「免疫力アップ」のうたい文句には要注意…医師が警鐘を鳴らす、自己免疫反応がひき起こす身体の痛みとは
「免疫力アップ」のうたい文句には要注意…医師が警鐘を鳴らす、自己免疫反応がひき起こす身体の痛みとは

「免疫力アップ」「免疫力を高める」とうたう商品や健康情報は実に多いが、肩専門の整形外科医である歌島大輔氏は、イタズラに免疫力を強めることへ警鐘を鳴らしている。体内の炎症反応が強すぎることが原因で、肩こりなど身体的なトラブルが起きることがあるという。

書籍『じゃないほうの肩こり』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してそのメカニズムを解説する。

花粉症や皮膚炎、鼻炎、ぜんそくなども肩こりにつながりやすい

現代ではさまざまなアレルギー疾患で悩んでいる人が多いです。いくつかのアレルギー疾患をもち、症状の増悪を体験している人も少なくないでしょう。

本来なら全身のバリアである皮膚のトラブルや、生命活動に欠かせない呼吸器系のトラブル、そしていのちの糧である食べ物によるトラブルなど、多様なアレルギー疾患があり、患者数は増えているとされています。

症状のために生活に支障をきたし、つらい思いをされている人が多いと思いますので、少しでもラクになっていただきたく、解説いたします。

これらの病気についての解説は専門書に譲ることとして、ここではいずれのアレルギーも肩こりなどの慢性疼痛をまねいたり、悪化させたりする可能性が指摘されていることをご紹介します。

呼吸筋や体内で起こる炎症の負担が関係している?

海外で発表された研究論文を読んでみました(*1、2)。要約すると、以下のような指摘があります。

● いくつかのアレルギー疾患が合併すると炎症反応や痛みを感じる作用が強まり、ほかの慢性疼痛などを悪化させる可能性がある

● 慢性的な筋肉痛には食物アレルギーが関係していることがある

● アレルギーの既往歴がある人は、背中の痛みやうつ病に罹患している可能性が50%も高い

● アレルギー体質の人の背部痛は、体幹の筋肉と呼吸筋(横隔膜と腹横筋)の変化による「姿勢を維持する力の低下」の結果。また、くしゃみや咳が体幹筋に負担をかけ、脊椎への負荷を増し、「痛みの発生」に拍車をかけている

つまり、アレルギー疾患と肩こりなどの慢性疼痛増悪のメカニズムは、現段階では仮説ではあるものの、「アレルギー疾患による呼吸筋への負担」「アレルギー疾患によって体内で起こる炎症の負担」の両方が関係しているとされているのです。

風邪でもくしゃみや咳が続くと、疲れを感じますね。それで肩や背中のこりや痛みが生じるのは理解しやすい。

一方で、炎症反応が関係するというのは、興味深い示唆で、さらに詳しい研究が待たれます。

というのも「身体のなかで起こる炎症」はいま医療分野の注目トピックで、がんと炎症の関係なども盛んに研究されているからです。

「免疫力アップ」のうたい文句には要注意

とはいえ、研究が進むのを待っているわけにもいきません。セルフケアをしても解消できないつらい肩こりがあるなら視点を変えて、少しでもつらい症状を軽減しましょう。

アレルギー疾患の有無を確かめ、アレルギー疾患があったなら、それにしっかり対処することが、肩こり解消にも早道かもしれない。アレルギー疾患と肩こりを分けて考えないで、一旦、アレルギー疾患の治療に集中してみるのです。

最近、少し注意深く表現されるようになってきましたが、まだ「免疫力アップ」や「免疫増強」「免疫力を高める」などとうたう商品や健康情報がなくなってはいません。

しかし、免疫力は強く、高ければいいというものではありません。

アレルギー疾患には、自己免疫反応が強すぎて起こるメカニズムがあり、アレルギー疾患を原因とする場合の肩こりは、免疫系が「高すぎる(崩れている)」せいで起きているとも言えるからです。

免疫力を高めようという風潮はやや安易で、あえて言うなら「免疫力を整える・崩さない」が◎。

それも何か飲んだり、食べたりして、さっと整ったりするものではなく、地道な健康づくりや病気の治療の積み重ねで養われるものです。

参照

(*1)Barrick BJ, Jalan S, Tollefson MM, Milbrandt TA, Larson AN, Rank MA, et al. Associations of self-reported allergic diseases and musculoskeletal problems in children: A US population-based study. Ann Allergy Asthma Immunol. 2017 Aug;119(2):170–6.

(*2)Killian, S. & The Institute for Therapeutic Discovery. Seasonal allergy induced back pain: A report of two cases. Allergy Disord. Ther. 2, 1–4 (2015).

写真/shutterstock

じゃないほうの肩こり

歌島大輔
「免疫力アップ」のうたい文句には要注意…医師が警鐘を鳴らす、自己免疫反応がひき起こす身体の痛みとは
じゃないほうの肩こり
2025/4/111,540円(税込)224ページISBN: 978-4763142207

一般的な肩こりの原因とされる
「悪姿勢」「体型」「運動不足」……じゃない、
■■■■■■
内臓疾患や病気によって起こる肩こり
■■■■■■
もある!

肩専門の整形外科医が世界中の論文をひもとき、
年間手術数400超の臨床感とともに導いた
新しい肩こりの本。

「肩こりで病院なんて大げさ」と
思っている人は読んでください。


肩こりとは、
いわば、あらゆる健康トラブルの一部にあらわれる現象と言えます。
肩こりに気づいたなら、
この「じゃないほう肩こり」の可能性を「つぶして」から
セルフケアに臨むのが正しいのです。


肩専門の整形外科医が世界中の論文をひもとき、
年間手術数400超の臨床感とともに導いた、
新しい肩こりの本。肩こりをきっかけに、健康へと舵を切る1冊です。

【目次より】
姿勢や運動不足じゃないほうの原因はこんなにあった!

うつ病
睡眠障害
糖尿病(糖尿病予備軍)
脂質異常症(脂質異常症予備軍)
アゴ・歯の問題(食いしばり)
アレルギー疾患
眼精疲労
更年期障害
頭痛
胃弱・胃腸障害
狭心症・心筋梗塞
大動脈解離
がんなどの悪性腫瘍
帯状疱疹
椎骨動脈解離(脳梗塞)

第1章 “じゃないほう”の肩こり第1群 身近なトラブルが原因の肩こり
第2章 “じゃないほう”の肩こり第2群 見逃しNG! 緊急度の高い疾患が原因の肩こり
第3章 “じゃないほう”の肩こり第3群 紛らわしい!首肩トラブルが原因の肩こり
第4章 関節クイーン「肩関節」をまもろう
第5章 究極のシンプルさ! エビデンスに基づく肩関節セルフケア

編集部おすすめ