「過去イチに近い腹の痛みでした」“鶏チャーシュー”で集団食中毒を起こしたこだわりのラーメン店…常連は「生肉っておいしい。店が再開されたらまた来ますよ」
「過去イチに近い腹の痛みでした」“鶏チャーシュー”で集団食中毒を起こしたこだわりのラーメン店…常連は「生肉っておいしい。店が再開されたらまた来ますよ」

神戸市中心部の三宮にある有名ラーメン店で食事をした人が下痢や発熱の症状を起こし、神戸市はラーメンの具の「鶏チャーシュー」が加熱不十分だったことが原因の食中毒とみて、店に3日間の営業停止処分を出した。神戸市に体調不良の申告が入る前から、SNSでは「生肉チャーシューを使っている」との指摘が出ていた。

体調不良者の通報が相次いだ

神戸市によると、営業停止になったのは、昨年食べログの「ラーメン WEST 百名店」にも選出されたJR三ノ宮駅そばの「METRO RAMEN」。

6月6日を始めに、計8グループから体調を崩したとの通報が入り、このうち7グループ、計8人を調査し、下痢や発熱、頭痛、関節炎などを発症しているとわかったという。通報者らは5月25日から6月2日の間に店を利用し、早い人は5月28日から症状が出ていたという。

「原因はまだ断定していませんが、患者が共通して食べたものや発症状況から、出されたラーメンに入っていた鶏チャーシューの加熱が不十分だったためと推定しています。製造工程を確認し、ラーメンの写真などからそう判断しました。

まだ調査段階ですが、胃腸炎を起こす細菌、カンピロバクターが原因ではないかとみています。これによる食中毒は手足がしびれるギラン・バレー症候群につながったり、後遺症が残ったりする可能性もあるとされています。今回の患者さんは全員快方に向かっています」(神戸市食品衛生課)

最初の通報があった6月6日に神戸市は店の調査に入り、店は同日夕方から営業を自粛。市は食中毒と断定したことから7~9日の3日間の営業停止処分を出した。

2019年開業の同店は、当初から「鴨だしラーメン」や「貝だしラーメン」、鴨と豆乳スープの「豆乳ラーメン」などが主力商品。Instagramには多数のラーメンの写真がアップされており、開店直後から最近まで一貫して、ラーメンの中の鶏チャーシューはレアっぽく見えるが、最近まで問題視されることはなかったようだ。

また神戸市は同店に衛生状態に関する指導を過去に行なったことがあるかどうかは「答えられない」としている。

今回、6月2日に同店でラーメンを食べたと写真付きでSNSに投稿した人物が5日夜に「カンピロバクターで体調が終わった」とポスト。

別の人物も6日未明に「まじで鳥の生肉チャーシュー使ってて本当にカンピロラーメンだこれ。。」とポストしたことで、SNSではプチ祭り状態になった。神戸市に通報が入り始めたのはその6日になってからだ。

「SNSで話題になっているのを見て自分もそうかもしれないと思って通報された方がいる可能性あります。食中毒は一緒に食事をしたグループの中で複数の体調不良者が出て気づくケースが多く、おひとり様の利用が多いラーメン屋さんでは体調がおかしくなっても原因が分かりにくいこともあるのですが、今回は通報が相次ぎました」(神戸市食品衛生課)

「今思えばコリコリとして美味しかったのは半生だったのか」

有名店だけに営業停止処分は地元では話題になり、ニュースが出た7日からはシャッターが下りた店の前に常連客もやって来ていた。

その一人、30代の男性Aさんは「おいしいので何年も前からきています。鶏チャーシューのラーメンもずっとこのメニューでしたよ。チャーシューはやや生っぽかったですけど、やばいと感じたことはなかったですけどね」と話す。

店の前には今回の食中毒を謝罪する貼り紙やメニュー表のほかに「チケットを購入いただき店外でお待ちください」「せきなど少しでも調子の悪い方は入店禁止です」との貼り紙もある。

これらの文言を巡っても食中毒発覚後、SNSでは店を批判する投稿が相次いでいるが、常連の40代男性のBさんはこう解説する。

「店内はカウンターが10席ほどあるだけで、店長がワンオペで切り盛りしてます。せきをして出て行ってくれと実際に言われている人は見たことはないですけど、食べ終わった後は『長居をせんといてくれ』とかは言われます(笑)。

あと、席が空くまでは店に入ってはダメというルールもあります。

まあ店長は忙しくて余裕がないんでしょうね。でもラーメンは美味しいから、僕も怒られないよう注意しながらでも行く、みたいな感じですね。鶏チャーシューですか? レアなんですよ。生肉っておいしいじゃないですか。今回はそれが原因なのかもしれないですけど、それでも店が再開されたらまた来ますよ」(Bさん)

遠くから評判を聞いて来た人もいる。8人の患者のうち3人は東京や埼玉から来た人だった。この8人には含まれないが、5月23日に来店して鶏チャーシューを食べ、腹痛に襲われたという関東在住の20代女性・Cさんに話を聞くことができた。

「人気店であっさり系のラーメンが好きなので行きました。鶏チャーシューは生っぽい感じですが、味も食べてる時は特に気にしませんでした。低温調理なんだなと思っていました。今思えばコリコリとして美味しかったのは半生だったのかなとも感じます。

店の前の注意書きのことは事前に口コミを見ていて少し緊張感がありました。店主はお世辞にも愛想が良いとは言えませんが、ルールさえ守っていれば特別(愛想は)悪くはなかったです。ただやっぱり緊張感漂う店内ではありました。

症状は、とにかくお腹が痛く水に近い便がでました。過去イチに近い痛みだったかと思います。その状態が2日間続きました」

Cさんは「保健所には連絡していませんが、ギラン・バレーには怯えています。どのくらいの確率でなるのでしょうか。お腹はもう治ったので検査はしなくてもよいのか、不安です」とも話した。

患者と確認された8人が食べた時期より少し前に来店したというCさんのような人について神戸市は、「同じ調理法でつくったものなら原因が同じ可能性はあります。ただ、今からの検査では原因の特定は難しいかもしれません」(食品衛生課)と話す。

店主の男性は神戸市の処分を受け、インスタグラムにも「この度は多大なるご迷惑をおかけし、またご不便・ご心配をいただき、大変申し訳ございません」「このような事態を招いたこと、重ねて謝罪申し上げます」との謝罪文をアップした。

各地で梅雨入りする中、普段に増して食品の衛生管理の徹底が求められる。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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