
“グンマー帝国”“未開の地”…。関東の北西部に位置し、SNSなどを中心に何かと見下されがちだった群馬県。
群馬が移住希望地ランキング初の栄冠に
関東の北西部に位置し、人口190万人を抱える群馬県。
草津、伊香保、四万など多くの温泉地を有し、自然に富んだ観光地としても知られているが、都道府県魅力度ランキングでは毎回下位に位置するなど、これまで何かと見下され気味だった群馬県が、ここにきて快進撃を遂げている。
東京・有楽町を拠点に国内最大規模の移住相談窓口を設置しているNPO法人「ふるさと回帰支援センター」が新規移住相談者などを対象におこなった「2024年移住希望地ランキング」で、群馬県が初の全国1位に輝いたのだ。
特に20~30代の若い世代の相談者が増加し、窓口相談者、セミナー参加者の両方から1位を獲得したのも調査開始以来初めてのこと。さらに4年連続1位だった王者・静岡県を抑えての快挙達成に、山本一太・群馬県知事も思わず記者会見で喜びを爆発させた。
「ついに念願を果たすことができました。知事としてこんなにうれしいことはありません。今回のランキングの結果をもとに、群馬県の関心の高まり、勢いと運気を活かし、引き続き移住促進に努めてまいります」
移住者の本音は…
一体なぜ移住先に群馬を選んだのか。実際に移住した人に話を聞いた。
一昨年、夫と群馬に移住した30代の女性・まりなさん(仮名)は、
「夫とは大学時代のウィンタースポーツのサークルで出会って結婚しました。お互いスノーボードが大好きで、一緒に国内各地の雪山を巡って、夏にはニュージーランドにも滑りに行くほどでした。
国内では都内からアクセスのいい群馬や新潟に滑りに行くことが多かったんですが、行く度にこんな近くに良質な雪山があって羨ましいな~って思ってたんです」(30代女性、以下同)
まりなさんは新卒から都内の出版社に勤めていたが、コロナ禍をきっかけに働き方や生き方を見直すようになり、3年前に独立。夫とも話し合い、将来の子育て環境なども考慮したうえで、群馬県に移住することに決めた。
「朝は家の前の畑仕事を終えたら、車を40分ぐらい走らせて雪山で昼過ぎまでスノボして、午後は近くの喫茶店で受注した仕事をこなすのがルーティーンです。毎日好きなスノボができるうえ、群馬は家賃も物価もとにかく安いのが魅力です。
畑で自炊もできるし、直売所に行けば旬の野菜が安く手に入る。地元の人からおすそ分けももらえるので、ほとんどお金を使いません。都心からアクセスもいいので、両親や友人に気軽に会いに行けるし、何度か群馬の温泉地にも遊びにきてくれました。今のところ移住して寂しいと感じたことはありませんね」
と充実した様子。群馬の移住ライフを満喫しているようだった。
なぜ群馬がナンバー1に⁉
今、群馬が選ばれている理由とは何なのだろうか。
「伸び伸びと子育てしたい層や、首都圏のアクセスの良さと自然環境からテレワーク移住を検討している層、また『災害の少ない地域に住みたい』という声も多く聞かれています」(NPO法人の担当者、以下同)
と、その背景を分析する。
実際に、移住者からの声で多く聞かれたのは「都心からの交通アクセスの利便性」だ。
群馬・高崎-東京間は新幹線で50分、湘南新宿ラインや上野東京ラインなどの在来線のほか、4つの高速道路が利用可能など交通手段が充実している。
さらに「物価・家賃の安さ」も人気を押し上げた一因だ。群馬県は全国で3番目に物価が安く(総務省より)、家賃相場も全国平均が1部屋5万2千円台のところを、群馬県は4万1441円と、全国で3番目の安さを誇っており(全国賃貸管理ビジネス協会より、今年4月段階)、この物価高の時代だからこそ、注目度が高まっている。
さらに車の免許の保有率も高く、ドライブスルーの環境が整っていたり、96カ所の温泉地を有する“温泉大国”であるほか、「自然災害が少ない」ことも近年注目される理由だろう。
気象庁によると、過去100年で震度4以上の地震が起きた回数が、東京は574回なのに対し、群馬は77回と関東で最も少ないといい、首都直下型地震や南海トラフ地震、富士山噴火など近年懸念されている自然災害への影響から遠い場所にいるのも特徴の一つだ。
さらに自治体が積み上げてきた取り組みも功を奏した。
「群馬県は2020年に全35市町村がこのセンターの会員となり、移住希望者の受け入れ態勢を整えてきました。2024年11月には群馬県と栃木県が同日に東京交通会館12階でそれぞれフェアを開催しました。
コロナ禍以降、移住先として人気が高まる北関東2県の相乗効果もあり、群馬が230組363名、栃木が225組342名の参加者を集め、成果をあげてきたんです」
今回3位だった栃木県との相乗効果もあり、着々と実績を積み上げてきた群馬県。コロナ禍を機に浸透したテレワークの働き方や物価高が止まらない現代だからこそ、巻き起こった“群馬旋風”。次にその風に乗るのは、あなたかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部