〈42人全員落選〉それでも“負け”を認めない石丸氏が会見で見せた「本性」と恒例のお説教の中身…参加した記者は「分かりにくいし、記者の顔も晒されてるし…どう書こう」
〈42人全員落選〉それでも“負け”を認めない石丸氏が会見で見せた「本性」と恒例のお説教の中身…参加した記者は「分かりにくいし、記者の顔も晒されてるし…どう書こう」

地域政党「再生の道」の石丸伸二代表は22日夜、都内で会見を開いた。再生の党は今回の都議選で獲得議席がゼロなど、歴史的な大敗を喫した。

いっぽうで、石丸氏は42人全員が落選したことについて「そうなんですね、という感想です」と回答し、笑いながら「それ以外の感情ってあるんですか」と話した。会見で見えた石丸氏の“素顔”をお届けする。 

「ヤバくないですか」石丸離れ深刻化、獲得議席はゼロ 

22日に投開票が行なわれた東京都議会議員選挙では、石丸伸二氏が今年1月に設立した地域政党「再生の道」の議席獲得数はゼロ。35選挙区に42人の候補者を立てたが、誰一人として当選することはなかった。

石丸氏は「広く政治参加を促す」ことを目的とし、立候補者を公募した。1128人が応募し、選ばれた42人は会社員や経営者、教授など経歴は幅広い。選挙期間中、石丸氏は候補者を「ハイクラス人材」とアピールしていた。

裏金問題で自民党は過去最低の得票数だったが、そのこぼれた票を、再生の道はなぜ獲得できなかったのか。

都政担当の記者は都議選を、「無党派層が投票したのは、都民ファーストだった。都政の選挙は、小池都政の是非が強く出るため今回の都議選は“小池勝ち”と言ってもいい」と振り返る。

そして、再生の道についてはこう解説した。

「6日に大手町からスタートした街頭演説では、聴衆も多く、石丸旋風がまた吹くのではないかと思った。ただ、翌日から勢いが減っていき、北千住や高田馬場など石丸氏は各所に顔を出すものの、人は大手町より少ない。

最後の演説をした東京駅は昨年の都知事選と同じ場所で行われたが、あの時と比べると人数は少なかった。半分以下という声も出ている。年代も年配のかたが多く、都知事選のような若い人は少数。石丸さんを見て、若い人は『あ、石丸じゃん』と写真を撮るものの、なかなか足を止めないのが現実だった」

 東京都港区にあるJR新橋駅から徒歩5分にある貸会議室で、22日夜、石丸氏が会見を開いた。19時ごろ、会見会場付近では男性2人がヒソヒソ話をしていた。

「(情勢)ヤバくないですか」

「大丈夫なんですかね」

首からは、紫色でデザインされた「STAFF」と書かれた名札がぶら下がっていた。

情勢の悪さについて、笑いながら「それ以外の感情があるのか」と回答も 

会見は事前登録制で、記者が30人超、カメラが10台弱集まった。午後9時半から予定されていた会見は、石丸氏が早く到着したことから午後9時17分に始まった。

石丸氏の会見では、石丸氏の席の少し横にカメラを操作する男性がいた。会見はYouTubeなどで生配信され、石丸氏が映ることはほとんどない。質問を記者が投げると、記者の質問に答える石丸氏を映すことなく記者の顔をズームする。YouTubeのコメントには、「バカな顔だな。クソ眼鏡」「記者はテンプレを繰り返すのか」「理解しようとしてないだろこの顔」「記者は国語テスト必須にしたら?」などと記者への批判が相次いでいた。

会見前から“ゼロ議席”になることが予測されていた再生の道。記者に「情勢が悪く、その受け止めは何か」と聞かれると、石丸氏は最初、「そうなんですね、という感想です」とのみ回答し、マイクを置いて記者を見つめた。

石丸氏に見つめられた記者が「具体的な気持ちは?」「ご自身が擁立した立場としてはどのようにお考えです?」と再度質問すると、石丸氏は「(選挙に)通れば嬉しいし、通らなかったら悲しいです」と回答。

さらに笑いながら「それ以外の感想って生まれるもんなんですか?」と語った後、「それは、あくまでも候補者側の目線でしかない。今のは何かそういうふうに聞かれたので返したまで。党の代表としては、はなからそういうものではないと、去年の都知事選から言ってるんです」と説明を加え、最後にはお決まりの“石丸節”で「通じましたか?」と、記者に話を理解したかを問うた。

記者が「もう少しわかりやすい言葉で説明していただいてもいいですか」と求めると、石丸氏は語気を強め、「そんなところに、党の代表としてこだわってないんです。目標は、都議選に候補者を擁立すること。達成している」とした。

記者が「ありがとうございます」と述べると、「なんかちょっと諦められた感じですか。もうちょっと粘っていただいても大丈夫です」と“石丸節”を最後まで炸裂させていた。

3年後の都知事選出馬も...? 

再生の道は、7月に控える参院選では、東京選挙区で1人、比例代表で9人、計10人の候補者を擁立する構えだ。

会見で石丸氏は「都議選を参院選の前哨戦などという捉え方はしていません。どっちも本選です。国政、地方政治、上下優劣は全くないという認識を持っている」と説明。意気込みについては「息巻いているというわけではなくて、待ち遠しい、早く始まらないかなという、個人的にはその思い」と語る。

参院選では都議選と異なり、公約を掲げる方針で、公教育への投資や環境整備について訴えるという。参院選の意気込みを石丸氏はこう語った。

「参院選の方はしっかりとシングルイシュー(単一の争点)で、テーマを打ち出しますので、恐らく再生の道として、主張しやすい。国民は都議選より、理解が容易になるのでは」

自身が今後、なんらかの選挙に出馬するかどうかについては、「もしかしたら、あるんじゃないかなとは思います」と含みを持たせ、回答した。

「全ての選択肢はテーブルに載っているというお決まりのコメントなんですが、せっかくなんで言及すると、もちろん3年後の都知事選もその対象ではあります。しかし、次のまた3年後の参院選だろうと、いつ来るか分からない衆院選だろうと、もちろん可能性はあります」

そして、「私、石丸伸二自身が、個人が政治家をいつやる、いつもう引退するというのは全然本当に決めてないので、これからずっとまた考えながら、その都度、適宜適切に判断をするんだと思います」と続けた。

会見後、石丸氏は移動し、午後10時半から予定されていたNHKの中継取材を受けた。石丸氏がいなくなった会見場では、テレビ局のスタッフらがカメラを片付け始めるなか、記者たちは上司に電話をかけたり、なかにはパソコンで打ったメモを見つめながら、考え込む者もいた。

ある新聞社の記者は「写真は撮れたけど、どう会見内容をまとめればいいのか。石丸氏の主張は分かりにくいし、論点もたまにズレる。分かりやすいように書いたら、SNSで切り取りだと叩かれる。おまけにYou Tubeには我々の顔がさらされているらしい。それは質問しようかどうか、迷う人も出てきますわ」と肩を落とした。

代表として“負け”を認めることもなく、候補者へのねぎらいもなかった今回の石丸氏の会見。人生を賭けて出馬した42人の候補者たちはどう受け止めたのだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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