
芸能界に長く身を置いている大久保佳代子だが、今も仕事現場への移動は電車が基本だという。さらに持ち帰った楽屋弁当をツマミに、残った白米はラップして冷凍。
年を重ねるごとに「お金があってよかった」と思うシーンも増えてきたという彼女がお金の使い方を赤裸々告白する。
53歳芸能人の赤裸々なお財布事情
今も仕事現場に行くときは電車移動が基本。
貧乏性ゆえに冷蔵庫の中の傷みかけた食材もなかなか捨てることができない。
いとうあさこさんが遊びに来たときに注文する『ウーバーイーツ』も食が細い50代二人だと食べきれなくて。
残った料理がもったいなくて翌日に食べ、それでも残ったらまた翌日の朝食にまわして食べる……。
芸能界という華やかな世界に身を置いていますが、金銭感覚は今も昔も堅実なまま、良くも悪くもしっかりと地に足がついている私の生活。
世間では「億単位の預貯金がある」と噂されている私ですが、楽屋弁当を自宅に持ち帰った日は、オカズを酒のツマミにして、余った白米はラップに包んでちゃんと冷凍。
いまだにそんな生活を送ることができているのは、間違いなく生まれ育った環境が影響しているのでしょうね。
中学卒業と同時に働きに出た父親、そして、スーパーでパートをしていた母親。
我が家は決して裕福な家庭ではありませんでした。
今でも忘れられないのが子供会のクリスマスパーティーのプレゼント交換。
みんなが用意したプレゼントは『サンリオ』の可愛い鉛筆やハンカチだったのに、私のプレゼントだけは母が「安くて大きい」という理由だけで選んだ『ナビスコ』のビスケットで。
もちろん、それが手元に回ってきた友達は包みを開けた瞬間にガッカリ。
その様子を見守りながら「私のプレゼントだとバレませんように!」と必死に祈り続けたりして。
でも、兄と私が大学まで進学できたのは、両親が必死に働き倹約してくれたからこそなんですよね。
上京するまでの18年間、そんな両親の背中を眺め続けてきたからか、気づけば私も立派な倹約家に。
それこそ、上京したての頃は自分に自信が持てなくて。
「東京に負けてたまるか!」とイケてない自分をファッションで武装。
毎月、『マルイ』のカードに5万円返済してはまた5万円使う、そんな自転車操業に陥ったこともありましたけど。
年齢を重ねるたびにどんどん図太くなっちゃってね。
今はもう「これが私ですが、なにか?」くらいの感覚で素材のまま生きているから。
洋服もあまり買わなくなりました。
今年買った服といえば、飛行機に長時間乗るために買ったウエストのゆるいスカート、それだけ。
あとは、ほぼほぼ“もらいもの”。
川村エミコちゃんと若槻千夏ちゃんがくれたトレーナーを着まわして、この冬は乗り切りましたからね(笑)。
お金があると安心、だけどお金で買うことはできないものもある
最近は飲みにも行かなくなったよね。
行ったところで疲れるし、お金もかかるから。
だったら、コンビニで1000円のワインを買って家飲みしたほうがいい。
自分のペースで飲めるし、寝たいときにベッドに飛び込めるし、何より会費が千円で済んでしまうっていうね。
で、そんな生活を送っていたら、銀行口座にまあまあの大金が貯まっていたわけで。それは間違いなく、一人で生きている私の心の支えにはなっています。
特に年齢を重ねてからは「お金があってよかった」の瞬間がどんどん増えている気もします。
膝が痛いときは躊躇せずタクシーに乗れるし、アンチエイジングにも資金を回すことができる。
知人から「若返るらしいよ!」と激推しされた、怪しげな3万8千円のサプリメントを、1日3粒で1200円以上もするそれを、毎日飲み続けることだってできる……。
でも、一番の「よかった」はやっぱり老いた両親の介護問題なんだろうな。
両親に何かあるたびに、新幹線に乗って飛んで帰れるのはお金があるからできることだし。
介護に必要なお金を援助できるのも貯金があってこそ。
倹約家の私ですが、親のためにお金を使うのはまったく苦じゃないし、むしろ、使いたいくらいなんです。
なんだろう、自分のために稼いで、自分のために使う、結婚していない私の経済は常に一人でくるくる回っていて。
たまにそれが虚しくなる瞬間があるんですよね。
でも、そこに“誰かのため”が加わると、自分の人生が少し正当化される気がするというか。
またそれが「入院した父親のために仕送りを増やそう。そのためにも頑張って仕事しよう」なんて、日々のモチベーションに繋がることもあったりしてね。
でも、同時に、お金じゃ買えないものがあることを実感することも多々。
少しずつ介護が必要になってきた父親に「私がお金を払うから、良い施設を探してみよう」と提案しても「絶対にイヤだ」と断られるし。
「じゃあ、私がお金を払うから。お世話するお母さんのためにも訪問介護をどんどん入れよう」と提案すると、今度は母がそれを全力で拒否。
「あんたもこれから一人で生きていくんだから、簡単に“お金を出す”なんて言うんじゃない!」と予想外の角度から怒られてしまったりして。
私としては両親がストレスなく快適に過ごしてくれるほうが助かるというか。
そのほうが、東京で気持ちよく仕事ができるから。
お金を出すのはまったく厭わないんだけど。
両親の気持ちは思い通りには動かなくて……。
というか、今でも母は私のお金が心配なんですかね。
母には貯金額を伝えたことがあるんですけどね。
「あんたいくら持ってんのよ」ってしつこく聞くから教えたんですけどね。
あれ、嘘だと思っているんですかね? もしくは、忘れているんですかね?
それはそれで怖い話ですよね。
いつか自分が病気になったとき、お金があれば高額な治療を受けることはできるけど、一緒に病気と戦ってくれる家族はお金で買うことはできない。
この世にはお金で買えないものが沢山ある。
それは痛いほどわかっているのだけれど。
やっぱり「お金があると安心」。
それが妙齢の独身女子の本音。
だからこそ、今日もまた……。
仕事仲間が結婚するたびに、あげるばかりで返ってこない“ご祝儀”をつい出し渋ってしまったり。
たった数百円であっても、貸した金を返さない友達をうっかり呪いそうになってしまったり。
お金にはやっぱりシビアになってしまう佳代子なのでした。
聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子 撮影/露木聡子