
ダイエットを健康的に成功させるには、肝臓にたまった脂肪、すなわち脂肪肝を追い出すことが不可欠だと、医師の栗原毅氏はいう。だが、人間も40~50代ともなると男女ともに代謝が低下して、脂肪が溜まりやすくなることは避け難い。
『肝臓大復活: 100歳まで食・酒を楽しむ「強肝臓」の作り方』(東洋経済新報社)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
肥満が進んでくれば、すでに肝臓にも相当な量の脂肪がたまっている
50代になると、男性は中年期の脂肪肝を引きずったまま悪化させてしまい、糖尿病を発症する人が増えてきます。また、女性にも脂肪肝になる人が増えてきて、男女ともに健康状態に危機感が出てくる時期となります。
この時期になると、男女とも「この頃、めっきり体力が落ちた」と訴えるようになる人が少なくありません。体力が続かなくなるのは、筋肉量が落ち、代謝も低下して、これまでのようにエネルギーを産生できなくなってくるからです。
また、エネルギー出力が落ちたまま、これまでと同じような食生活を続けていると、おのずと糖質過剰になり、余った糖質が脂肪に変換されて体内各所にたまっていくことになります。
このため、男女とも50代を過ぎるとおなかの出っ張りが目立つ人が増えてきます。
男性の場合は「リンゴ型肥満」といっておなか全体が丸くせり出してパンパンにふくらみ、女性の場合は「洋ナシ型肥満」といって、おなか、お尻、太ももなどの下半身に脂肪がたっぷりとつくようになります。
もちろん、こうした肥満が進んでくれば、すでに肝臓にも相当な量の脂肪がたまっていると見て間違いありません。
なお、男性の場合、50代になると、会社でも責任ある立場になってきて、毎日のように接待などの宴席に出る人も少なくありません。ストレスも多いうえに食生活も安定しないため、脂肪肝、肥満、糖尿病がある人は、血糖値や血圧が大幅に上昇しがちになります。
そうなると、脂肪肝や糖尿病だけでなく、心血管疾患や脳血管疾患など動脈硬化性の病気にも注意を払わなくてはならなくなってきます。
肥満気味の男性にとって、50代はそのまま重大な病気を進ませてしまうかどうかの大きなターニングポイントになると思ったほうがいいでしょう。
もっとも、女性にとっても50代は大きなターニングポイントです。
更年期による女性ホルモンの低下が脂肪肝の進行を促してしまう以外にも50代女性には、うかうかしていると多くの病気を進ませてしまいかねない「危険な落とし穴」があると思っておくべきでしょう。
とくに注意すべきは、日々の糖質摂取量です。私はかつて年齢別・男女別の糖質摂取量をアンケート調査したことがあるのですが、この調査では50代の女性の糖質摂取量が突出して多いことが判明しました。なんと、50代女性は基準値の2倍以上の約414gも糖質を摂っていたのです。
これでは脂肪肝になる人がどっと増えるのも無理はありません。更年期の影響はもちろんあるのですが、おそらく、この時期の女性は子育てなども一段落して、時間的に余裕ができるため、ついつい間食に手を伸ばしてしまうのが糖質過多につながっているのでしょう。
テレビを観ながらついおせんべいやミカンを食べていたり、気の合う友人同士で集まっておしゃべりをしながらお菓子などの甘いものをつまんだり……そういう習慣が脂肪肝増加の背景にあるのかもしれません。
脂肪肝にとって減量は最高のクスリ
では、50代の男女はどのようなことを心がければいいのか。
まず、もう若い頃と同じ食事ではダメなんだということをしっかり肝に据えて、意識的に糖質摂取を控えるべきです。
たとえば、「甘い飲み物はいいかげん卒業する」とか「丼ものやラーメンは『たまに』程度にする」とか、「おにぎりだけ、菓子パンだけ、そうめんだけといった糖質オンリー食はやめる」とか、「居間のテーブルにおせんべいやミカンを置かないようにする」とか、「間食がほしいときは高カカオチョコを食べる」とか……こうしたポイントを押さえておけば、そんなに我慢せずとも糖質摂取量を減らすことができるはずです。
それと、50代こそダイエットに力を入れるべきでしょう。
60代後半や70代以降になるとダイエットで食事量を減らすと筋肉量が減ってサルコペニアやフレイルの危険が増してしまうため、ダイエットはおすすめできなくなります。だから、ちゃんとダイエットをするなら「50代が最後のチャンス」と思っておくべきです。
要するに「やせるならいまのうち」だということ。50代のうちに減量をして余計な脂肪を落としておくことをおすすめします。
脂肪肝にとって減量は最高のクスリのようなもの。肝機能が回復して脂肪肝が治るのはもちろん、血糖値や血圧も下がって糖尿病もよくなっていくはずです。
また、食生活面だけでなく、50代のうちに筋トレやウォーキングも習慣づけて、これ以上筋肉量を低下させないように心がけていく姿勢も大切です。
それと、50代には歯周病を進ませてしまう人が多いので、この先高齢になってから苦労しないためにも、歯のケアや治療も怠りなく行なう必要があります。
とにかく、50代という「ターニングポイント」において、食事や運動などの生活習慣をちゃんと改善できるかどうか、肝臓や体重などの体のコンディションをしっかりリセットしておけるかどうか。それができるかどうかで60代、70代、80代になってからの病気罹患リスクに大きな差がつくと思ってください。
そういう点では、50代のこの時期が、人生の後半戦を健やかに過ごせるかどうかの大きな分かれ目になると言っていいかもしれませんね。
文/栗原 毅 サムネイル/Shutterstock
『肝臓大復活: 100歳まで食・酒を楽しむ「強肝臓」の作り方』
栗原 毅 (著)
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