エレベーターを降りるとグリーンの人工芝が敷いてあって、壁紙も全部貼ったんですね。

皆川 すさまじい人気だったと聞いたんですけど、宿泊者だけが手に入れられるアイテムがあったんですよね。

鹿瀬島 宿泊フロアにお店がありまして。

藤原 キオスクです。「ふしぎなアメ」とか、実際にゲームの中で出てくるものをつくったほうが面白いんじゃないかと思って。

鹿瀬島 「おいしいみず」もそうですね。

「塗りつぶしたらいいじゃん」

皆川 ヒロシさんはもうポケモンに関しては詳しいんですか。

藤原 全然詳しくない。でも「ポケモンGO」は結構やったので、そのあたりは。

皆川 素人のスタンスを貫き通しているところもさすがだなと思うんですが、ごく最近(講義は2023年の12月に実施)だとフェンディ※3とのコラボが発表されましたね。

鹿瀬島 そうですね。数日前に情報が初めて出ました。これはフェンディから誘われてやることが決まったんですけど、辰年、「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」なので、ドラゴンタイプのポケモンを使えないかというところから始まって。

皆川 すごい反響ですね、これも今。

鹿瀬島 すごいですね。まだ発売はしていないですけど。

皆川 さまざまなコラボ事例を一気に紹介してきましたが、逆に担当者だったら震え上がるような事件、「塗りつぶしたらいいじゃん」事件というのがあったと聞きました。

鹿瀬島 そうですね。いちばん最初のNYのハイプフェストのときにつくったアイテムなんですけど、袖のところのサンダーボルトのロゴの一部、〝FRAGMENT〞の文字が白く塗りつぶされているんです。

これ、実は商標の問題でこうせざるを得なかったという裏事情がありました。

皆川 でも商品はつくっちゃってたんですよね。

鹿瀬島 はい。ニューヨークでいきなり発表するということになったわけですが、リーガル的なチェックにすごく時間がかかるので、並行して商品制作を進めていたんです。で、ほとんどつくり終わった頃にリーガルの部署から「これは危ない」と言われて。「えっ、もうつくってるんだけど…」っていうシチュエーションになりました。

皆川 廃棄の危機だったということですか?

鹿瀬島 そうです。ヒロシさんには失礼すぎるんですけど、でもこのタイミングでちゃんと正直に伝えなきゃということでお伝えしたら、即答で「塗りつぶせばいいじゃん。ブートっぽくて面白いし」という言葉が返ってきたんですよ。

「あっ、そういうことがありなんだ」ということで、すでに物はできていたんですけど、〝FRAGMENT〞の部分だけもう一回上から全部塗ったんです。そういう途方もない工程を経て、やっと世の中に出すことができました。

藤原 確かに、〝FRAGMENT〞の社名が入らなかったら、これはもうコラボじゃなくなるので。



皆川 僕はこういうデザインだと思っていました(笑)。

※1 ハイプフェスト
ファッションオンラインマガジン『ハイプビースト』が主催するイベント

※2 ドーバー ストリート マーケット
「コム デ ギャルソン」が手がけるコンセプトストア。ロンドン、東京、ニューヨーク、パリなど世界8カ所に店舗を展開。

※3 「フェンディ × フラグメント ×ポケモン(FENDI × FRGMT × POKÉMON)」
2024年の1月に発売されたコレクション。

FRAGMENT UNIVERSITY 藤原ヒロシの特殊講義
非言語マーケティング

藤原 ヒロシ
世界を巻き込んだ藤原ヒロシ×ポケモン「サンダーボルト プロジェクト」メゾンからホテル、アイスキャンデーまで。今だから明かせる奇跡のコラボの舞台裏
FRAGMENT UNIVERSITY 藤原ヒロシの特殊講義 非言語マーケティング
2025年2月26日発売2,200円(税込)四六判/344ページISBN: 978-4-08-790194-8

ナイキ、ポケモン、スターバックス……世界の大企業は、なぜ藤原ヒロシを求めるのか?

90年代に「裏原宿」という世界でも類を見ないカルチャーを築き、その後はファッションの枠を超えて支持され、原宿のゴッドファーザーとして世の中に多大な影響を与えてきた藤原ヒロシ。氏の存在によって“ストリート”という曖昧な言葉に意味が定義付けられ、“コラボレーション”や“別注”など、それまでになかった言葉が世の中に浸透した。しかし、氏の作り上げたヒットやムーブメントの数々は認知されていても、その裏側にある知性、アイデアの作り方や育て方、人脈や、コミュニケーションのスタイルについては語られていない。
本書は、藤原ヒロシの仕事には本人も意図しない“マーケティング”が介在しているのではないか、という仮説のもと、歩んできた歴史や数々の仕事の事例を抽出し、それらを学術的に言語化して講義を行った架空の大学プロジェクト「藤原ヒロシの特殊講義 非言語マーケティング」の内容をもとに、一冊の講義録としてまとめたものである。

DAY1 文化人類学 -遊学史-
DAY2 社会学 -メディア論-
DAY3 情報学 -交友研究-
DAY4 経営学 -コラボレーション理論-
DAY5 建築学 -空間デザイン論-
DAY6 ケーススタディ -スターバックス コーヒー ジャパン-
DAY7 ケーススタディ -ナイキ-
DAY8 最終講義

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