小中の不登校児、実際は統計の数倍いるかも…「なぜ学校に行けないのかわからない」個別の事情があるなか、家庭で「名前」を呼んであげることが大事な理由
小中の不登校児、実際は統計の数倍いるかも…「なぜ学校に行けないのかわからない」個別の事情があるなか、家庭で「名前」を呼んであげることが大事な理由

「小中学校に行けていない不登校の生徒は、文部科学省が発表している数字の何倍もいるのでは」と指摘するのはYouTuberで、教育評論家の静岡の元教師すぎやまさん。その生徒の多くは「なんで学校に行けないのか」理由を説明できないという。



書籍『教師の本音』より一部を抜粋・再構成し、不登校の実態について解説する。

不登校の原因は「いじめ」とは限らない

不登校は今、大きな社会問題になっています。

2024年10月末、34万人以上の小・中学生が不登校という調査結果が発表され、新聞などでも大きな話題となりました(文部科学省『令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要』)。

去年はおよそ29万人で大騒ぎしていたのに、あっという間に30万人超え。ただし、この34万人というのは『年間30日間以上欠席』の生徒だけで、それだけいるということ。不登校というのは「来るか?」「来ないか?」と、簡単に割り切れるような問題ではなく、来たり来なかったり、休みがちだったりする子の方が圧倒的に多いのです。

29日欠席の子や、別室登校の子、毎日午前中は来られない子などは、ここに含まれていません。だから、私は、実際はこの3倍以上は『ほぼ不登校』の生徒がいると考えています。

不登校の子どもは、この11年間ずっと増え続けていています。34万人というと不登校(30日以上欠席者)の調査・統計の始まった1991年から30年余りで5倍以上です。

特に2020年度以降、一気に15万人も増えています。それくらい急増しているのです。

これはおそらく、今まで「学校行かないと困る」と思っていた子どもたちが、コロナをきっかけに「あれ、意外と学校行かなくても困らないじゃん」と感じてしまったからだと私は思っています。



コロナ禍を機に「リモートワークでも意外と大丈夫だ」と気づき、そのまま週の半分は在宅になったというようなサラリーマンがたくさんいますが、要はそれと同じことです。

子どもが不登校になると、親や先生は必死に原因を探します。

「友だちにいじめられたのか?」

「担任の先生と合わないの?」

「授業についていけていない?」

などと問い詰め、必ず何か原因があって不登校になっているんだろう、と思ってしまいがちです。

しかし私が経験したケースでは「明確な原因なんて結局わからない」というのがほとんどでした。そりゃそうです。

不登校の理由はわからないことが多い

「わたくしは、こうこうこういう理由で不登校になりました」なんて、スラスラと言語化できるぐらいだったら不登校にはならないでしょう。そういう言葉にできないモヤモヤや、積み重なったよくわからないストレスとかがあって、自分でもそれを処理できなくて不登校になるのです。

数学のように、原因はコレだ! とスパッと割り切れるような問題じゃないんです。「なんで行けないのか?」を生徒本人も説明できないし、本人もわからない。そういうケースが一番多いのです。

私の体感では、不登校になる生徒は『心のエネルギー』のようなものが枯渇している子が多い、と感じています。話していても、家での様子を聞いても、どうもボーッとしがちで、心のエネルギー=活力、生きる原動力がほとんどないように感じるのです。外に出ると活発な子でも、すぐにエネルギー切れになってしまう。

そういう子にとって不登校期間は、心のエネルギーを充電するために必要な期間、と考えることもできるかもしれません。

もちろん、昔も心のエネルギーが空になってしまう子はたくさんいたと思います。でも、昔は親や学校に強制力があったため、それでも無理矢理学校に行かされていることが多かっただけ。

ところが今は家庭環境が複雑だったり、発達障害だったり、いろいろな背景を抱えている子が多いです。そのせいで、普通はご飯を食べて一晩寝れば充電できるエネルギーが、うまく充電できないままになってしまい、それが一定のラインを越えると不登校になっていくのではないかと、私はそう考えています。

そして、心のエネルギーの量と、その充電に必要な時間には、個人差があります。生まれつきエネルギーのキャパシティが大きい子もいれば、もともと小さくて、充電に時間がかかる子もいるのです。

中には普段は元気なのに、学校のことを考えると急に不安になって、一気にエネルギーがゼロになってしまうような子もいます。

だから、「学校が悪い」「親が悪い」「友だちが悪い」と無理矢理原因を探そうとするよりも、どうやったらその子の心のエネルギーを充足させてあげられるか?を考える方が建設的です。

大切にしていることのひとつは、「名前を呼ぶこと」

ちなみに私は今、不登校生徒向けのオンラインのフリースクールを経営しています。そのスクールでは「学校に行け」とか「どうやったら学校に行けるようになるか」なんてことは一言も言いません。でも、いつの間にか学校に行けるようになってしまう子が多いんですね。

大切にしていることのひとつは、「名前を呼ぶこと」。



オンラインの授業なので、先生が毎日「あ、◯◯さんおはよう」と入ってきた子、一人ひとりに声をかけるんです。そうしないと誰に対して言っているかがわからないので。

先生側は何気なくやっていたことなのですが、アンケートを取ってみると「名前を呼んでくれてうれしかった」という子がとても多いのです。

思い返してみると、学校でもたしかにあいさつはするけれども、一人ひとりに声をかける機会はどうしても少ないのが現状です。もしかしたら、家でも『名前』を呼ばれることは少ないのかもしれません。

そんなちょっとしたことでもいいんです。そういう関わりが、前に進むエネルギーになっていくんですね。

写真はすべてイメージです 写真/Shutterstock

教師の本音 生徒には言えない先生の裏側

静岡の元教師すぎやま
小中の不登校児、実際は統計の数倍いるかも…「なぜ学校に行けないのかわからない」個別の事情があるなか、家庭で「名前」を呼んであげることが大事な理由
教師の本音 生徒には言えない先生の裏側
2025/3/71,045円(税込)272ページISBN: 978-4815631109

本音をすべて書きました

10年以上中学校教諭を勤めた私が、教師の裏側を明かします。
「先生に相談しても迷惑じゃない?」「不登校で将来が心配」といった保護者が抱える悩みから、「『成績を上げろ』と5時間監禁される」「実は熱血教師が学校をダメにしている」といった気になる現場の実態まで。
保護者、教師、そしてすべての人が子どもの未来のために何ができるか、考えるきっかけになることを願って、書きました。

SNSの総フォロワー数70万人超!
日本一バズっている元教師が包み隠さず話します!

第1章 保護者への本音
第2章 学校現場の本音
第3章 働き方の本音
第4章 生徒が気になる先生の本音
第5章 教師への本音
第6章 持続可能な学校にするための5つの提言

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