
2025年6月13日、ドン・キホーテが新宿東南口に初の「インバウンド特化型店舗」をオープンした。日本の“お祭り”をテーマにしており、約7割の商品が外国人観光客向けという新業態だ。
訪日観光客の“爆買い”を狙った体制でオープンも実際は…
2025年6月13日、ドン・キホーテが新宿駅東南口に新たな一歩を踏み出した。
その名も「ドン・キホーテ新宿東南口別館」。同社としては初となる“インバウンド特化型”を掲げた新店舗だ。
場所は、JR新宿駅東南口から徒歩約2分の好立地にあり、午前8時から深夜2時まで営業している。
今回オープンした新店舗は、これまでのドン・キホーテとは違い、外国人観光客向けに大きく舵を切ったコンセプトとなっており、内装は日本の「祭り」をテーマにしている。店内のいたるところにちょうちんが並ぶほか、おみこしなども飾られていて華やかさを放っている。
また、ドン・キホーテを展開する「株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」の発表によると、商品構成の約7割が外国人に人気の高いアイテムとなっている。
営業フロアは1~4階の4フロアで、食品から日用消耗品、家庭雑貨品、化粧品、医薬品、衣料品、家電製品、玩具まで幅広くそろえている。
また、免税レジは同規模店舗よりも拡充して設置されており、多言語対応のPOPやスタッフも配置され、訪日観光客の“爆買い”を狙った体制が整えられていた。
だが、現地を訪れた取材班の目に映ったのは、想定外ともいえる静けさだった……。
オープン初日の朝、開店前の新店舗周辺には報道関係者や店舗関係者らしき人物が10名以上集まっていたが、開店してしばらくの間、店内の客数はごくわずか。
チラシを配る店舗スタッフが通行人に「ドンキ新店舗今日からオープンでーす!」と声をかける姿が見られたものの、入店者数は少なく、列ができることもなかった。
街ゆく人々はこの「インバウンド特化型店舗」についてどう思うのだろうか? 取材班は店舗周辺にて、街頭インタビューを行なった。
財布のひもを緩めた外国人もいたが、価格面に対するシビアな指摘
近くの飲食店に勤める40代の日本人女性はこう話す。
「新店舗がオープンしたと聞いて、仕事前に立ち寄ってみました。他のドンキよりも装飾が凝っているし、外国人観光客向けの『柴犬』とか『寿司』をモチーフにしたグッズがたくさん売られていました。私は日本人だけど、見る分には楽しいですよ。自分の店の近くにドンキができたのは便利だし、これを機に外国人のお客さんがうちの店にもっと増えてくれるとうれしいです」
一方で、冷静な意見もある。都内在住の営業職・30代女性はこう語った。
「え?またドンキ?って思いました。新宿にはもう十分すぎるほどありますよね。観光客向けって言っても、そんなに何店舗も必要なんですかね? ちょっと需要が読めないです」
埼玉県から友だちに会うため都内に来ていた40代の主婦も、インバウンド偏重への懸念を口にする。
「最近、都内に来るたびに外国人観光客が本当に多いから、こういうお店は喜ばれると思うんです。
一方、メインターゲットである訪日外国人たちは、確実に財布のひもを緩めていた。タイから訪れた30代男性は満足げにこう話した。
「ドンキはタイにもあるけど、新店舗がオープンしたと聞いて立ち寄ってみた。日本のお酒とおつまみをまとめて買ったよ。3000円くらい使った」
さらに、インドネシアから来た20代の女性は「サンリオグッズをお土産にたくさん買いました。つい1万円も使っちゃった」と語った。
また、ベトナムから来た女性も「ネットでオープンを知って、友だちに頼まれた日本のコスメを買いに来たんです。2万円以上買いました」と話す。
だが、価格面に対するシビアな指摘もあった。アメリカから来た30代の男性は、いわゆる“インバウンド価格”への疑念をにじませた。
「観光客向けの価格設定だよね。アメリカ人の僕らでも、ちょっと高いと感じるよ。
さらには、イギリスから来た20代の女性からはこんな意見もあった。
「お土産に『寿司Tシャツ』を買おうと思ったけど、5000円もしてビックリ! 買うのはやめた。日本人の友だちに『ドンキは安い』と聞いていたから来たけど、そうでもなかった」
初日こそ静かなスタートだったものの、外国人観光客が日ごとに増える中で、この店舗がどのように都市の中に根を張っていくのか……。今後も注視していく必要があるだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班