
中居正広氏と元女性アナウンサーのトラブルや、オンラインカジノで逮捕者が出るなど揺れ続けるフジテレビの親会社、フジ・メディア・ホールディングス(FMH)が6月25日、株主総会を開いた。米国の「モノ言う株主」が出してきた社外取締役の選任提案を退け経営権を死守したものの、長年経営を仕切って来た日枝久取締役相談役はついに記者会見を行なわないまま退職金をもらって退任。
日枝氏にだけ退職金が……
一連の問題が昨年末に始まって以来、初めて迎えた株主総会は重々しい雰囲気に包まれた。
「会場の東京・有明アリーナの入り口には金属探知機が置かれ、カバンも開けて中身を点検されました。1万5000人収容の会場には株主が3000人は来ていたようです」(出席した株主)
総会は冒頭、金光修FMH社長が「フジテレビジョンにおける一連の事案により、皆様にご迷惑とご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます」と謝罪して始まった。
「フジテレビは中居氏の問題を受けた経営陣交代で新社長になった清水賢治氏(FMH専務取締役兼任)が前任者の前社長らを訴える方針を示すなど刷新を図っています。この中で長年フジの“天皇”として経営を仕切って来たとされるFMH取締役相談役の日枝久氏が問題発覚以来、一度も記者会見で説明することなく25日付で退任し、しかも退職金が支給されることには厳しい目が注がれています」
そう話す大手紙経済部デスクが続ける。
「株主総会の焦点はこの日枝氏の処遇をどうするのかと、“モノ言う株主”の代表格である大株主、米ダルトン・インベストメンツ側が、北尾吉孝SBIホールディングス会長兼社長ら12人を社外取締役として選任するよう求めた提案がどうなるか、でした。ダルトンはFMHに、不動産事業の切り離しなどが会社の課題だと指摘し、これを改善するためだとして北尾氏らを社外取締役にするよう求める株主提案書を公表していました」(経済部デスク)
「堀江さんが質問者に当てられると『わー』っと拍手が起きて…」
提案説明などに続き、質疑に入ると一斉に手が上がった。
「最初に当てられた金ぴかのスーツの男性が『私は約30年間、フジテレビの株主です』と話し始め、司会者が『お名前は?』とたずねると男性は『名前はドクター中松』と応じたんです。ここで会場がどよめきました」(株主)
総会には2005年にフジテレビの大株主だったニッポン放送に買収を仕掛けた実業家のホリエモンこと堀江貴文氏も出席して質問に立った。
堀江氏は会場を後にする際、報道陣に「(フジテレビが)認定持ち株会社であり続けるのか」と質問したと説明し「色んな選択肢を検討する、みたいなことは(FMH側は)言ってましたね」などと話した。
「堀江さんが質問者に当てられると『わー』っと拍手が起きて、会社側の人が『写真を撮らないでください』と呼びかけてました。今日はホリエモンの話を聞きたくて来た人もいたんじゃないかな。彼の質問が終わるや否や、結構な人が帰り始めましたからね」(出席した株主)
いっぽう、焦点だった日枝氏の処遇に関しては事実上の“特別扱い”がとられる方針に変わりはなかった。
「今回取締役は清水氏を除く全員が退任するが、退職慰労金制度は廃止している、との説明がありました。しかしこの退職慰労金を支払う対象が1名のみあり『それは日枝です』との発言が会社側からあり、その瞬間『あー』みたいな感じで失笑が起きていました。
会社の主張は、日枝氏への退職金支払いは2008年以前に決まっており、これを排除する法的根拠はない、というものでした。さらに退職金額も『開示していない』というような説明でした」(株主)
第1~5号議案には“賛”のマークにチェックを
もう一つの焦点だった取締役の選任も、社長に就任する清水氏ら11人の選任案を可決。ダルトンが求めた北尾氏ら12人の社外取締役選任案は否決された。
「議案は全部で6つあり、第1から第5までは会社提案の取締役選任案などで、すべて可決されました。そして最後にダルトン提案の第6号議案が否決されました」(経済部デスク)
フジ側は経営権の完全な掌握の維持に成功した形だが、この議決に絡んで株主の一人は「首をかしげることもありました」と話す。
「今回の株主総会は、約2週間前に株主に招集通知が送られ『議決権行使書』が同封されていました。第1~6号の議案ごとに賛否の意思を示すもので、郵便での返送かネットで議決権を行使するものです。
ところがその2、3日後に『議決権行使のお願い』と題したはがきも株主に送られてきたんです。それは文字通り議決権行使を促しながら、『会社提案・取締役会の意見にご賛同いただける場合』として、第1~5号議案には“賛”のマークにチェックを、第6号議案には“否”のマークにチェックを、それぞれつけた“記入例”が記されていました。会社の方針に誘導する書き方に、ズルいんじゃないの、というような声も出ていましたね」(株主)
紆余曲折を経た株主総会は約4時間半かかって終了。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班