80歳にしてエベレスト登頂、朝勃ちの復活も…人気医師が「まむしドリンク」よりも男性高齢者にすすめたい“治療法”とは
80歳にしてエベレスト登頂、朝勃ちの復活も…人気医師が「まむしドリンク」よりも男性高齢者にすすめたい“治療法”とは

男性更年期障害や勃起障害(ED)などの治療として、テストステロンを補充する「男性ホルモン補充療法」。人気医師の和田秀樹氏によると、男性高齢者は、この治療法を受けるべきだという。


『熟年からの性』より抜粋・再構成し、その効果を解説する。

欧米では3~5割の人がホルモンを補充している

女性の中には高齢になるとセックスを嫌う人もいますが、パーセントでいくと日本の60代の男性は70%くらい、女性は30%くらいがセックスしたいと思っているというデータがあります。

ですが、ここがまたややこしくて、男性の70%というのはセックスをしたいのだけれど、勃たなくなってできない、したいけれど身体能力的にできないというのが実状のようです。

やはりセックスができなくなると男性でなくなるような気持になるので、できるかぎり「できるようになる」方向にもっていったほうがいいと思います。

そのためにも、まずは意欲を高めていく必要があります。

これに対して、3割から5割の人がホルモンの補充によって若さを保っている欧米人は、日本人とは比べものにならないくらいセックスが大事で、夫婦のどちらかがセックスができなくなると離婚の原因になるほどです。

そういう事情もあって欧米ではバイアグラ(ED治療薬)がめちゃくちゃ売れました。

それで薬品会社が、日本でもすごく売れるだろうと期待して、異常な早さで厚生省(現・厚生労働省)に認可させ、しかも保険収載されなくていいからといって発売に踏み切ったのですが、期待に反して、一般向けのものは全然売れなくて、歌舞伎町とか限られたところで売られているような状態になっています。

要するに、日本ではよそで遊ぶために買う人はいても、奥さんとセックスをするためにバイアグラを使う人がほとんどいないということでしょう。

加齢とともにどうしても男性ホルモンが少なくなるのですが、男性ホルモンが不足すると、気力が落ち、人との付き合いがうっとうしくなってきます。

それだけでなく、人間そのものへの興味を失っていきます。

さらに、記憶力が低下し、筋肉が落ちて脂肪がつくので健康にも影響します。
また、頭を使わなかったり、体を使わなかったりするので要介護にも認知症にもなるリスクが高まります。

結局、性的能力を維持して元気に生きるためには、男性ホルモンのテストステロンを十分保っていることが非常に大切なポイントになるということです。

ホルモン治療をした登山家は80歳でエベレストに登頂

性的な刺激が男性ホルモンを増やしてくれるのに、日本人はなぜかそういうものを忌み嫌う傾向があります。

日本の医者は「男は年をとったら元気がなくなるのが当たり前」という発想しかなくて、テストステロンの重要性を説明しません。

そのことが、高齢者が性的なものへ関心をもつのは恥ずかしいことだという偏見を広めてしまったように思います。

熟年からの男性を元気にするという意味では、テストステロンを補う治療をもっと普及させるべきだと思います。

私は、高齢の男性こそホルモンを補充することをおすすめします。元気でいられるし、筋肉も落ちにくくなるからです。

性的に元気である人は年をとってからも元気です。

例えば、艶福家としても知られている渋沢栄一にしても、稀代の性豪だったといわれる伊藤博文にしても、年をとってからも元気でした。田中角栄だって脳梗塞にさえならなかったらずっと元気だったと思います。

男性ホルモンが十分ある人は、肉を食べて適度な運動をすれば、年をとっていても筋肉がつきます。

ところが、男性ホルモンが少ない人は、男性ホルモンの十分ある人と比べて、同じだけ肉を食べて、同じだけ運動しても筋肉がつかないのです。

このことひとつとってみても、ホルモンの力はすごいですよね。

「どうも男性ホルモンが不足しているような気がする」と思っている人は、ものは試しで、この機会に補ってみてはどうでしょう。

男性ホルモンを補充して筋肉の回復をはかったよい例として、プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さんがいます。

三浦さんは70代の半ばにスキー場でジャンプに失敗して、左大腿(だいたい)骨頸部や骨盤など5カ所を骨折し、医師からは「治っても車いす生活」といわれたそうです。

治療や懸命なリハビリでなんとか回復しましたが、筋肉がゴソッと落ちたのでホルモン療法をはじめました。

三浦さんが言うには、「2週間に1度の注射を続けていたら、高校生のような〝朝勃ち〟が起きて、元気も湧いてきた」そうです。

そして、ご存じのように世界最高齢、80歳にしてエベレスト登頂に成功しました。

エベレストのベースキャンプでも、チームドクターにテストステロン注射を続けてもらっていたそうです。

三浦さんに男性ホルモン補充療法(HRT= Hormone ReplacementTherapy)を行ったのは、札幌医科大学名誉教授の熊本悦明先生でした。

先生は男性ホルモンを日本に導入した人ですが、92歳で亡くなる直前まで現役医師を続けられていました。

また、先生は「男性ホルモン」という名称がよくないので「元気ホルモン」に変えるべきだと主張していました。私も賛成です。

「まむしドリンク」よりも男性ホルモン

元気ホルモンという意味では、年をとっても男性ホルモンの数値をある程度維持している人は要介護状態に陥りにくいのです。

この機会に、ぜひ、ご自身の男性ホルモンの数値を計ってみてください。

ただ、先ほども申しましたように、日本がそういう健康寿命を延ばす施策を考えているかといえば全く逆で、むしろ高齢者を痛めつけ、ますます弱くさせるようなことばかりしています。

意識的に男性ホルモンの分泌を上げて元気を出さないといけない高齢者に対して、元気を奪うことばかりやっているのです。

私のクリニックでも、調べてみると男性ホルモンが足りない人がいっぱいいました。

その人たちにはおおむね注射で補充するのですが、みんな目に見えて元気になるし、頭もシャキッとしてきます。

ある患者さんなんか75歳くらいになるのに、「先生、久しぶりに朝勃ちしたんですよ。ついでに性欲も高まってきたので10年ぶりに風俗に行きました」というメールをくれました。

その人は、じつは奥さんがだいぶ前に認知症になられたために、セックスライフから遠ざかり、ずっとまじめに介護してきた人なのです。だから風俗くらい許してもいいんじゃないかと、私は個人的には思っています。

いずれにしても、男性ホルモンを補充すると、そのくらい元気になるということです。
だから、若返りのためには「まむしドリンク」なんか飲むよりも男性ホルモンのほうが、ずっといいと思います。

ところで、ホルモンの補充は「いつ頃からはじめたらよいか」という質問を受けることがありますが、時期については特に決まりがないので、性欲が弱ったなと感じたらはじめるとよいと思います。

そして、いつまでも“現役”でいたいと思うかぎり続けるとよいのではないでしょうか。

現役というのはなにもセックスの現役というだけではありません。仕事もその他もろもろのことも現役という意味ですから、そう思っている間は続けたらいいと思います。

うちのクリニックではアンチエイジングや内科などがメインですが、いちばんリピーターが多いのが、このホルモン補充療法です。

文/和田 秀樹

『熟年からの性 若返りの秘訣おしえます』(アートデイズ)

和田秀樹
80歳にしてエベレスト登頂、朝勃ちの復活も…人気医師が「まむしドリンク」よりも男性高齢者にすすめたい“治療法”とは
和田 秀樹『熟年からの性 若返りの秘訣おしえます』アートデイズ
2025/4/151,650 円(税込)232ページISBN: 978-4861193101『80歳の壁』の著者が教える「性」のパワー! なぜ日本はセックスレスになったのか? 熟年からの男女にとって「性」はなぜ大切か? 『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』などベストセラーを連発する精神科医・和田秀樹先生が、「性」にまつわる疑問に答え、熟年を若返らせる秘策を説きます。「本書で私が主張したいことは、熟年以降は男性も女性も性に対して寛容であってほしいということです」(著者の言葉) 性に関する様々な疑問に答え、ヨボヨボ老人にならないために熟年以降の世代ほどセックスをした方がよいと説いた衝撃の書。
編集部おすすめ