自身の薄毛にも悩む漫画家・トリバタケハルノブ氏が描く『東京ハゲかけ日和』。第22話では、主人公・ノブヒコと中学時代からの腐れ縁のハルオが突然の病気で人生の岐路に立つ。
(なぜ自分が?)突然襲われた病気
前回の漫画『東京ハゲかけ日和』は、主人公ノブヒコの幼馴染であるハルオが病に倒れたところで終わった。今回は彼の病名が明らかになるところから始まる。
この一連の出来事は何年か前の僕の経験が元になっている。
ある時期、ときどきみぞおちから背中にかけて差し込むような苦しさを感じるようになり、気になりつつも特に対処しないでいたところ、突然、身動きできないほどの苦痛に襲われた。這うようにして救急外来に駆け込み検査入院し、翌朝には手術が決まっていた。
病名は「胆石症」。胆のうにうずらの卵くらいの石ができているという。すぐさま命にかかわるような病気ではなかったが、(なぜ自分が?)という気分になった。
さらに、たいていの場合は腹腔鏡手術で比較的短時間の処置と入院で済むはずが、僕の場合は胆嚢周りの血管の位置の関係で開腹手術の必要があるという。ときおりあるケースだと説明はうけたものの、これも(なぜ自分が?)という気分になった。
生活習慣に問題があったのだろうか?
運動不足になりがちな仕事だし、酒もそこそこ飲むし、野菜や魚より肉が好きだ。
そのときは拍子抜けしたが、あとから考えると「起こってしまったことに対していろいろ考えてもしかたがないでしょ?」と言われたようにも思えてきた。
悔やんだところで開腹手術して胆嚢を摘出することは決まっているのだ。とりかえしがつかないことについて考えるより、この先どう日常生活に復帰していくかを考えた方がいい。時間は前にしか進まないのだし。
手術は無事終わり、現在では病気前とほぼ変わらない日常を送ることができている。そして病気以降、なんらかの岐路に立たされたとき「結局のところ体質」という言葉を思い出すようになった。
薄毛が気になりだした時期にもこの言葉が頭に浮かんだ。これを「体質」だと諦めるのか、まだ「とりかえしがつく」と治療を始めるのか?
どちらにせよ、自分の過去を悔やんだり、未来に過度な期待をしてぐるぐる同じところを回らなくてもいいのだと、クールに中年の背中を押してくれるのだ。
トリバタケハルノブ まんが家/イラストレーター。まんが業→「トーキョー無職日記」「ことわざたずね旅(朝日小学生新聞にて隔週連載中)」「酒場はじめます(作画)」など。
イラスト業→「のぞき見探偵が行く!(月刊ジュニアエラ)」「ぶらぶら美術博物館おさらいイラスト(BS日テレ)」「戦国ベースボール」「こども戦国武将譚」 ほか。

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