〈プロ野球観戦マナー〉外野席で「見えないから座って」は非常識か…阪神ホームゲームは事実上立ち応援禁止も、強まる「立って応援したい」の声
〈プロ野球観戦マナー〉外野席で「見えないから座って」は非常識か…阪神ホームゲームは事実上立ち応援禁止も、強まる「立って応援したい」の声

プロ野球観戦において、外野席は立って応援するもの――そんな暗黙の了解から、今、SNS上でちょっとした議論がなされている。発端はある野球ファンのXユーザーが外野席で立って応援していたところ、「見えないから座ってほしい」と注意されたことだった。

“立ち応援OK”もエリアによっては…

日本のプロ野球において、観戦に花を添えるのが外野席に陣取って応援をリードする応援団と、その周囲にいる熱狂的なファンたちだ。

その外野席では自軍の攻撃時は立って応援するファンが多数を占めるが、今、この“外野席立ち応援文化”について論争が起こっている。

きっかけとなったのは5月18日、ヤクルトファンのXユーザーが「どこの席かは明言しませんが外野席で立って応援していたら後ろの席の方に肩をトントンされ、座ってくださいと言われました」と、立ち応援を注意されたことを報告。

すると、SNS上の野球ファンたちがこのポストに対して、

〈立って応援するのがホーム外野席では……〉
〈座って応援したいなら高いお金を払って内野席に行ってほしい〉

と、投稿者に同情の声が集まった。一方で、〈理解できるけど、子供と観に行ったときに前が立っていると正直残念〉や〈椅子があるのになんで立つのかが理解できない〉といった意見も一部で見られた。

前後の投稿からヤクルトの本拠地である神宮球場での出来事だと思われるが、ヤクルト球団の観戦ルールによると、一部座席を除き、外野A・B・C席のいずれの席種ともに「スワローズの攻撃時に立って応援するお客様が多数いらっしゃいます。予めご了承ください」というアナウンスがされている。

この点を鑑みれば、投稿者が注意されるいわれはない。しかし、同ユーザーによると「トントンしてきた方の後ろの席にいる小さな子供が『見えない』と言っていたらしく、伝言のような形で私に伝わりました」とのことで、「子どもが見えないなら話が変わってくる」という意見も。

外野席の立ち応援について、神宮球場でよく観戦するというあるプロ野球ライターはこう指摘する。

「神宮球場の外野エリアの席数は他球場に比べても広いほうで、応援団の近く以外は座って応援する人も少なくありません。

とくにポールよりも内野寄りに位置する外野C席は立って応援する人はほぼいないので、正直、ここで立たれるとかなり悪目立ちしてしまうでしょう」

ルール上は問題ないが、ひとり熱心なファンがこのエリアに来て立ち応援してしまうことで、他の観客が見づらくなってしまうというのは、何とももどかしい話だ。

阪神のホームゲームは立ち応援は事実上禁止

他球場の状況を見ると、同じセリーグの場合、巨人、中日、DeNAはヤクルトと同じく「外野席はそれぞれのチームの攻撃時には立って応援をするお客様が多数いらっしゃいますので、ご了承ください」といった趣旨のことが公式サイト上で説明されており、パリーグ6球団もすべての外野席というわけではないが、おおむね同様(エスコンフィールドHOKKAIDOは内野3・4階のホーム応援エリア)だ。

一方、広島は内野2階席のパフォーマンスシートの座席の説明で「立ったり、座ったり、熱い応援を楽しめるコンパクトで動きやすいシートです」との記述があった。

さらに、阪神は少し特殊だ。古参の30代男性・阪神ファンがこう説明する。

「甲子園や京セラドームの阪神主催試合はルール上、立ち応援は禁止されているわけではありません。ただし、『立ち上がっての応援はまわりのお客様のご迷惑となる可能性があるので十分ご配慮の上、ご観戦ください』と場内アナウンスがされており、外野席であろうと現在では事実上、立ち応援はできない状態です」

立つのが当たり前の外野において、阪神のこの応援に関する運用は12球団で唯一だ。

「外野席で年間シートを購入している高齢者層が多いからとか、2003年と2005年の優勝後に急増したにわかファンが“立ち応援”に対してクレームを入れることが多かったため、とも言われていますが、詳しいことは定かではありません」(前出、阪神ファン)

しかし、立ち応援したい阪神ファンももちろんいる。

「去年、クライマックスシリーズのファーストステージが甲子園で開催されたのですが、もはやファイナル進出が絶望的になった第2戦の9回裏、ヤケクソになった阪神応援団が外野席のファンに立ち応援をするように音頭を取って、それがすごい迫力だったんです。

それで阪神ファンも『やっぱり立ち応援は楽しい』と思い出したのか、今は“立ち応援ができる席”をつくってほしいとの声が日に日に大きくなっています」(同)

今年から試合中に撮影した球場内の写真や動画のSNSへのアップロードについて制限がもうけられた。神宮球場を始め、立ち応援についてもこうしたトラブルが増えるとルール化されて禁止されてしまう可能性もある。

とはいえ、球場にはライト層からコア層までさまざまな観客が足を運ぶ。みんなが楽しめる空間づくりは、球団は積極的に行っていくべきだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部

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