
国民民主党は「こども減税」で子育て世代の手取りを増やします――玉木雄一郎代表が25日、こんなポストをした。一見、子育て世代が喜びそうな政策だが、意外にもこのポストに当の子育て世代から批判の声が集まっているという。
子育て世代「さらに肩身が狭くなりそう」
国民民主党の代表・玉木雄一郎氏は25日、支持者の提案を受ける形で、下記の内容をポストした。
〈国民民主党の「年少扶養控除復活」は良い政策なのに、分かりにくいと言われました。かつて年少扶養控除があったことを知らない人が多いのも事実。その意味で「こども減税」はわかりやすい。 国民民主党は「こども減税」で子育て世代の手取りを増やします。〉
「年少扶養控除の復活」ではなく「こども減税」というネーミングにするというポストに対し、
〈こっちの方がよりいいと思います!!〉
〈これは素晴らしい!〉
〈ママたちにも響きやすいと思います〉
という賛成のコメントもあるものの、当の子育て世代から不安の声が殺到したのである。
〈減税じゃなくて、「扶養しているのに扶養控除がない」という子ども差別の撤廃なのだけど〉
〈キャッチーなネーミングですが子供だけを優遇している印象にならないか少し不安です〉
〈減税と言うと『子持ち様』などと揶揄されて子育て世帯はさらに肩身が狭くなりそうです〉
〈子ども優遇だと思われたくないのでちょっとどうかな… ただでさえ子育て支援金は独身税と言われて子育て世帯だけずるいみたいに言われてますから…〉
玉木氏が言う「こども減税」だと、何か特別な優遇を子育て世代に与えるのではないかと誤解されてしまうことを不安視しているのである。
確かにネットの声が示す通り、年少扶養控除の復活は優遇ではなく、子育て世代「冷遇」の是正である。
いったい、玉木氏が分かりにくいという、「年少扶養控除の復活」とは何のことなのか。
現在、0歳~15歳までの子どもを「除く」、すべての世代において、扶養控除が認められている。これは親族を扶養していると所得から一定額を差し引くというもので、税負担が軽くなる仕組みである。
例えば高齢者を扶養すると、同居の場合は58万円、それ以外の場合は48万円の控除がある。
しかし、0歳~15歳の子どもについてのみ、この扶養控除が認められてない。
さらに自民党は政権を取り戻した選挙において、公約に「年少扶養控除」の復活を掲げていたにもかかわらず、その約束を守らなかった。「子ども手当」は「児童手当」の名称で現在も続いているが、子どもに対する控除は今も無いままだ。
さらに、子ども手当/児童手当の支給には2011年より所得制限がつけられていた。一定以上の所得の人は控除もなく、手当てももらえないという「子育て罰」の状況が継続していたわけである(2024年10月にようやく所得制限は撤廃)。
しかし、他の世代には認められている「扶養控除」が、子どもにだけないことを、当事者以外はあまり知らないという現状がある。玉木代表のポストはそれを背景にしたものだろう。
蓮舫氏も知らなかった可能性?
2024年の都知事選でもこんな騒動があった。立候補していた蓮舫氏が選挙演説で、
「現役世代は結婚して子どもが産まれれば、コウジョがどんどん増えていく」
と発言し、「年少扶養控除がないことをまさか知らないのでは?」と炎上したのである。
蓮舫氏は年少扶養控除を廃止した民主党政権の中心的存在であり、2011年には少子化対策を担当する内閣府特命担当大臣でもあった。年少扶養控除廃止の影響を注視する立場にあったはずである。
蓮舫氏はネット上のこれらの指摘に対し、支持者のポストをリポストする形で、演説で話した「コウジョ」は「控除」ではなく「公助」のことだと“弁明”した。しかし、別の動画では「子どもがいれば税額控除が受けられます」と発言しており、苦しい弁明だと言えるだろう。
また、そもそも年少扶養控除は税額控除ではなく所得控除であり、そもそも制度を正しく理解していないという指摘も受けていた。(税額控除は「納める所得税額から一定の金額を差し引く」もので、所得控除とは異なる)
当事者である蓮舫氏でも年少扶養控除がないことを知らない、あるいは制度を誤解している可能性があるのだから、玉木代表の懸念通り、年少扶養控除というものが一般にあまり理解されていないのは事実だろう。
しかし、当事者たちが不安視するように、「こども減税」という名前にしてしまうと何か新たに子育て世代に優遇を与えると誤解されてしまう可能性は十分あるだろう。
玉木代表の「伝わりにくい」という悩みは真っ当といえるが、「本来あってしかるべきものを復活させるだけなのに、子育て世代だけズルいと言われそう」という子育て世代の不安を受け止め、もっと良いネーミングを考えることを期待したい。
文/集英社オンライン編集部ニュース班