
4月13日より放送がスタートしたTBS系日曜劇場『キャスター』。視聴率は初回からロケットスタートを切り、世間の関心の高さがうかがえる。
テレビ局批判にもなりかねない内容
『キャスター』は、俳優の阿部寛が型破りなニュースキャスター・進藤壮一役を演じ、テレビ局の報道番組を舞台に、闇に葬られた真実を追求して悪を裁いていく社会派エンターテインメント。
進藤は視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』のテコ入れとしてメインキャスターに抜擢されると、「スクープのないニュース番組はニュース番組ではない」という信念で生ぬるい報道体制を正し、手段を選ばず、独自のルールで取材や調査を行ない、既存のルールはおかまいなしで大スクープを追っていく。
「第1話から報道番組に深く根を張る忖度や堕落したジャーナリズムを映し出し、既存の報道番組を揶揄するような展開がありました。テレビ批判にもなりかねない内容を、TBSの“日曜劇場”という日本ドラマ界のトップ枠で放送したのは地上波ギリギリの攻めた試みとも言えるでしょう」(テレビ局関係者、以下同)
その甲斐あってか、初回の世帯平均視聴率は14.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。日曜劇場としては、2023年4月期の福山雅治×大泉洋ドラマ『ラストマン-全盲の捜査官-』以来の初回14%超えの好発進だ。
日曜劇場は前作の『御上先生』も好評でいい数字を記録していたが、『キャスター』との共通点は、どちらも社会派ドラマであることだ。
「『御上先生』のヒットは特にテレビ局では衝撃でした。エリート文科省官僚が進学校の高校教師となり、日本の教育現場での問題点を生徒と一緒に考えるというストーリーでしたが、『こんな地味で真面目なドラマが数字を取るはずない』と思われていたからです。
しかし結果は、全話平均視聴率が10%以上のヒット。SNSなどでも話題となり、社会派ドラマが今の日本で数字を取れることを証明しました」
長らく日本のドラマ界では、医療もの、法廷もの、刑事ものが手堅いとされ、それらの作品が量産されて確かに高い視聴率を記録してきた。
だが最近では視聴者の目が肥えたうえに飽和状態であるため、医療ものでも王道の外科医ではなく、保健室の先生や診断医、法廷ものでも遺産相続に特化した弁護士などかなり細分化されている。
社会派ドラマが求められる背景
そんな中で『キャスター』は、ド真ん中の社会問題に切り込んだのが爆発的なヒットにつながったのかもしれない。
「社会派ドラマといえば2022年10月期の長澤まさみ主演ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(カンテレ)が高い評価を受けて、その年のドラマ賞を総なめしました。
ではなぜ『御上先生』と『キャスター』は高視聴率なのか。日曜劇場で放送されているというアドバンテージはもちろんありますが、この2年で急速に、社会問題に関心を持つ人が増えたからだとも考えられそうです。
特に“陰謀論”も含めて、既存のメディアやSNS、社会のあり方に疑問を持つ人が増えたからこそ、そういった問題を可視化して、ドラマというエンターテインメントに落とし込んでいる作品が人気なのかもしれません」
キャスターの初回の評判を見ると、SNSでは以下のような声があがっている。
〈「エルピス」以降こういう社会派のドラマが増えた事を心から嬉しく思う〉
〈御上先生は現代社会を風刺した社会派ドラマだったけどキャスターも同じ系統でお楽しみ。切り抜きや偏向報道や暴露みたいな現代社会の報道の問題を鋭く風刺してくれそう〉
〈いいね、旬の事件や問題ばかりの社会風刺。継続視聴〉
〈映画を1本見てるぐらいの満足感だった…! 報道の裏側とか普段見れないところだけどそれが興味をそそるし面白かったー!〉
ドラマに限らず、映画でも社会派作品は好調。2024年は物流業界の問題を描いた『ラストマイル』が興行収入59.6億円を記録し、実写映画としては『キングダム 大将軍の帰還』に次ぐ年間2位となった。
『キャスター』がこの先どれだけ数字を伸ばしていき、報道番組のあり方をどのように描いていくのか。今後の展開に注目だ。
取材・文/集英社オンライン編集部