「2万円も使ったよ!」渋谷のゲーセンに外国人がゴッタ返すもセンター街は“マナー崩壊”「昔の汚ギャルと変わりませんね」
「2万円も使ったよ!」渋谷のゲーセンに外国人がゴッタ返すもセンター街は“マナー崩壊”「昔の汚ギャルと変わりませんね」

今、渋谷センター街のゲームセンターに外国人観光客が押し寄せている。狙うのは、クレーンゲームのアニメグッズなど日本特有の“ゲーセン体験”。

だがその裏で、騒音や路上飲酒といったマナー問題も深刻化している。現地でその実態を追った。

渋谷のゲームセンターでクレーンゲームに夢中になる外国人

日本政府観光局の発表によれば、5月に日本を訪れた外国人旅行者の数は前年比21.5%増の推計369万3300人となり、5月としてこれまでで最も多くの訪日者数となった。

なかでも、最近では外国人の間で日本のゲームセンターが注目を集めているという。東京都・渋谷センター街のゲームセンターには、外国人観光客が殺到しているとのことだ。

これまで長年にわたり、渋谷の街を取材してきた記者は、渋谷の変貌について次のように語る。

「渋谷がかつて“ギャルの聖地”と呼ばれていた1990年代後半から2000年代初頭にかけては、センター街に多くの“汚ギャル”“ヤマンバギャル”が集まり、地べたに座り込んだり、路上でパラパラを踊ったりする姿が日常的でした。酷い子は路上で酒盛りして、ケーキをぶつけあったり、長なわ飛びや鬼ごっこもしてまさに“カオス”化。ゲームセンターもプリクラを撮るために集まるギャルたちでにぎわっていました。

現在の渋谷には、インバウンドの影響で多くの外国人観光客が訪れています。かつてとは別の形で、再び“カオス”になりつつある。なかでも、センター街のゲームセンターは、観光スポットのような位置づけになっており、連日多くの外国人観光客でにぎわっています」

しかし、ゲームセンターは海外にも多く存在する。なぜ彼らは、渋谷センター街のゲームセンターに集まるのだろうか? 

その謎に迫るべく、多くの人でにぎわう金曜日夜の渋谷センター街へ向かった。

通り沿いのゲームセンターをいくつか巡ったところ、たしかにどの店舗も外国人観光客の姿が絶えなかった。店内では、英語や中国語、フランス語など様々な国の言語が飛び交っていた。

そんななか、特に人気なのがクレーンゲームコーナーだ。機械の前には、アニメキャラがプリントされたTシャツを着た観光客や、食品サンプルの景品に夢中な家族連れの姿があった。そこでは、100円玉が次々と投入され、アームの動きに一喜一憂する人々の姿が目立っていた。

イスラエルから訪れた20代の男性2人組は、アニメキャラのフィギュアを手に満足げに語る。

「クレーンゲームで好きなアニメの景品を狙って、3000円使ってようやく取れたんだ。最高の気分だよ。日本の文化は神社や仏閣も好きだけど、こういう現代のカルチャーもすごくクールだと思う」

イギリスから来た同じく20代の男性2人組も、ゲーセンでの体験に興奮していた。

「大きなスティッチのぬいぐるみを狙って2000円使ったけど、取れなかった。イギリスにもクレーンゲームはあるけど、海辺の遊園地くらいで、街のど真ん中にこういう施設があるのは珍しい。日本ならではの風景だと思うよ」

アメリカから来た30代男性も、笑顔でこう話す。

「アメリカにもアーケードゲームはあるけど、こんなに明るくてにぎやかな雰囲気のところはなかなかない。アニメが大好きだから、クレーンゲームにアニメキャラの景品がたくさんあって興奮した! 5000円も使って、ひとつも取れなかったけど。めちゃくちゃ難しいね」

グアムから家族で訪れていた40代の女性は、日本のゲーセンを“観光の定番”と話す。

「私たち家族はゲーセンが大好きで、日本に来るたびに必ず立ち寄ります。今回は3回目の来日です。特にクレーンゲームは家族全員で楽しめるのが魅力です。息子が大きなぬいぐるみをゲットして大喜びしていました。気づけば2万円も使ってしまっていました」

「観光で来るのは大歓迎だけど…」街の声は 

しかし、人気の裏で、マナーの問題も無視できない。

センター街で取材を進めていくと、22時を過ぎたあたりからゲーセン前やコンビニ前の路上では、飲酒しながら騒ぐ観光客、地面に座り込んで大声で話すグループ、走り回る若者などが目立ち始めた。渋谷区では路上飲酒を禁止する条例があるが、それを知らない観光客も多いようだ。

近隣の飲食店で働く50代の女性スタッフは困惑する。

「ゲーセン帰りの外国人グループが店の前でたむろして、大声で話したり地面に座ったりするから、他のお客さんが店に入りにくくなっちゃうんです。

観光で来るのは大歓迎だけど、せめて日本のルールやマナーを少しでも知ってから来てほしいです」

別の飲食店では、20代の男性店員が眉をひそめながらこう話した。

「ゲーセンで盛り上がったまま来店して、ドリンク一杯でずっと大声でハシャギ続ける観光客も多いです。コンビニとかで買ったお酒の空き缶を置いていく人もいて……。日本語が通じないから注意しても伝わらなくて、スタッフはフラストレーションをためがちです」

道行く日本人の声にも、戸惑いや冷静な意見が交錯する。センター街を歩く50代のサラリーマンはこう指摘する。

「人が多い中で急に走り出す人がいると、ぶつかったら危ないですからね。旅行で来て楽しんでくれるのはいいけど、『郷に入ったら郷に従え』っていうように、最低限のマナーは守ってほしい。自治体や国がしっかり周知しないとダメだと思います」

渋谷センター商店街振興組合の理事長・鈴木達治氏はこの現状をどう考えるか。

「外国人観光客の増加はありがたいと思っていますよ。円安の影響もあり、コロナ明けからは1.6~1.7倍、昨年比でも1.3倍ほど増えています」

一方で、渋谷区は混雑や騒音、路上飲酒などへの対策も進めており、2023年10月からは都市部で初めて年間を通じた「路上飲酒禁止条例」を導入。罰則はないが、今後悪化すれば過料も検討されているという。さらに、鈴木氏はこう続けた。

「振興組合では20年ほど前から警察と協力して週に1度のパトロールを行なっていますが、2000年代と比べれば、治安はかなり改善されました。2年ほど前からは渋谷区が警備会社に委託して、夜18時から朝5時まで毎日パトロールが実施されています」

外国人観光客にとって、ゲームセンターは日本文化を体験できる“観光地”となりつつあり、渋谷の街も活気付いているが、誰もが楽しめる街作りのためには、訪れる側もマナーや街の治安維持のための意識が求められている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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