「ボンタンアメを食べると尿意が消える」は本当か? SNSでライブ参戦時の必需品として話題だが…泌尿器科医に真相を聞いた
「ボンタンアメを食べると尿意が消える」は本当か? SNSでライブ参戦時の必需品として話題だが…泌尿器科医に真相を聞いた

1925年に発売され、今年100周年を迎えている「ボンタンアメ」。そんなボンタンアメが、なぜかSNS上で「尿意が消えるからライブ参戦時に便利」とのことで話題を呼んでいる。

果たして、その真相はいかに? 神楽坂泌尿器科クリニック院長の室宮泰人医師に聞いた。 

「ボンタンアメ」は本当にライブ参戦時の必需品なのか? 

鹿児島県鹿児島市の製菓会社・セイカ食品株式会社が販売している「ボンタンアメ」。 

なんでも、「ボンタンアメを食べることで尿意が消える」というポストがXで拡散され、「推し活で行くライブや舞台などの長時間の鑑賞に最適では?」と話題に。その結果、需要が高まり一部のスーパーやコンビニで品薄状態になったこともあったようだ。 

しかし、本当にお菓子で尿意が消えるのだろうか。

「医学的には糖質や炭水化物が含まれているものを食べることで、一時的な尿量の減少はあります。なので、完全に否定はできません。場合によってはボンタンアメを食べて、トイレが近くなくなることはありえるのかもしれません」(室宮氏、以下同)

ボンタンアメの原材料を見てみると、水あめやもち米など、まさに糖質と炭水化物がメインで使用されていることがわかる。

「糖質や炭水化物は水分子と結合して、身体の中にグリコーゲンという形態で蓄えられます。これにより水分を身体に蓄えやすくなるので、摂取した水分が尿になる量を減らす効果があるのです。ただ、ボンタンアメを少量食べたというだけで『尿意が消える』と断言することはできませんが…」

また、ボンタンアメの原材料のひとつであるもち米が水分を吸いやすいことが、今回の話題に拍車をかけたのではないかと室宮氏は推察する。

「以前にはもち米が原材料の大福も、抗利尿作用効果が期待できるとして話題になっていたことがありました。その大福の話題もあったため、いまボンタンアメが注目された可能性もあるでしょう。

いずれにしても水分を吸収しやすい食品だと、摂取した水分を尿にすることを阻害していることにもなるかもしれません」

しかし、いくら抗利尿作用が期待できるからといって、ボンタンアメを食べすぎることへ室宮氏は警鐘を鳴らす。

「糖質の多く含まれた食品なので、食べすぎると糖尿病のリスクが高まる可能性があります。糖尿病になると、高血圧や脂質異常症、肥満などを合併しやすく、これらの病気と相まって動脈硬化を進行させる危険性がありますので、糖質の過剰摂取には注意してください」

 そもそも○○状態のときは尿意を感じにくい 

ライブ鑑賞などといった推し活では、アドレナリンが出て興奮状態になる方が多いと思われるが、それも尿意に関係しているという。 

「そもそも興奮状態になっていると、アドレナリンが優位になっているため、尿意は忘れやすくなっているはずです。

逆に、家に帰ってきたら急に尿意が湧いたといった経験がある方も多いと思いますが、それは交感神経が副交感神経に切り替わったタイミング、つまりリラックス状態になったから、尿意を感じやすくなったのだと考えられます」 

室宮氏いわく、標準的な膀胱であれば2~3時間はトイレの心配はしなくて済むとのことだが、ではなぜ、こういった抗利尿作用の対策法が模索されるほど、トイレに行けないことへの不安感を抱えている方々が多いのだろう。

「最近の若い世代のなかには、トイレへ不安感を持っている人や頻尿の人が増えているように感じます。たとえば、トイレに間に合わず漏らしてしまったなどの失敗の経験があると、それが原因で頻尿になってしまう方もいます。

また、特に若い女性のなかには美容や健康のために水分をたくさん摂取し、それにより頻尿を発症したという方も増えています。

諸説ありますが、運動しない日に関しては体重1kgあたり30cc弱の水分摂取で十分と言われています。つまり体重50kgの人であれば1日1500ccが目安ということです。

頻尿が気になる方はもう少し水分量を抑えてもいいかもしれません。しかし、夏場などは脱水になる可能性が高いので気をつけてください」

――医学的には糖質や炭水化物が含まれている食べ物で、一時的な尿量の減少はあるとのことだが、SNSで話題を呼んだボンタンアメで「尿意が消える」というのはさすがに個人の体験にもとづいたプラセボ効果(偽薬効果)に近いのだろう。

取材・文/十六夜瑠奈(A4studio)

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