〈663日ぶりマウンド〉大谷翔平復帰登板で最速161キロも拭えない不安…球界OBは「バージョンアップして帰ってきた」と絶賛も「あのボールは気を付けないと…」
〈663日ぶりマウンド〉大谷翔平復帰登板で最速161キロも拭えない不安…球界OBは「バージョンアップして帰ってきた」と絶賛も「あのボールは気を付けないと…」

2023年に行なったトミー・ジョン手術から投手復帰を目指してリハビリを続けていたロザンゼルス・ドジャースの大谷翔平(30)が6月17日、663日ぶりにメジャーのマウンドに上がった。待ちに待った二刀流復帰初戦は、1イニングを投げて被安打2失点1、最速161キロだった。

この投球内容を自身もトミー・ジョン手術を経験した球界OBはどう見たか。

1ヶ月以上も復帰が前倒しになった理由

この日、MLBは7月15日に行なわれるオールスターファン投票の第1回中間結果を発表。大谷はナ・リーグ最多の139万8771票を獲得、MLB全体でもニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ(156万8537票)に次ぐ2位という得票数となった。

このオールスターファン投票で大谷はナ・リーグDH部門でのエントリーだったが、6月17日のサンディエゴ・パドレス戦では「1番・投手」で出場。前日に登板が発表されるというサプライズで、二刀流復帰となった。

“投手・大谷”として今季はライブBP(実戦形式の打撃練習)に登板しており、ドジャースのロバーツ監督も以前のインタビューで復帰について「オールスター後が現実的」としていたが、その予定が1か月以上早まった形だ。

予想以上の早期復帰について、ドジャース傘下チームに在籍したこともある野球評論家の佐野慈紀氏はその背景を考察する。

「調整のためにマイナーで投げるとなると、移動の問題からDHとしても数試合は休まなくてはいけなくなる。そうすると、打者としての感覚もずれてしまう。

以前からライブBPに登板してから試合に臨むということをしていましたし、それならメジャーの実戦で投げて調整というのはある程度、既定路線だったのでしょう」

それでも王貞治氏はこの早期復帰について「まだ早いんじゃないかと思うけどね」とコメントするなど、少し急ぎすぎな印象もある。

「ドジャースのブルペン陣は毎試合出づっぱりだったので、大谷復帰によって少しでも負担を軽減できればという意図もあったのではないでしょうか。調整という意味よりも、それができるくらいここ最近の大谷投手の状態がよかったということなんじゃないかと思います」(佐野氏)

引っかけたフォーシームの意味

こうして実現した663日ぶりの復帰登板。対戦相手にはマチャドやタティスJr.ら強打者を擁する同地区のライバル、サンディエゴ・パドレスだけあって、1イニングを2被安打1失点とピシャリとはいかなかったが、28球を投げて最速161キロも記録した。



大谷本人も「結果的にはイマイチでしたけど、自分の中でいいイメージを持って前進できる材料はたくさんあったのでいい一日でした」と手ごたえを掴んでいた。

「復帰登板でいきなり100マイル(160キロ)以上が出るとは思ってなかったですし、シンカーの割合も多くて“投手・大谷翔平”がバージョンアップして帰ってきた感じ。上ずることなく全体的にボールもまとまっていたし、内容としてはよかったと思います」(佐野氏)

ただし、暴投を含め引っかけてしまうフォーシームも目立った。トミー・ジョン手術経験のある佐野氏はこの球についてこう解説する。

「おそらく(右打者の)アウトコースに決めようとしたボール(フォーシーム)でしょうが、体が先に開いた分、引っかかったということですね。僕も経験があるんですが、肘をケガするとあのボールを投げるのが少し怖いんです。というのも、腕を振ろうとするとケガ再発のリスクが高まる。

でも、アウトコースに決めにいくとつい腕を振ってしまう。本来、腕を “振る”ではなく、下半身をうまく使って腕が“振れる”のが一番いいんで、少しそこは注意してほしいですね」

現在、大谷は10年契約のまだ2年目。焦らず慌てず、ゆっくりと二刀流の最終形を完成させてほしい。

取材・文/集英社オンライン編集部

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