
女性が「人生最高のセックス」を体験したのは20代でも30代でもなく、実は60代が最多――。こんなアンケート結果が世間を驚かせた。
その理由を、ベストセラー医師・和田秀樹氏の最新作『熟年からの性』より抜粋・再構成してお届けする。
女性の「人生最高のセックス」は50~60代という調査結果
女の人が男性とちがうのは、性経験を重ねれば重ねるほど、感じる体になることです。
前にもお話しましたように、女性は男性と逆で、年をとるにしたがって女性ホルモンは減って男性ホルモンが増えていきますから、60代以降のほうが若いときよりも性欲が強くなる人が多いようです。
90代の女性が「振り返れば60代がもっとも感じたわ」と言っていたという話を聞いたことがありますが、たぶん事実だと思います。
というのは、そのころは性欲を支える男性ホルモンも多いし、人間的にも成熟して魅力的になっているからです。
「60代がもっとも感じたわ」と言っていた90代の女性の話には、かなり信憑性があります。というのは、実際の調査結果も出ているからです。
富永喜代医師が主宰するオンラインコミュニティ「富永喜代の秘密の部屋」で30~80代を対象に行なった調査で、「あなたはこれまでの人生で『最高のセックス』を体験したことはありますか? そして、それは何歳のときですか?」という質問を男女123人に対して行なった結果、次のような回答を得ていたといいます。
「最高のセックスを経験した」と回答したのは、20代が13人、30代が14人、40代が22人、50代が30人、60代が36人、70代が8人。
つまり「最高のセックスを経験した人は60代がもっとも多かったことがわかりました。
これを見て驚いた方も多いのではないでしょうか。
50~60代の人たちが、20~40代の人たちを圧倒的にしのいで〝最高のセックス〟をエンジョイしていたなんて本当にすばらしいですね。
なお、この調査結果は、後に「日本性機能学会第32回学術総会」という学会でも発表されています。
熟女はセックスも人間的魅力も最高! いっぽう男性は……
女性は50~60代は、性的成熟はもちろん、人間的にも成熟して魅力的になりますが、男は、残念ながらそういうことにはなりません。
男のばあい、若いころと比べて、年をとってからのほうが性的なものの感度がよくなるという気はしないけれども、せいぜい若いころと比べて射精まで時間がかかる分だけ快感がつづく時間が延びるということはあるかもしれません。
ですが、感じ方が変わるかといえば変わらない。
女の人は年をとってからのほうが感じるという人が多いようですが、男は感じるところが基本的に一カ所だけだから、そういう感覚は残念ながら男にはわかりません。
その点、女の人は体のあちこちに性感があるので、下手すると指先をなめてあげるだけで感じる人もいるようです。
谷崎潤一郎が「女の人の足を見るとゾクゾクする」と言っていたそうですが、もしかしたら女の人の足に性感があるのを発見して喜んでいたのかもしれません。
男は感じるところが一カ所だけだから、年をとるにつれてそこもだんだん弱くなっていくので、今度は相手を喜ばせることに喜びを感じるようになります。
そして、ふだん真面目そうにしているきれいな女性が乱れるのを見て楽しんだり、思わぬところに性感帯があるのを発見して喜んだりするのです。
これは医学的にもすごく大事なことです。なぜなら意欲や感情や創造性を司る前頭葉を使うからです。
女性の性欲は「死ぬまで」って本当?
有名な話ですが、江戸の名奉行・大岡越前守が、不貞を働いた男女の取り調べをしていたとき、「女性からの誘いに乗ってしまった」という男側の釈明にどうしても納得がいかなかったので、自分のお母さんに「女性はいくつまで性行為が可能か」と聞いたところ、彼女は黙って火鉢の中の灰をかき回し、小さい声で「灰になるまで」と言ったそうです。
真偽のほどはともかくとして、女も年をとってからもいつまでも性欲があるという、ひとつの逸話としてはおもしろいですね。
男も女もいつまでも性欲があるのは恥ずかしいことではありません。
他人を困らせたり警察の厄介になったりしなければ、欲望に忠実に生きてもいいと思います。特に閉経後の女性は妊娠の心配もないわけですから、もっと奔放に楽しんではどうでしょう。
作家の佐藤愛子さんの作品を映画化した『九十歳。何がめでたい』が2024年に公開となりましたが、その主演を務めている草笛光子さんにしても、あるいは70歳のときにひと回り以上年下の男性と恋をして、その顛末を『わりなき恋』という私小説にして発表した岸恵子さんにしても、女性たちの憧れの的な存在ですよね。
年を重ねてもこんなふうにかっこいい、美しい女性でいたいとみんな思うわけです。
107歳で亡くなった女性報道写真家第一号とされている笹本恒子さんも、意欲的な女性の典型と言うべきでしょうか。
このように、女性には自分の人生のお手本になるような人がいっぱいいるのです。
意欲的な女性ということに関して、主に50代以降(「ハルメク世代」と呼んでいる)の女性をターゲットにした「ハルメク」という月刊情報誌があります。
内容はファッションを主としたものですが、あらゆる年代向けの女性誌のなかでも発行部数は国内最多の50万部を超えて、「週刊文春」や「女性セブン」よりもはるかに売れています。
この例からも、女性というのは年齢を重ねてもファッションに興味があるし、人とのコミュニケーションにも積極的で意欲的だということがわかります。
今は女性が支持する商品でなければヒットしませんから、これからは女らしい女の出番です。
ファッションだけでなく性に対しても欧米の女性たちは積極的で意欲的ですが、性の問題に関しては、日本の女性はたち遅れていると思います。
ジェンダーフリーやSDG s(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)などスローガンは海外から一早く取り入れるのに、たいていねじ曲がった方向に行ってしまいます。
私は日本の女性たちに、「性に対してもっと積極的かつ意欲的であってほしい」と言いたいです。
文/和田 秀樹
『熟年からの性 若返りの秘訣おしえます』(アートデイズ)
和田秀樹